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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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農地復旧の査定

 19日から国による農地被害復旧事業の査定が始まりました。
 第1次査定の対象地区で査定の様子をご覧になった方もおられるかと思います。
 災害第2係の人に伺ったところ、
「復旧事業の対象を拡げることはあっても、切られた事例はない」
とのことです。
 実際、小滝の人からは、「法面が千曲川にむかって途中まで崩れている箇所で、『こんな途中まで直すのでは、また崩れるだろう。下まで全部修復しよう』と査定官が言ったのには驚いたよ」という話を聞きました。
 こういう査定の結果が出ているのも、集落(住民)、役場災害第2係、そして信州大学の木村先生の専門家グループの三者が一体となって協力し、「中越のレベルより後退させない。地震災害からの復旧のモデルをつくる」という意気込みで被害調査と査定計画づくりに臨んだからこそ、です。
 被害復旧作業はこれからですが、この三者一体の力をいっそう強め、「言うべきを言う。求めるべきを求める」の精神で復旧・復興を進めていこうではありませんか。


農地復旧を同時に農地整備としてやりたいのだが・・・

 14日夜、青倉で木村和弘先生をお招きして、農地復興についての勉強会が行われました。その詳細は改めてお知らせしたいと思いますが、その場で出された1つの重要な問題提起、要望について報告します。
  まず、つぎの写真をご覧ください。


 これは青倉の四ッ廻り地区でAさんが耕作している2枚の田んぼを撮影したものです。いずれも地震被害をうけ、今年は作付ができず、国による災害復旧事業をまっているところです。
 それぞれ4アールと2〜3アール程度の小さな田んぼですが、両者の間には約60cm程度と思われる段差があります。
 Aさんは、「せっかく復旧工事をするなら、この際、2枚の田の段差をなくし、1枚の田んぼにできれば、作業もしやすくなるので、是非そうしたい」という希望をもっています。

 じつにもっともな希望で、山間地農業のこれからの持続可能性を考えれば、Aさんが希望するまでもなく、そのように改良することがベストであることはあきらかです。田直しの名人オペレーター・高橋健さんに伺うと、2枚の田んぼの高さを揃える田直しにかかる経費はほんのわずかだといいます。そして、Aさんはその費用は自己負担するつもりです。

 このように説明すると、このレポートをお読みのみなさんは、「なるほど、なるほど。それはいいことだ。そうするのがいい」ときっと思われるでしょう。
 ところが、国はこの田直しを認めないのです。なぜなら、「復旧は原形復旧でなければならない」とされているからです。まったく馬鹿げていると思われませんか。

 Aさんは、「『国費の無駄遣い』とよく言われるが、国が自分で無駄遣いをすすめているんじゃないか」と憤りも露わに言っておられます。
 国(農水省)の農地復旧の担当者にはこの際、是非、考えてもらいたいと思います。

 今回の震災農地復旧では何億円というおカネが使われるでしょう。それを日本の農業の効率性を高め、持続可能性を高めるために有効に使うべきではないでしょうか。農地の復旧とAさんが望むような田直しを同時にやったとして、何の不都合があるのでしょうか。しかも、田直し分の費用は自己負担するとAさんは言っていて、不正利益を得ようというのではまったくないのです。

 今回の大震災は、近代あるいは高度経済成長以降の日本の社会の歪み、欠点が暴かれた災害です。単に元の形に戻したのでは災害の予防もできません。復旧は同時にこれまでのあり方を変える要素を持っていなければ意味がないのです。

 間もなく、農地復旧事業の査定が行われますが、国の再考を強く求めたいと思います。

農地復旧で画期的な前進

 役場(災害第2係)は先週末から農地復旧事業についての集落説明会を順次行っています。10日午後には小滝集落の説明会がありました。
 今回の説明で、国の復旧事業の方法等をめぐって、画期的な前進があることがあきらかになっています。

 説明によれば、
1) 復旧事業の対象となる田んぼについて、クラック等が顕著に見られる部分に限って復旧を行うのではなく、その田んぼ全体を修復するようにする
2) 復旧作業の方法として、表土をいったんすべて取り除き、耕盤を60cmほど掘り下げてクラックを埋めて均(なら)し、固める。そして表土を戻し、均して転圧をかける
という方法をとるとのことです。

 上の2)の方法によって深くまでクラックが入っている地震災害に対応することができ、また1)の方法によって田んぼ全体の均平を確保することができます。
 こうした復旧方法は阪神・淡路大震災や中越大震災では見られなかったもので、地震災害に対応する復旧事業がようやく認められるようになったのです。じつに画期的なことです。


被害のある田んぼの全体が復旧工事の対象に:写真の田んぼはいったん中畦がつくられた。当初の話では中畦の右側だけが復旧工事対象だったが、今回の査定計画で田んぼ全体が復旧工事の対象となった。

 もちろん、これはまだ査定計画段階の話ですので、国の査定、とくに財務省の査定を通ることが必要です。国への働きかけを強め、この査定計画に盛られた復旧事業が実現されるようにさらに努力せねばなりません。    

〈住民−役場−専門家の連携の見事な成果〉
 農地復旧をめぐるこの画期的な前進は、復旧・復興で求められる住民−役場−専門家、3者の連携の賜物です。
 この3者連携にはいくつかのターニングポイントがありました。


 第1は、4月26日の木村和弘先生を囲んでの学習会です(上写真)。参加者は10数名と限られていましたが、木村先生が〈農地・農業被害の特質と復旧・復興のあり方〉について講演され、また住民から質問や意見が次々と出され、素晴らしい学習会になりました。

 第2は、5月初めの小滝復興プロジェクトの取り組みです。
 木村先生、内川先生を招いての住民自身での田んぼ被害調査、中越大震災体験者との交流(若栃集落の細兼さん)、小滝の住民自身によるクラック掘削調査、そして「作付は約3割程度にとどめ、被害を受けた田んぼは徹底復旧する」という小滝の人たちの決断です。



5月3日の小滝での調査(木村・内川両先生、森川係長、高橋健さんも参加) 

 第3は、役場災害第2係と木村先生らの見事な連携です。
 とくに重要だったのは5月24日、査定計画作成のための県の調査が始まる前に、災害第2係の要請に応えて、木村先生が県農地整備課、長野県土地改良連合会(長土連(ちょうどれん))の人たちを前に、地震による農地被害の特性等についてレクチャーをされたことです。これによって県職員や長土連職員の認識が一変し、今回の画期的な前進に直結する被害調査方針が確定したのです。小滝をはじめとする多くのところで、国の災害復旧事業の対象として認定される田んぼの面積が大きく拡大しました。
 
 小滝の取り組みに関してはいろんな機会に紹介していますので、ここではこれ以上の言及をしませんが、専門家と行政の取り組みについてもう少し述べたいと思います。


<専門家の果たすべき役割>

 木村先生、内川先生はこの間、何回、栄村に足を運んでくださったことでしょう! しかも、お二人が勤務され、住んでおられる南箕輪村からは車でも片道2時間半以上かかります。
 お二人の行動を支えたものは、学者の学問上の関心を超えるものだと私は受けとめています。「復旧・復興に役立ちたい」という強い思いであり、「中越の復旧・復興のレベルよりも後退してはならない。それよりも前進した復旧・復興を実現する」という強い思い、決意だと思います。


左端が木村先生、右端が内川先生

 以前に指摘・批判したことがありますが、自分の学問研究の利益のために被災地にずかずかと土足で入り込む「専門家」が数多くいます。木村先生や内川先生のスタンスはそれとはまったく異なります。被災住民の立場に立ちきった活動です。

 また、これは〈大学関係者は大震災に際してどうあるべきか〉を鮮烈に提起するものでもあると思います。多くの大学と大学関係者は、「学生を災害ボランティアとして送り込む」ことが大学の使命であるかのように思い込んでいます。たしかに局面によっては災害ボランティアの派遣が重要だという場合もあります。しかし、応急局面から復旧・復興局面に移行した中では、単なる災害ボラ派遣はアリバイ作りの域を出ません。大学に身を置く専門家・研究者ならば、その専門性を生かす支援の方法・内容がなければおかしい。大学関係者は木村先生らの活動から徹底的に学んでほしいと思います。

<災害第2係の働き>
 災害第2係は、そもそも「なんとしても田んぼの復旧を」という強い思いをもつ集団として動いていたと思いますが、とくに住民の思いを受けとめ、連携するという点で他に類例をみない活躍をされました。

 とくに特筆すべきは、小滝の住民が実際にクラックを掘って、亀裂が深い所にまで達していることを災害第2係に報告したのをうけて、自ら村内各地の田んぼでのクラック掘削調査を実施されたことです。
 また、木村先生と災害第2係の連携も特筆事項です。

 私はこのレポートで時には行政(役場)に対する批判をあえて書いてきましたが、その思い・目的は行政を批判すること自体にあるのではなく、「住民の思いを受けとめてほしい」、「住民と力を合わせる動きをしてほしい」という思いでした。災害第2係の人たちはまさにそのことを実現したのです。   


 災害第2係によるクラック調査 

 私は5月末に「あなたの田んぼは大丈夫ですか?」というパンフレットを執筆し、村内全戸に配布しましたが、あの原稿はじつは事前に木村先生だけでなく、災害第2係長・森川さんにも校閲していただきました。また、私が本レポートで田んぼの被害状況、二次災害の状況を報告するうえでは、高橋健さんにさまざまなアドバイスをいただきました。さらに、藤木利章さんは「俺も百姓だ」と言いながら住民の話をよく聴き、住民の心の支えになってくれています。
 実践的住民自治、住民と行政の協働の素晴らしい実践例がここにあります。

メディア関係者へのお願い
 農地復旧事業の国による査定が7月19日から行われます。
 冒頭に記したとおり、国とくに財務当局が今回の査定計画を認めるかどうかが決定的な問題として浮上しています。
 メディア関係者は7月19日、この査定を徹底取材してほしいと思います。新聞やTVが今回の査定計画の重要性、画期性を理解し、後押しする報道をしていただきたいと思います。それが復旧・復興をめぐるメディアの役割、貢献だと思うのです。よろしくお願いします。

解説:農地復旧費の自己負担割合について
 今回の説明会では、国による災害復旧事業の補助率−農家の負担割合について、
国  ―― 90%
村  ――  5%
農家 ――  5%
と説明されています。これに間違いはありませんが、これはほぼ確定している補助率です。じつは、今後、さらに補助率が引き上げられ、農家の自己負担が軽減される可能性があります。
 90%の補助は「暫定法」(農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律)に基づくものです。

 栄村は今回、激甚災害地域に認定されていますが、その場合、上記の暫定法により算定された補助の残額(市町村・農家の自己負担部分)について、さらに国の補助が嵩上げされる仕組みがあります。たとえば補助残額が1戸当たり1万円以上2万円未満の場合は残額の70%を国が補助、3万円以上の場合は90%を国が補助するというものです。

 ただし、この補助嵩上げの指定を受けるには、
当該市町村内の災害復旧事業の査定事業費 > 当該市町村の農業所得推定額×10%
という要件を満たすことが必要です。

 栄村の今次被害がこの要件を満たすことはあきらかですが、実際に国の査定事業費が確定しないとこの要件を満たしているとの最終判断ができません。
 したがって、現時点では「国90%、村5%、農家5%」とされているわけです。
 災害第2係でもこのことをよく承知されています。これから年末(年度末)にむけて算定が行われるはずですので、農家のみなさんはよく注視してください。

トマトジュースはいま…

 “さかえトマトジュース”が栄村支援特産品として大きな反響を呼んだことは記憶に新しいところです。5月中旬過ぎにはほぼ完売となり、本年産のトマトジュースの登場が待たれています。栽培農家の宮川頼之さんは自宅が半壊、菅沢の農場も大きな被害を受けていますが、今年も頑張って作付されました。
 4日、菅沢農場で加工用トマトの生育状況を見てきました。
                  

加工用トマトの畑

 畑に一歩近づいてよく見ると、もう実がついていて、青々としています。これがこれから真夏の太陽光をいっぱい浴びて、真っ赤に完熟していくのですねえ。8月末ないし9月初旬のトマトジュース出荷が待ち遠しいところです。
 
     
トマトの花      

        
しっかり実が育っています


農地復旧のあり方を考える必要が出てきています

 国による農地の災害復旧事業の査定スケジュールについて6月20日付け(No.44)でお伝えしました。9月には工事が始まると思われますが、「これで被害を受けた田んぼ、農道・水路が復旧する」と安心しているわけにはいきません。むしろ逆に、田んぼ等の復旧のあり方についていよいよ真剣に考えなければならないときが迫ってきているといえます。

 なぜなら、国の災害復旧事業は原形復旧なので、本当に安心できる復旧ができない場合があるし、また、10年後・20年後のむらの農業を展望できる田んぼを確保するには不十分なことがあるからです。

<ケース1:安全を確保できないのではないか>
 これまでにも何回か、紹介してきた青倉・西山田の農道崩落箇所。もう一度、写真をご覧ください。

 
 この箇所の復旧工事の方法ですが、村の担当者に聞くと、右の写真で農道の舗装部分が大きく落ちている箇所は盛土をして元の高さにして、元の形に戻して舗装するそうです。「原形復旧」というのはそういうことなのです。

 しかし、2枚の写真のいずれを見ても、農道左側の地盤は谷にむかってずり落ちています。ここに盛土をして元の形にしたところで、地震はいうまでもなく、ちょっとした大雨や大雪などによって再び崩落する危険があります。安全に農作業に従事できる環境ではまったくありません。

 農道右手の少し小高くなっている部分を削って、農道を少し右に移すこと、さらに左側の谷にむかって崩落が起こっている箇所に何らかの崩落防止の措置を施すことが必要だと思うのですが、原形復旧ではそういうことはできないのです。

 村の担当者は国の復旧事業の規則にしたがって査定計画を立案しているわけで、担当者に対して異論があるわけではないのですが、こういう「復旧」で本当によいのか、国の担当者(査定官)に問う機会をなんとか得られないものか、考えてみたいと思います。

<ケース2:復旧作業用の重機も入れられない>
 つぎは、同じく青倉ですが、四ッ廻りと呼ばれる地区です。

 四ッ廻りで耕作している人に聞いたところによると、作付けできたのは2割に過ぎないというほど、田んぼの被害がひどい地区です。かなりの田んぼが国の復旧事業の対象となりますが、大きな難点があります。農道が狭く(軽トラが1台通るのが精一杯)、復旧工事を行なう重機を入れることができないのです。

 上の写真は四ッ廻りに入って間もなく、農道が2本に分かれる箇所を撮影したものですが、いずれの農道もじつに狭いことがおわかりいただけると思います。
 現状ではミニ・バックと呼ばれる小型重機しか入りません。

 村の担当者はこのあたりの事情をよく理解してくれていて、「大型重機を入れられるようにする」と話していましたが、ここは集落の耕作関係者がよく議論して、この際、農道を拡幅する整備事業を自ら立案し、この先10年、20年と耕作を続けられる環境を整えるようにする必要があると思います。そして、それが“復興”というものだと思います。

<ケース3:条件の悪い、小さな田んぼをそのままにするのか>
 同じく四ッ廻りについて、もう1つ、重要な課題があります。
 田んぼのすぐそばに杉の木が繁り、日当たりが悪い。小さな田んぼで作業の効率が上がらない。そういう田んぼが多いのです。


杉林で日当たりが悪く、他の田んぼが乾いても、この田だけはまだ乾かない(6月2日撮影)。
 

 上写真の田んぼは四つ廻りのいちばん奥にあるものですが、じつに奇妙な形をしています。写真手前の部分はかなり横幅が広いのですが、途中でぐっと狭くなります。写真右上の部分が一段高くなり、荒地になっていますが、じつはここに小さな耕作放棄田があるのです。おそらく2つの田の地権者が異なるのでしょう。この右上の部分を削って下げて、下の田んぼと一緒に1枚の田んぼにすれば、随分と耕作しやすいものになります。


四ッ廻りから見える千曲川 

 この四ッ廻りのすぐそばは千曲川です(上写真参照)。その千曲川は震災で計画実行が遅れていますが、ラフティング事業が計画されています。また、千曲川の対岸の近くには古道・志久見街道があり、前近代期の舟運時代の舟曳きの足跡が残っているところです。
 

舟曳きの足跡(写っている人が足をおいている所や写真右端のくぼみが足跡)

 つまり、観光・体験ツアーのポイントとなる場所なのです。観光・体験ツアーの事業と連携すれば、四ッ廻り地区は農業とともに農作業や川遊び・ラフティングの体験ツアーの拠点にできる可能性を秘めているのです。
 そういうことも視野に入れながら、杉林の伐採や圃場整備をこの際計画・実行すれば、耕作が非常にしやすい環境にすることができます。四ッ廻りは千曲川のそばであることから、耕盤の下が砂地であり、非常に美味しいお米がとれます。ですから、いい値で売ることもできます。

 いわば「四ッ廻り振興計画」のようなものを耕作関係者で立案し、集落全体の協力を得られるようにする。そうすると、6頁で紹介した役場担当者の苦労(重機を入れられるように工夫すること)も大いに生かすことができますし、中山間地が多くて青倉・四ッ廻りと同様の苦労を抱えている長野県全体の中山間地農業の再生モデルを創り出すこともできると考えられます。
 
 復旧事業が本格化するこれからが、村民が復興にむけて知恵を出すときなのです。

田んぼの状況

 田植えが、例年よりは遅いものの、相当進んでいます。そういう中、いくつかの報告と提起をしておきたいと思います。

 右の写真、震災前から栄村をご存じの方にはお馴染みの地点です。
 野々海池からの水を運ぶ貝立水路が山をぬけて、城ヶ館−西山田に入る直前、滝になって落ちているところです。

 6日(月)の朝5時から青倉の関係者が貝立水路の水路普請を行ない、無事、水が来ました。
 早速、昨日あたり、田んぼに水を入れ始めましたが、どうやら、これが例年にはない大変な作業になっているようです。

 この滝の直後、農道が崩落し、水路も壊れて仮パイプを通していますが、雪融け水の勢いが凄いので、水が運んでくる土砂やごみ(枝葉類)がパイプの入り口を詰まらせてしまい、城ヶ館−西山田に水が来ないのです。

 関係者が何回も現場に足を運んで(農道崩落で車では行けないので相当の時間がかかる)、土砂やごみを取り除いてのですが、同じことの繰り返しが続き、結局、滝から落ちてくる水のかなりの部分をすぐ近くの崖下の横倉沢川に落とし、水の勢いをおとして仮パイプに入れるような措置をとったそうです。その結果、代掻き前に田んぼに水を入れるのに相当の時間がかかるようです。

 とにもかくにも水が来るのは有り難いのですが、今年の田んぼ作業は相当に手間暇がかかるようです。

 
滝から落ちる水の多くは写真奥の崖下へ      板のところから道路下埋設の水路管へ

 
道路の下を通って農道沿いの水路へ         仮パイプの水路に入るところ


<代掻き段階で被害が判明したケース>


これは、田起こしを終え、水を入れて代掻きをしようとしたものの、写真手前の部分にはどうしても水がのらないという田んぼです。
 聞くところによると、1週間、水を張り続けても、この手前の部分は水がのらないのです。
 原因は田んぼの沈下だと思われます。

 これに似たケースはかなり多く見られます。強引に田植えをされたところもありますが、果たして稲が育つか心配です。また、沈下した部分では畦が低くなっていますから、大雨時などに畦がぬける心配もあります。

 写真の田んぼのように、田起こし‐代掻きまでやった段階で、修復工事が必要だと判明した場合について、村単事業などでの復旧工事が行なえるのかどうか、まだ定かではないようです。田起こし‐代掻きをやってしまっているので、「地震でどういう被害が生じていたか」をもはや確認する術がないため、通常では災害復旧の対象にならないというのです。
 その理屈はわかりますが、行政が放置することはあってはならないと思います。

 たしかに耕作者本人が被害状況を十分に確かめなかったという落ち度はあるでしょうが、沈下についてはなかなかわかりにくい、あるいはクラックなども初めての震災経験なので細いクラックなどは見逃したという問題があります。個人の自己責任だけに解消できるものではないと思います。

 こういう点も、田んぼ復旧・復興において、しっかりと考え、対策していかなければならないと思います。
(了)

村内配布パンフレット―「あなたの田んぼは大丈夫ですか? 〜少しでも不安があれば、災害2係に相談を〜」

※本日の更新について※、
本日は号外です。通常の「栄村復興への歩み」のレポートではなく、全村に配布するパンフレット「あなたの田んぼは大丈夫ですか?」をもとに、記事の形にして掲載しております。
(WEB更新担当)
 
「大丈夫だ」と思っていた田んぼに水を張ったところ、畦がぬけてしまったという二次災害がかなり起こっています。これから代掻きをしようと思っている人はご自分の田んぼをよく点検し、不安があったら役場災害2係(農地担当)に相談してください。田んぼの被害の様相、災害復旧工事はこれからどう進むのか等についてお知らせします。

「見えにくい被害」への注意が必要です
 田んぼの被害には、 峺える被害」と◆峺えない被害」があります。さらに、,涼罎痢峺えにくい被害」がとくに要注意です。

●「見えにくい被害」とは
「見えにくい被害」には色んなものがありますが、
代表的なものに2つのものがあります。

 第1は、細いクラック(亀裂)です。
 小滝集落では全田んぼを調査した結果、Aという田んぼには軽微なクラックがあるので、「ブル代」をお願いしようと考えていました。その隣のBという田んぼは「被害なし」という判断でした。
 しかし、5月15日、信州大学農学部の調査班が詳しい調査・検討をしたところ、Aの田んぼのクラックが畦につながり、そのクラックがBの田んぼにもつながっていることがわかりました。
 このケースは、Bの田んぼを見ているだけでは気づきにくい「見えにくい被害」なのです。Aの田んぼのはっきりしているクラックを起点にして観察した初めて判明するのです。  
 
 第2は、田んぼの沈下です。
 じつはAの田んぼには沈下があったのですが、集落での第1次調査では気づいていませんでした。
 沈下は一般に非常にわかりづらいものです。
 田直しの名オペレーターの高橋健さんは、3cm程度の沈下でも、その田んぼを見て、「これは3cm程度下がっている」と見抜きます。しかし、普通の人だと、3cm程度の沈下には気づきません。10cmもの沈下でも、「ちょっと下がっているかな」と思う程度で、それすらも「この程度は大丈夫だろう」と思いがちです。
 でも、10cmも下がっていたら、水を張ったら、畦から水が抜けてしまいます。また、3cmの沈下も無視することはできません。耕作の中止−復旧工事が必要です。
 N集落のYさんは、知人からの注意の呼びかけをうけて、役場にお願いして、不安に思う田んぼの計測をしてもらったところ、沈下が確認され、今年の作付を断念して復旧工事をお願いすることにしました。Yさんは、「百姓として切ないね。でも、わかってよかった」と話されています。


●「見えない被害」とは●

「見えない被害」の典型はヘア・クラックです。ヘア=髪の毛のように細いクラックで、目視では気づかないものが多いものです。
 ヘア・クラックは、水を張り、代掻きを行なったところ、「どうも水持ちが悪い」ということから気づかれる場合が多いものです。ひょっとすると、代掻きの段階でも気づかず、田植えしてから日々の水管理の中で初めて気づく場合もあります。
 地震があった今年は、「被害なし」ということで作付を行なった田んぼでも、水管理に注意を払い、昨年までと比べての違いがないか、よくチェックすることが必要です。
 場合によっては、来年の作付前に田んぼの修復を行なうことが必要になる場合もあります。(阪神大震災でも中越大震災でも、田んぼの復旧には2〜3年かかっています。)


村内配布パンフレット―「雨水の溜まり具合を観察して、被害を発見したNさん」

小滝集落のC田んぼ。
耕作者Nさんが、集落で被害調査を担当する人に強くお願いをして、細いクラックのある箇所を掘削してもらったところ、クラックが耕盤にまで達していることが判明しました。Nさんに頼まれた調査担当者は「なぜ、この程度のクラックを調べる必要があるのか?」と疑問に思った程度のところです。

Nさんが強くお願いをしたのには理由がありました。5月中旬に3日間ほど雨が降ったとき、Nさんは田んぼを観察していて、「あんなに雨が降ったのに、田んぼに水がまったく残らないのはおかしい」と気づいたのです。
Nさんの観察の目に狂いはなかったのです。

こういう細心の観察が大切です。



「ちょっとした軽微なクラック」と思ってしまうクラック

 
クラックは耕盤の下まで達していた


村内配布パンフレット―「畦がぬけた二次災害の様相」


代掻きをしたところ、写真右奥の畦がぬけた(ブルーシートの見える箇所)


ぬけた箇所の拡大。
ぬけた箇所には土のうを積んで仮畦をつくってある。


この田んぼを別角度から見たとき、写真右奥の畦が
左にいくにつれて下がっていることが確認できます。


村内配布パンフレット―「過大な自己負担が発生しないよう、 国の災害復旧事業対象の拡大を求めましょう。」

 いま、県が村と協力して、国が行なう災害復旧事業の対象となる田んぼの査定計画作成を進めています。国の災害復旧事業は激甚災害の対策ですので、補助率が嵩上げされ、農家の自己負担はゼロに近く抑えられます。

 他方、村単事業で復旧する場合は、作業1時間当たり2千円が農家自己負担となります。 農家の被害は農地被害だけでなく、住宅、農業関連施設、集落共同施設等、多岐にわたります。1軒あたりの被害総額は1千万円を超える場合が多いでしょう。とても自己負担しきれるものではありません。

 ですから、国の災害復旧事業の適用範囲を必要かつ可能な限り十分に広げてもらうことが必要です。