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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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春は来ている、でも、春になりきらない

 4月2〜3日のかなりの積雪で、「もうこれが最後の雪」と思った人が多かったと思います。車のタイヤを換えたという人も多いようです。しかし、10日の朝も雪。10日夜は真冬並みに冷え込みました。
 「4月に雪」というのは村ではけっして珍しいことではないと思いますが、今年は2月に気温が高い日がかなりあり、雪消えは早いと思っていましたので、春になったのかどうか、はっきりしない天候には参ってしまいますね。
 そんな天気模様を示すのにいいかなと思う写真を何枚か、ご紹介します。
 まず、10日午前に国道117号線、飯山の大関橋の少し先で撮ったものです。
 国道沿いの菜の花がもう花をつけているのですが、10日朝はこのあたりも少し雪が積もり、菜の花と雪のツーショットです。

 


 つづいて、ミズバショウ。森の開田の上、旧村営グラウンドの先、水の流れがあるところです。気温が高くなったり、急に低くなったりでミズバショウも戸惑っている様子が窺えます。このミズバショウに出会うには、まだかなりの積雪が残る道を徒歩で進まねばなりません。8日午前9時すぎの撮影。

 

 


 ミズバショウが咲くところから車に戻ったとき、高い木の上で鳥の鳴き声が…。あまり鮮明な写真は撮れませんでしたが、独特の鳴き声で、調べてみるとルリビタキという鳥でした。

 

 3つ目はカタクリ。前号では清水河原のカタクリを紹介しましたが、今回は北野天満温泉向かいの土手です。いっきに満開になるかと思いきや、9日、10日の寒気でひと休みになったと思われますが、中旬に見ごろになるのではないでしょうか。。

 


コミズからミズノサワにかけての道割り除雪

 

 

 切明温泉の上から奥志賀公園栄線に通じる秋山林道の春の道割り除雪の様子です。朝から10cmは新たに積雪があった9日の昼前の撮影です。写真1枚目はロータリー車の前を進み、道をつけていくブルドーザー。現場は2枚目写真に見られるように大きな沢の上で、ちょっと間違うと沢に転落という超危険な箇所。ベテランのオペレーターが自身の長年の経験、体が覚えている道筋を頼りに進んで行きます。

 


 上は、ブルに続いて進むロータリー車。積雪の表面は新雪で柔らかいですが、下はカチカチ、非常に硬いそうです。

ここまでの3枚はコミズからミズノサワ方向に少し進んだ地点。私の用意が悪く、カメラのバッテリー切れでこの先の様子は撮影できず。ミズノサワまで進めば、もっと凄い様子を撮れたと思うのですが…。

 

 

 コミズの全景です。
 雪が降る時間帯もある曇天模様ということも手伝ってかもしれませんが、道割り直後のコミズの様子は私がこれまで知っていたコミズとは随分と異なるものでした。
 「多くの残雪が見られる雪渓」と言うよりも、「雪崩が沢を今にも下ってきそう」という感を強くするものでした。開いている道幅は軽自動車でもほとんど余裕がないもの。「一人ではとても行けないなあ」というのが実感です。


マルバマンサク

 

 雪深い栄村で真っ先に咲く花といえばマンサクですね。 昨年は平滝から野々海に上がる道路沿いで撮ったのですが、6日に行ってみると、道路除雪がまだ昨年の撮影地点まで進んでいなくて、翌7日、森の開田を上がって撮影しました。
ある人の話では、「道が開いた直後(3月上旬)に雪の中から枝が跳ね上がるとすぐに花をつけた」とのことですから、ひと月遅れの撮影ということになってしまいますね。
 昨年も書いたかもしれませんが、栄村で見られるマンサクは正確には「マルバマンサク」というもので、雪深い地域に咲くものです。マンサクは主に本州の太平洋側、四国、九州の山野で見られ、マルバマンサクとマンサクでは葉の形に違いがあるそうです。「あきた森づくり活動サポートセンター」の総合情報サイトによれば、「マルバマンサクの葉は、倒卵形または倒卵状円形で先は半円形になるが、マンサクは、菱形状円形で先は三角状にとがる」そうです。たしかに私が昨春、花の後に出てきたのを見た葉っぱは先っぽが半円形でした。しばらく先になりますが、葉が出てきたら撮影して紹介したいと思います。

 

        開花直前の蕾のようす

 

● 結束素材としてのマンサク
 上の写真を撮った日の夕刻、トマトの国でお湯に浸かりながら、森の広瀬敏男さんから、「マンサクの枝をねじって、いろんなものを結わえたんだ」というお話を聞きました(表現が正しく再現できていないかもしれませんが)。
 上記した「あきた森づくり活動サポートセンター」のサイトでは、「マンサクは生のうちに、ねじって繊維をほぐして縄のように使う。皮つきのまま河川工事用の柵や蛇籠の材料、背負いかごの骨組みにも利用された。昭和20年代までは、薪や炭俵、粗朶、刈柴を結束するのに用いられた」と紹介されています。世界遺産になっている白川郷の合掌づくりの屋根下地の部材の結束にも使われているそうです。
 機会を見つけて、一度、やってみたいと思います。

 

 

 これはこの時期にしか見られない景色。森開田の道路沿いのマンサクの先に青倉集落が見えます。


もうすぐスジ播き

 

 森農業改善組合による種籾の浸水の様子です。
 この催芽機は「平成16年度地域営農補完体制整備事業」で導入されたもの。長く大事に使われています。この装置で水温は13℃に保たれています。
 森農業改善組合では4月18日を皮切りに3回に分けてスジ播きが行われる予定。
今年はこういう農作業の様子をこまめに撮影していきたいと考えています。本号の冒頭で書いた中山間地域直接支払制度を有効活用していくには、こうした農作業の一コマ一コマ、また集落の人たちの共同(協働)作業の様子を記録し、集落の取り組みを積極的にアピールしていくことが重要だと思われるからです。いろんな場面にちょこちょこっとお邪魔して撮影することが多くなるかと思いますが、ご理解・ご協力いただけますよう、よろしくお願いします。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
栄村復興への歩みNo.354
2019年4月11日発行 編集・発行人 松尾真
連絡先:電話080−2029−0236、 mail;aokura@sakaemura.net
ゆうちょ銀行 11100−01361481 栄村復興への歩み協賛寄金 ながの農協栄出張所 普通0009390 栄村復興への歩み発行協賛金松尾眞


松尾まことの議員活動報告第34号

 3月議会(3月5日〜13日)が終わって約20日。ただし、予算審議の「結着」がついたのが3月25日の臨時議会でしたので、報告が4月にずれこみました。
 3月議会は予算議会。新年度の予算が決まりました。予算の骨格は「広報さかえ」や一般の新聞でも報じられますので、私の報告では新年度予算から見える村財政の現状、予算修正をめぐる一連の事態などについて、お知らせしたいと思います。

 

◎ 一般会計予算は前年比86.8%、約4億9千万円減。なぜか?
 新年度予算は一般会計で総額32億1,900万円で、平成30年度の37億1千万円よりも約4億9千万円少なくなっています。これは注目すべき大きな変化です。「なぜ減少なのか?」、しっかり読み取ることが必要です。
 予算規模が前年までよりもかなりの減額となった場合、他市町村の予算をめぐる報道などでは、イ)大規模事業が前年度までで終了したため、ロ)歳入額が減少するなど財政難が生じているため、などの要因が挙げられます。
 本村の新年度の予算規模縮小は、その2つの要因が共に働いていると見られますが、とくに重要なのはロ)の要因にあると言えます。そのことは歳入予算から明らかになります。
 村の財源の中で47.4%を占める地方交付税交付金は前年比97.9%でさほどの減少ではありません。大きく減少している主な財源が3つあります。1つは国庫支出金で前年比61.9%(金額で約2億3千万円が約1億4千万円に減少)、2つは繰入金で前年比67.2%(金額で約7億9千万円が約5億3千万円に減少)、3つは村債で前年比66.%(金額で約4億3千万円が約2億8千万円に減少)です。

 

■「復興期の終了」による国から入る税源の減少
 上に挙げた3つの財源減少の要因のうち、国庫支出金の減少は8年前の震災からの復旧・復興に関わる事業がほとんど終了したことによるものです。言葉の真の意味での震災復興ができているのかといえば、けっして「復興終了」とは言えませんが、国が支出する復旧・復興事業がほぼ完了したことは事実です。
 その意味で、震災によって大きく膨らんだ村の予算規模が縮小することは正常なことだと言えます。
 ただ、森川村長が「栄村の予算の適正規模は30〜35億円」と言っていることには疑問符がつきます。村財政に精通している人たちの中では「適正規模は25億円程度ではないか」という見方が多くあります。震災前の村予算の規模を想起すれば肯(うなず)ける見方だと思います。

 

■ 財政調整基金からの繰入額と村債発行額の減少に注目
 私がより注目するのは「繰入金」の減少と村債発行額の減少です。
 「繰入金」とは、家計で言えば貯金に当たる「基金」を取り崩すことです。さまざまな基金がありますが、いちばん重要なのは財政調整基金というものです。平成29年度決算では13億4千万余円ありました。かなり多いと思われるかもしれませんが、けっして多くはありません。現在の栄村の年間予算規模からみれば、その4割余に当たる金額に過ぎませんから、緊急事態があって歳出が増えれば、1年で消えてしまう可能性があります。
 私を含む複数議員はこの1年間、森川村政による財政調整基金からの繰入(取り崩し)が多すぎると警鐘を鳴らしてきました。
 新年度予算では財政調整基金からの繰入金が前年度の4億8千万円から2億2,900万円に減少しています。約2億5千万円の減額で、あたかも私たちの「財調取り崩しが多すぎる」という批判を受け入れたかに見えますが、実際はけっしてそういうことではないと思います。本当のところは「無い袖は振れない」、つまり財政調整基金をもうそんなに取り崩せないところにきているということだと思われます。
 このこととの関係で目を向けるべきものがあります。村債発行残高と公債費です。つまり、村にどれだけの借金残高があり、その返済に新年度にどれだけのお金が必要になっているかということです。

 

■ 村債発行残高と公債費
 新年度の公債元金の返済額は2億8,839万円、利子支払額が1,059万6千円。他方、新年度の村債発行額は2億8,230万円。返済額と新たな借入額がほぼ同じです。
 もう少し見てみましょう。H29年度末の公債残高は約28億9千万円、そしてH30年度末残高見込額は約29億5,600万円。H30年度も元金返済をしていますが、その返済額よりも多くの新たな借金をしたことになります。
 でも、さすがに公債残高をこれ以上増やすことができず、新年度は村債発行額を前年度よりも減らしたということでしょう。

 

 以上に述べたことから、村の財政の厳しさを直視しなければならないことがあきらかになったと思います。
森川村長は3月議会冒頭の「平成31年度予算編成の施政方針」の最後の部分で「中長期的な財政見通し」、「安定した財政基盤の構築」という言葉を出していますが、その具体的な内容はあきらかではありません。今後、村の財政見通しをめぐる議論をさらに深めていくことが必要です。

 

 

◎ 私たちはなぜ、予算の減額修正をしたのか
 報道等ですでにご存じのことと思いますが、私を含む5名の議員(相澤博文、斎藤康夫、保坂良徳、阿部伸治の各氏)は連名で「平成31年度一般会計予算修正動議」を提出し、採決の結果、賛成多数(5対4)で修正動議が可決されました。
 私たちの修正案は4つの内容から成ります。

 

■ 特命課臨時職員の賃金をめぐる問題
 第1点は、特命課の臨時職員賃金を351万1千円減額することです。
 これは、2016年7月に採用された特命課の嘱託職員の任期が最大3年間となっているため(新年度の6月ないし7月に満3年になります)、予算案に計上されていた8月〜来年3月分を削減したものです。「2名が任期切れとなった後、どうしても臨時職員が2名必要だという場合は、その必要性を明示して補正予算を提出すれば、審議します」という説明を付しての動議提出です。
 森川村長は就任直後の2016年5月の全協と6月定例議会で「特命課の嘱託職員は1年契約で2回まで更新可能。最大任期は3年」と明言しています。私たちの修正動議は村長が議会で発言したことを守るように求めたもので、至極当然の修正です。

 

■ 突然出てきた「わさび田栽培試験事業」
 第2点は、「わさび栽培試験事業」というものに関するもので、予算額281万5千円に対して、137万5千円を減額するというものです。
 この事業は「小赤沢の荒廃農地を利用し畳石式わさび田を造成、わさび栽培試験を行い、生育状況や費用対効果を記録し、栄村の特産となるか検証する」というものですが、2月14日の全協(村長提出)で唐突に出てきたもので*、疑問点が非常に多いものです。イ)3月議会での質疑で明らかになったことですが、この事業について担当課長よりも森川村長がいやに詳しく知っていること、ロ)「試験」と言うにはあまりに規模が大きいこと(わさび田の造成面積、予算額)、ハ)試験栽培がうまくいった場合、次年度以降の事業者がすでに決まっていて、特定の事業体への補助に近いと思われること、さらに、ニ)他方で、多くの集落が期待している「集落営農組織育成補助事業」が新年度予算ではまったく計上されていない事実があり、そのこととわさび田栽培試験事業への多額予算の投入がバランスを欠いていること、などから、事業の開始は認めるものの、予算規模を縮小し、より踏み込んだ検討の時間を確保するために、減額修正を求めたものです。これも、今後、充分に納得のいく説明があれば補正予算での計上は可という趣旨を動議提案理由で明示しています。
   *新年度予算の編成作業は昨年12月段階でほぼ終わっています。

    この事業のようにまったく新たな事業は遅くとも12月段階で議

    会との協議を行うべきものです。

 

■開発商品の販売事業は事業自身の収入で賄うべき
 第3点は「食の高付加価値化プロジェクト」のイベント等での開発品販売の経費を75万8千円減額する、そして第4点は「特産品開発事業」関連の「特産品試験販売」の経費を33万6千円減額するものです。
 この2つに共通することは、開発した新商品を販売するとしながら、その経費が売上額を大幅に上回っていることです。こんなおかしな話はありません。民間会社が新商品を作って販売するという場合、商品の売上で商品製造と販売に要する経費を賄えるようにするのは当たり前です。
 行政が関わる「試験事業」では、「補助金が出るから試験事業(販売)をする」→「補助金が出なくなると、その事業は立ち消えになる」というケースがあまりにも多すぎます。
 今回の減額修正は、事業関係者にとっては厳しい措置だと感じられるかと思いますが、上に指摘したような「補助金頼り」(→厳しく言えば「補助金の食い潰し」)を無くしていくための踏み込みです。

 

以上の予算減額修正、1頁から3頁にかけて詳しく報告した村の財政の状況からすれば当然のものだと私は考えています。

 

 

◎ 「再議」とは何でしょうか? そして、「義務費」とは?
 信濃毎日新聞のニュースなどですでにご存じの方もおられることと思いますが、3月定例議会が終わって10日あまりの3月25日に臨時議会が招集され(議会招集権は村長にあります)、森川村長から、
   「平成31年第1回栄村議会(3月)定例会において、3月13日修正

   議決された「議案第21号平成31年度栄村一般会計予算について」

   の一部について異議があるため、地方自治法第177条第1項の規定

   に基づき、再議に付する。」
という「再議書」が提出されました(この場合、「再議書」が通常の「議案」に当たります)。具体的には、私たちが新年度予算案に対して行った修正のうち、特命課の臨時職員賃金を353万1千円減額したのに対して、この修正を取り消し、村長提出原案の830万4千円に戻すということです。
 議会はこの再議案について審議し、主に森川村長と質疑しましたが、村長の再議案は理に適(かな)っていないと判断し、賛成3、反対4で否決しました。

 

■ 再議とは
 村など地方自治体の行政や議会のしくみの基本事項を定めているのが地方自治法という法律です。「再議」に関わる規定は、この地方自治法の第176条と第177条にあります。
 第176条では2つのケースが規定されています。第1のケースは、「議会の議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は……その議決の日から十日以内に理由を示してこれを再議に付することができる」というものです。要は首長が議会の議決を受け入れられないとするわけですから、首長の拒否権とも言われます。上に挙げたケースは一般的拒否権とも呼ばれます。
 これに対して、地方自治法第176条の第2のケースは、「議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付し又は再選挙を行わせなければならない」としています。また、地方自治法第177条では、予算案に計上された特定の経費をめぐって、「議会において次に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費及びこれに伴う収入について、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない」としています。
 この176条の第2のケースと177条の場合は、首長に対して再議に付すことを義務づけているといえます。これらについては特別拒否権とも呼ばれ、176条の第1のケースのように再議に付する期間について「(議決から)十日以内」という制限をつけていません。
森川村長は、上記の再議に付す権限(拒否権)のうち、177条に規定する再議権を行使したわけです。
 そこで、問題になるのは、地方自治法177条で首長が再議権を発動できるとしている「経費」とは、どういう「経費」なのかということです。地方自治法177条をさらに詳しく見ていきましょう。

 

■ 義務費とは
 177条で再議の対象とされている「経費」は次の2種類です。
   法令により負担する経費、法律の規定に基づき当該行政庁の

   職権により命ずる経費その他の普通地方公共団体の義務に関

   する経費
   非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経

   費又は感染症予防のために必要な経費
 今回、栄村で問題になっているのは,離院璽垢如⊃浩鄲篠垢脇談寝殞彁職員の賃金(8月〜来年3月分)が177条に言う「義務に関する経費」(義務費)に当たると主張しているわけです。
 私たちは「義務費に当たらない」という見解です。
 私たちの見解と森川氏の見解は正反対で、両者の見解を見比べているだけでは議論は平行線のままになります。そこで、もう一歩踏み込んで、〈義務費〉に関する専門家による解釈を見てみましょう。
 その編集に専門家が深く関わっている全国町村議長会編の『議員必携』を参照します。それによると、義務費というのは
   「職員の給与費のように、法律又は条令で町村が負担するこ

    とを定められている経費」
だと解説されています。
 村の予算書と見ると、同じ人件費であっても、「給料」というものと「賃金」というものが区別して計上されています。特命課の場合、平成31年度予算では「給料」12,006(千円)と「賃金」8,506(千円)が区別して計上されています。「給料」は、条例で定められた役場職員の定員の範囲内で採用されている職員に支払われるものです。その給料も条例で定められています。他方、「賃金」は必要に応じ、期間を限って採用される臨時職員に支払われるものです。職員の給料、そして臨時職員の採用期間の賃金が、先に見た「条例で町村が負担することを定められている経費」に当たることは明白です。
現在、特命課には3名の臨時職員が採用されていますが、うち2名は「最大3年間」という期限を区切って3年前の7月に採用された(=今年6月ないし7月で任期満了)の方々です。もう1名は昨秋に採用された人です。
 したがって、平成31年度当初予算で義務費となるのは、H28年7月採用の2名の4〜7月の賃金と昨秋採用の1名の4月〜来年3月の賃金です。
 以上のことから、私たち議員が修正動議で減額した351万1千円は義務費には当たりません。
 新聞報道等によれば、森川氏はこれをあくまでも「義務費」であるとして村長の権限で支出する意向のようです。しかし、それは妥当でない措置だと言わなければなりません。森川氏は「村長の執行権、人事権、予算編成権」を強調しますが、法律は村長に無制約の執行権を付与しているものではありません。
 森川村長が「特命課には臨時職員がどうしても3名必要だ」と言うのであれば、「(H28年7月採用の臨時職員は)嘱託職員として最大3年の任期」としたH27年5〜6月議会での公式の発言をふまえ、新規の公募手続と予算措置をとる必要があります。
 私たちは、今回の予算修正において、格段に特別なことをやっているわけではなく、〈行政に対する監視とチェック〉という議会に課せられた使命をきちんと果たしているだけです。私たち議員は議会の果たすべき役割をしっかり全(まっと)うしていきたいと思います。

 

 

◎ 農業施策をめぐる質疑
 3月議会での予算審議をめぐって報告しなければならないもう1つ重要なポイントがあります。農業施策をめぐる質疑が相当の時間を費やして行われたことです。
 直接に議論になったのは3つの農業施策です。第1は「米農家支援事業」です。新規事業ですが、予算はわずか100万円で、これを村内約170haの田んぼを対象に配分するというのです。1反歩当たり580円?! 「1反580円で何の意味があるのか? しかも、これを配分する事務経費だけで、予算額を超える費用が必要になるだろう」というのが議員の過半から沸き起こった疑問と批判の声です。
 第2は、「ふるさと納税」(農業支援目的寄付金)をめぐる問題です。H31年度予算では1億2千万円が計上されていますが、その支出を見ると、JAへの委託料(返礼米の精米、発送等)7,932万9千円、消耗品費3,602万2千円(この中に返礼用特A米の購入費が含まれる)、印刷製本費(米袋作成代等)230万8千円、通信運搬費90万1千円となっています。つまり、1億2千万円にも及ぶ農業支援目的の寄付金のうち農家・農業支援に使われているのは最大に見積もっても3割にしかならないということです。
 「こんな使い方でよいのか」――議論は始まったばかりで、まだ圧倒的に不足していますが、重要な議論が始まったと言えます。
 第3は、第2の点と深く関連しますが、昨年度までふるさと納税を原資とする農業振興基金から700万円が支出されていた〈集落営農組織育成補助金事業〉がH31年度予算でまったく消えていることです。
 村側は「返礼米発送経費が高くなり、700万円を捻出できなくなった」と言っていますが、栄村農業にとって重要な施策を放棄する理由にはなりません。私たちは先に説明した予算の減額修正で確保された600万円をこの集落営農組織育成補助金の復活に充てたいと考えましたが、「村長提出の予算書に存在しない事業に予算をつけることは村長の予算編成権を侵害することになる」とされ、実現できませんでした。しかし、今後、この集落営農に対する支援金の復活にむけてさらに努力する考えです。
 「農業は栄村の基幹産業」と言われているにもかかわらず、20〜50歳代の生産年齢世代が農業で生きていける状況を創り出すための積極的施策がないというのが栄村の農業施策の現状です。この状況は何としても変えていかなければなりません。私たち議員も頑張りますが、多くの村民の方からさまざまな意見を出していただいて、栄村の農業を守り、発展させることができるようにしていきたいと思います。上で見た「ふるさと納税」のあり方の見直しを含めて、今後、農業施策議論の場を積極的に作っていきたいと考えていますので、よろしくお願いします。

 

(了)


栄村復興への歩みNo.353(4月1日付)

 

カタクリも咲き始めました
 3月は気温の変化が激しく、なかなかすっきり春の訪れとはなりませんでしたが、いろんな花が春の到来を告げています。
上1枚目は平滝の清水河原のカタクリ。3月30日、道路の上の崖面の2箇所に4輪だけ花が開いていました。写真は4月1日に撮り直したものです。上2枚目はオオイヌフグリ。道端などに無数に生え、春、真っ先に花をつけますね。そして、3枚目はアズマイチゲ。スキー場に向かう道、貝立橋を渡ってすぐの右手の土手に咲いています。今年最初に見たのは3月20日。その時は光線の加減か、あまりいい写真が撮れず、上に掲載したものは3月30日昼頃のものです。雪消えが進むにつれて、開花ゾーンがどんどん広がっています。
 これらの花の写真を掲載するのは毎年の定番のようになっているかと思いますが、やはり春の花の開花は嬉しいものです。TVのニュースでは温暖な地域でのサクラの開花・満開が伝えられていますが、積雪のない地域では冬も緑葉や花が見られるので、サクラが春の訪れのメルクマール(目印)になるのでしょう。豪雪の地・栄村では冬はモノクロ(白黒)の世界。だからこそ、春の花が姿を現すことに特別の感慨を感じるのだと思います。花と同時に雑草も元気を出すのは厄介ものですが…。

 

        ツクシ(3月30日撮影)


新しい指定管理者体制への移行をどう受けとめるか

 すでに周知のところですが、4月1日から村の3つの温泉宿泊観光施設が新しい指定管理受託者による管理・運営に移行することになりました。これにはなかなか複雑で難しい問題が内包されていると言わなければならないですね。率直に思うところを記したいと思います。

 

● あくまでも「公の施設」であることを明確に
 いわゆる「4施設」のうち、のよさの里を除く3つの施設について、それぞれ民間の3つの事業体が新しく管理受託者に選定されました。
 この新管理受託者への移行について、3つの施設があたかも民間施設になったかのような理解のしかたがあるようです。たとえば、村長・森川浩市氏の3月議会「平成31年度予算の施政方針」での次のような言葉です。「今までと大きく違う点は、修繕費用を除く以外は、現在、村内で営業している『民宿及び旅館業』を営んでいる民間営業者扱いと変わらない事です」。この言葉には大きな誤解を生みだす危険性があります。
 3つの管理受託者が民間事業体であること、また、当初に決められた指定管理料を除けば、これまでの振興公社のように「赤字なので村のお金を入れてください」ということは許されないことは明瞭です。しかし、森川氏の言葉にはそれ以上のニュアンスも含まれているようにも感じられます。すなわち、3つの施設が〈民間の施設〉に変わったかのようなニュアンスです。森川氏はそのようには考えていないと思いたいですが、ここは明確にしておかなければならないところです。
 3つの施設は、村が条例に基づいて設置した「公の施設」です。その「公の施設」を民間のノウハウ等を活用してより効率的に運営するために民間事業体に管理運営を託すのが指定管理者制度です。
 では、「公の施設」とは何なのでしょうか。
 「栄村観光レクリエーション施設の設置及び管理に関する条例」(平成4年制定)の第2条にしっかり明記されています。
   「村民及び観光客の保健保養に供することを目的として、栄村

    観光レクリエーション施設を別表第1のとおり設置する。」
 別表第1には、3宿泊施設の他に、のよさの里のオートキャンプ場や秋山郷・栃川キャンプ場なども入っています。そして、別表第2において、施設利用料の上限も定められています(村民と村外者での料金に差異が設けられています)。
 これらの施設は村民と、栄村と交流する観光客のみなさんの保健保養のための公共施設なのです。

 

ショウジョバカマ(4月1日、平滝にて撮影)

 

●温泉施設をめぐる村民アンケートの結果はどうなった?
 ところで、昨夏から昨秋にかけて4施設をどうするかが大きな問題になった時、村長・森川氏は観光のあり方研究委の中間報告、振興公社理事会等の考えと同時に、「村民の考えを聞く」として、昨年末ぎりぎりに「栄村観光温泉施設アンケート」を実施しました。しかし、4施設の指定管理者を公募すると1月8日に公表したにもかかわらず、「村民の考え」を示すアンケート調査結果については公表してきませんでした。
 3月栄村定例議会の一般質問で松尾が「アンケート結果が公表されていない」と問うたところ、村長は「広報にも掲示しなかったのはミス」だとして、アンケートの集計結果を議員に配りました。その内容を紹介します。
アンケート回答件数は582件で、配布件数789件に対する回収率は73.76%。かなり高い回収率です。4施設のあり方と村民の意思の関係をみるうえで最も核心をなすと思われる項目は「温泉共通入浴券についてお聞きします」でした。この設問に対する村民の回答はどうだったか。
   「あった方がよい」が54%、

   「無くてもよい」は24%でした。
 村民の意思は非常に明確に示されたと評価できます。3つの施設は4月1日から新指定管理者の下で運営されますが、この村民の意思がしっかりと尊重されることが「公の施設」としての3施設のあるべき姿だと思います。

  *ちなみに、共通入浴券の年額料金について
   のアンケートもありましたが、12,000円=
   14%、18,000円=13%、24,000円=15%、
   30,000円=9%でした。

 

● 地域の力を活かす運営で、基幹産業に育てる営業・経営を!
 さて、ここまで「公の施設」としての性格を強調してきましたが、それを村の基幹産業の育成のために生かすことを真剣に追求していかなければならないと思います。住民の福祉増進も村が経済的に潤ってこそ実現できるものです。村の基幹産業をどう育てていくかはもう待ったなしの課題になっています。
 トマトの国の事業計画には「運営地域協議会」という新しい取り組みが提示されています。トマトの国は今回、企業組合ぬくもりが指定管理受託者となりましたが、企業組合ぬくもりやトマトの国の従業員だけでトマトの国を運営するのではなく、地元地域の人たちが運営に参加していくということです。
 その運営参加が、「地元住民が利用しやすい施設にする」ことだけに限られるならば、単なる受益者組織にすぎないことになります。しかし、狙いはそうではないでしょう。都市部の人たちがトマトの国−栄村にどんどん足を運んで下さるように、地元住民が誘客プランや食材・料理などについて知恵を絞る、繁忙時に色んな仕事を自ら引き受ける、さらには経営状況にも関心を寄せ、トマトの国が栄村の観光の太い柱の一本に成長できるように努める。そんな意味があるのではないかと思います。言いかえれば、これまでの栄村にはなかったタイプの地域組織につながる可能性すら有しているのではないかと思います。
 私も地元住民の一人としてそういう取り組みに積極的に関わっていきたいと考えています。

 


 今冬2月9日〜11日の3日間、トマトの国に泊まり、スキー場や青倉集落を訪れ、雪国体験をした武蔵村山市など東京多摩地区の子どもたちがトマトの国に残した寄せ書きです。
 栄村を訪れた子供たちは異口同音に「ご飯がおいしかった!」と言います(夏に訪れる子どもたちは畑でとったばかりの野菜を使った料理にとても感激します)。また、今回の寄せ書きでは「温泉がよかった」との記述が目立ちました。
 こういう寄せ書きに、栄村−トマトの国の魅力をアピールしていくうえでのヒントがいっぱい詰まっています。


これからの季節の楽しみ

 さかえ倶楽部スキー場が3月28日に今シーズンの営業を終了しました。3月上旬段階では利用客は前年比7%増だったと聞いています。じわりじわりとですが、さかえ倶楽部スキー場の評価が高まってきています。
 次は、芽吹きと山菜の季節の到来です。これまた魅力がいっぱい。
 本紙では発行の直前に撮った風景写真を紹介することが多いのですが、もっとたくさんの人たちに栄村に来ていただくには、「これからの季節、栄村ではこんな景色が楽しめますよ」という予告こそが必要ですね。そこで、今回はここ数年の4〜5月に撮った写真をご紹介します。

 

 

 これは4月1日午前、平滝集落から1kmほど上がったところで撮影したものです。野々海池に向かう村道の道割り(冬期間閉鎖道路の除雪)が始まったばかりのようでした。
この先にはどんな世界が広がっているのか? 楽しみです。

 

 

 

 昨年5月11日の野々海池です。池面はまだ雪。周囲のブナの芽吹きが鮮やか。今冬は雪が少なかったので、今年はもう少し早い時期にこういう景色を楽しめるかもしれません。

 

 スキー場の営業が終わり、スキー場内の道路の除雪が間もなく進むでしょう。そうすると、スキー場の頂上部で“スプリング・エフェメラル”(春の妖精)と呼ばれるカタクリの群生に出会えます。

 スキー場の中をくねくねと上がる道。途中からは未舗装ですが、昨年整備されたので、軽自動車ならばそんなに苦労せずに進めると思います。
 頂上に上がって、まずはカタクリの群生とご対面。

 


 その後、180℃廻ると、鳥甲山など2千m級の山々を真正面に望めて最高! しかも、カタクリとのツーショットです。

 

 

 

 カタクリが咲き始めるのとほぼ同時にニョキニョキと伸びてくるのがワラビ。

 村の人でこのあたりに山菜採りに来る人は限られていますが、飯山市など村外の人はかなりたくさん来られていますね。

 

 この景色を存分に楽しんだ後、さらに山道を1kmほど進むと、もう車では進めず、雪の上を歩くトレッキングコースに。
スキー場上から野々海に通じる道で、貝立山の裾を歩きます。

 


 雪崩の心配がありますので、初めての人が単独で行くのはお勧めできません。この周辺をよく知る地元の人によるガイドが不可欠です。私自身は栄村を訪れるようになって間もない2006年6月、平成18年豪雪で6月になってもこのゾーンには2m近い積雪がある中、地元の人に連れられて訪れた時の記憶が今でも強烈に焼きついています。
 このゾーンを20分ほど歩いた先では、地元のガイドさんのみが知る最高の楽しみを一緒に味わうことができます。村の人も今春、是非訪れてみて、都市部の人たちを楽しませるガイドの一人になってください。

 

 

 いろいろご心配とご迷惑をおかけしましたが、久々に「栄村復興への歩み」を発行することができました。今後、通常の発行に戻していきます。


白山さまの雪掘り

 

今日3日朝、8時半集合で中条地区のお宮「白山神社」の雪掘り。
私たちの地域では「8時半集合」と言われれば、「8時半には作業は始まっている」と理解すのが至極当然のこと。
上の1枚は8時31分撮影。2m以上の積雪の坂の参道近くを“かんじき”を履いて登った後、お宮の屋根の雪と地上の積雪がつながっているのを切っているところ。
作業をしながらの撮影なので、あまりいいものが撮れていないが、何枚かを紹介。Facebookでは動画も紹介したい。

 

 

 

屋根の雪を下ろしに梯子を昇る。
この後、屋根の雪がかたまりのまま、一気に落ちてきた。

 

 

 

屋根から落とされた雪、社殿周りの雪をスノーダンプで掘って、写真左手の谷に落とす。写真手前に見えるのは昔ながらの除雪道具“こすき”。屋根の雪庇をこれで落とす。この写真左端から下を覗いた様子を撮ったものが次の写真。

 

 

 

見える川は中条川。写真右下に見えるのが雪を落とす場所。注意して作業しないと、スノーダンプに引っ張られて、雪と一緒に自分もこの急崖を落下してしまうことになる。

 

 

 

坂道の参道の途中にある鳥居はほぼ雪に埋まっている。ただし、今回は鳥居は掘り出していない。完全に埋まるようだったら、次の機会に掘る。

 

 

 

みなさんの足元に注目。みんな、“かんじき”を履いている。
雪はかなり固くなっているが、“かんじき”なしだと、一歩進むたびに膝くらいまで雪中にはまってしまうだろう。

 

 

 

作業中に朝霧が晴れて、東南方向に秋山郷〜木島平村・野沢温泉村の2千m級の山並みがくっきりと見えるようになった。写真正面に見えているのは三ツ山。

私は一昨日は夕6時半頃の新幹線で京都へ。そして昨日は午後9時半すぎ飯山着の新幹線で帰ってきて、村への帰着は午後10時半を過ぎていて、今朝の雪掘りに出るのはきつかったが、こういう景色が見られると、疲れも吹っ飛ぶ。

最後の頁に、作業を終えてスノーダンプを背負って下る人たちの姿を紹介。
その写真には三ツ山の左に鳥甲山が少し見えている。
手前に見えるのは村道と中条川の間の導流堤(側堤(そくてい))。
中条川ではこの雪の中でも土石流対策の工事が続いている。

 

 

 

 


栄村復興への歩みNo.352(1月15日付)

 

 村内で零下12℃を記録した超寒い朝がありましたね。1月10日です。その日の森・中条地区から捉えた朝陽です。厳しさの中から光が見えてくる。まさにいまの栄村にふさわしい光景だといえます。(下写真は同時刻のスキー場方向)


            今年は栄村の勝負の年

 

 村は新年早々、4つの温泉宿泊施設の指定管理者を公募することを発表しました。指定管理者制度そのものは国がその制度を創設して以来、栄村でも採用してきましたが、その公募は初めてのことです。
 何か、新しいことが起ころうとしているのです。
 この機会を生かすも殺すも、それは私たち村民次第だと思います。私は“地域プロデューサー”たることをめざす立場から積極的な問題提起をしたいと思います。


4施設の健全運営は村民すべての願い
 雄川閣、のよさの里、トマトの国、北野天満温泉の4つの施設は、第一には観光施設としてつくられたものです。と同時に、観光施設としてうまく運営されることによって村民が温泉等を利用でき、村民福利を向上させる施設となっています。
 この4つの施設が健全に運営されることは、日常的に共通入浴券での入浴をしているかどうかにかかわらず、すべての村民に共通の願いです。村の小学校や中学校の同級会をやるとなれば、会場候補に真っ先にあがるのは4つの施設のいずれかです。久しぶりに故郷に帰ってきた人たちに満足をいただくことができれば、村で暮らす者にとっても嬉しいことです。
 村民のみなさんが長年親しんだ振興公社が姿を消すことは寂しいことですが、いまは振興公社の解散の是非について議論する時ではないと思います。もちろん、総括(反省)を曖昧にしてよいという意味ではありません。それは時間をかけてやらなければならないことですが、とにかく4月1日以降、4つの施設がきちんと運営されるようにすることが現在の急務です。

 

1月10日夕のトマトの国

この日は建物周りの排雪作業が北信舗道さんの手で行われました。

翌11日には屋上の雪下ろしが。地元企業との提携です。

 

(以下、企業組合ぬくもりの事実関係の記述は同組合への取材に基づいています。)


企業組合ぬくもりの誕生は画期的
 新聞でも報道されているように、村民を中心とする有志25名によって企業組合ぬくもりが設立されました。企業組合ぬくもりは4つの施設の指定管理者公募に応募する意思を表明しています。
 上から指示されて何かするというのではなく、ごく普通の村民が立ち上がったことは画期的な出来事です。
 企業組合ぬくもりは11月24日に設立総会が開かれ、年末の12月25日に長野県知事からの認可を得て、年が明けた1月7日に登記されました。
 企業組合というのは中小企業等協同組合法に基づく法人で、「自らの職場を確保するために自ら会社を立ち上げる」というものです。ですから、企業組合ぬくもり設立の大きな推進力になったのは、昨秋10月5日に振興公社理事会から「公社は平成30年度いっぱいで指定管理から撤退する。みなさんは3月31日で職を失う」と通告された公社職員の多くが自らの職場を確保しようと立ち上がったことです。栄村では前例のない取り組みに立ち上がることはたいへん勇気がいることだったと思います。
 出資金を集めて会社をつくるという点では株式会社と似ていますが、企業組合と株式会社とでは決定的に異なる点があります。株式会社は「資金力のある少数の人が会社をつくり、労働者を雇う」のに対して、企業組合は「働く場を確保したいという人たちが少しずつお金を出し合って会社をつくり、自ら経営の主体となる」のです。
 企業組合ぬくもりの組合員には公社で働いてきた人たちだけでなく、幅広い方々もおられます。主婦の人もおられますし、「俺たちが世話になっている温泉をとにかく守りたい」という年金生活者もおられます。また、村の出身者で現在は都会に住んでおられますが、「故郷・栄村よ、元気であってくれ」と願い、頻繁に村に足を運んでおられる人も参加されています。
 みなさんのご了解をいただければ、今後、個々の方々の思いをインタビュー形式で紹介させていただきたいと思っています。
 運営は組合員総会が最高決定機関です。特定の人が勝手な運営をすることは許されません。事業に従事しようという人、従業はできないが協力はしたいという人、共に組合員になれます。さらに、「応援したい」という人たちが参加できる賛助会員制度もあります。
 私は公職に就いている関係上、組合員にはなりませんが、全力で応援していきたいと考えています。

 

小滝集落の道祖神祭り準備作業の様子

地元の子どもたちが元気に遊ぶ姿、そして交流にやって来た松本

大学の学生さんたちの姿が見られ、とっても賑やかでした(13日)

 

若者が暮らせる村を実現しなくては
 今回の4施設指定管理者公募には、栄村の観光産業の今後がかかっています。
 栄村にとって最大の課題は、《村には十分な職場がある。だから、若者が安心して村で暮らすことができる》ことを実現することです。
 「栄村の基幹産業は農業と観光」というのはほとんどの人たちの共通認識です。私もそうだと思います。
 しかし、「基幹産業」と言う以上、若者が充分な稼ぎを出来て、家族を養うことができるものでなければなりません。農業は専業農家が数えるほどしかないというのでは「基幹産業」とは言えないでしょう。農業についても産業政策を早急に検討しなければなりません。ただ、今回は4施設の運営との関係で、観光業について書きます。
 「振興公社の職員は役場に準じる給料をもらっているのだろう」と思っている人もおられるようですが、実際はそうではありません。とくに若い職員は薄給です。ひとまずこの現状を打開できるような観光産業にしていかなくてはなりません。
 「栄村は豊かな自然がいっぱい」とよく言われます。たしかにその通りです。しかし、「豊かな自然」だけでは観光は産業になりません。
 何が必要なのでしょうか。観光の旅で訪れる人たちに満足のいくサービスを提供することです。当たり前のことと言えば当たり前のことですが、しかし、栄村ではそれが実現できていないのが現状です。
 では、《満足のいくサービス》とは何でしょうか。
 サービスといえば、真っ先に接客サービスが頭に浮かんできます。多くの村民が「公社の施設はサービスが悪い」と言います。地元民に評判がよくなくて、観光客のみなさんの満足を得られるわけがありません。しかし、だからといって、職員を責めれば済むという問題でもありません。振興公社において、接客サービスの基本がきちんと教育されてこなかった、また、お客さまによいサービスを提供できるような職場環境が確保されてこなかったという問題があります。この状況を根本的に打開するのに、「自らの職場を確保するために自ら会社を立ち上げる」という企業組合のあり方が大いに有効だろうと、私は見ています。
 サービスは、宿泊施設での接客サービスだけではありません。お客さまに“物語(ものがた)り”を提供することが求められます。
 みなさんは自分が旅行に行った時、ただ景色を眺め、食事をしただけで満足しますか? そうではないですね。“物語り”があるからこそ、旅行が満足するものになるのです。

 

   「秋山郷のこの素敵な眺めはこの地の人びとが山仕事を

   中心に暮らしてきたからこそ守られてきました。長年、

   焼き畑もやってこられたのですよ。」
   「機械がなかった時代、この地の人たちは〈かんじき〉

   というものを履いて雪を踏み固め、道を確保しました。

   今日はその〈かんじき〉を履いて雪の上を歩く体験がで

   きます。」
   「さきほど食べていただいたトマト。美味しかったでし

   ょう。畑で真っ赤になるまで完熟させ、それからもいで

   くるのですよ。」
   「ご飯が美味しいですね。田んぼの水は冬に7m以上雪が

   積もる野々海というところの雪融け水です。田んぼまで水

   を運ぶ水路に人家はなく、ブナ林を通ってきます。栄養た

   っぷりのお水なんですよ。だから、ご飯が美味しいのです。」

 

 「“物語り”なんて言うから、どんな大そうな話かと思ったら、なーんだ、その程度の話か」と思われる方もおられるかもしれませんね。もちろん、上記の例だけでは、求められている“物語り”の1%も表せていません。しかし、現在の栄村観光ではこの程度の“物語り”も満足に提供されていません。企業組合ぬくもりは“物語り”ができる人材を集めるという意識性ももって事を運んでいると聞いています。

 「栄村復興への歩み」ではNo.349(11月6日付)で昨秋10月28日の秋山郷切明温泉・雄川閣の駐車場の様子を紹介しました。写真をご覧になった村民から、「えっ! こんなにたくさんの人が来ているの?」と驚かれました。
 ところが、雄川閣の人手が足らず、充分なおもてなし体制をつくれず、お客さまをみすみす逃しています。宿泊業経験者は「10月1か月で少なくとも800万円の売上は確保できる」と言います。しかし、昨秋は人手不足で450万円程度にとどまっています。山の幸を満喫できる食、秋山郷の人たちとのふれあいの機会、絶景ポイントへのご案内、…。こうしたサービスを十二分に提供できれ
ば、1カ月で1千万円の売上も夢ではないでしょう。
 そうしてこそ、観光を産業として確立し、若者が職を得て、安心して村で暮らすことができるようになるでしょう。

 

都会の子どもも一緒に餅つき

元旦のスキー場での餅つきです。都会の子どもたちにとっては滅多に

ないチャンス。楽しそうです。こういう企画を元旦だけでなく、子ど

もがたくさん訪れる他の連休にもやれるといいですね。

 

「ちょっとの時間、私も手伝い」――これが勝負を決める
 観光業は人が人にサービスを提供するものです。ですから、充分なサービスを提供しようとすれば、多くの人手を必要とします。
 ただ、丸一日、同じ人数の人手を必要とするわけではありません。宿泊を終えたお客さまがお帰りになった直後から数時間の部屋掃除・次のお客さまをお迎えする用意、昼食などを求めるお客さまが殺到するお昼前後の数時間、そして、宿泊のお客さまにお食事を出す夕食時間帯の1〜2時間。こうした特定の時間帯に人手が多く必要になります。これに対応するためにフルタイムの職員を何人も、何人も確保・配置するとすれば、人件費は膨大なものになります。
 私たちは、近場ですが、松之山温泉や当間高原リゾートのベルナティオを訪れた場合、丁寧なもてなしをしてくれる仲居さんやホールスタッフのサービスに感心し、満足します。そういうスタッフの中にはフルタイムで働く人もおられるでしょうが、多くはじつは地元のかあちゃんなのです。ベルナティオは地元の十日町市水沢地区とさまざまな協力・提携関係を築き、人材面でも多くの力を得ていると聞きます。
 じゃあ、栄村では、そういうことはできないのでしょうか。
 いえ、できます。できるはずです。
 昨秋の雄川閣は、チェックアウト直後の部屋掃除のスタッフを確保できず、困っていた時、「私たちはもう年金生活だから、そんなに稼がなくてもいい。一日数時間でよければ手伝うわ」という、かあちゃん二人が通ってくれることでピンチをしのぐことができました。
 「ちょっとの時間、私もお手伝い」だったら出来るという人はかなりおられると思います。先日、「〇〇さん、夕刻の温泉に入る人が多い時間帯だけ、フロントに立ってもらうことができないでしょうか」、「ああ、それくらいだったらいいですよ。勤めていた時は30年間、受付窓口に立っていましたから」というやりとりがあったそうです。                               
 こういう「ちょっとの時間、私もお手伝い」をかって出てくれる人がでてくれば、その存在がコア(核)で働く若いフルタイム職員を包み込み、お客さまに満足のいくサービスを提供し、若者雇用を生み出す観光産業を育てていくことができるのです。

 

さかえ倶楽部スキー場4年目という親子連れのお客さま

私がカメラを向けると、「写真を撮ってくれるって」と言って、ご家族

全員でカメラに顔を向けてくださいました。12月15日オープンの日。

 

今年一年、みんなで頑張りましょう!
 「ちょっとの時間、私もお手伝い」の話、ベルナティオをモデル(基準)とするようなサービスの提供、いずれも栄村にとっては初めてのチャレンジと言ってよいでしょう。
 「そんなこと、言うのは簡単だけど、実際にやれるのかなあ」という疑問、心配が出るのは当然です。
 でも、やらないと始まりません。まず一人、そして数人。そこからの出発です。しかし、まず動き出せば、活路は開かれます。
 今号の冒頭に、「今年は栄村の勝負の年」と書きました。
 そうです。“勝負の年”なのです。
 おそらく、実際は試行錯誤の繰り返しが避けられず、今年の干支から言われる「猪突猛進」の言葉で表されるような一直線での進撃とはいかないでしょう。でも、試行錯誤を繰り返す。そして、とくに大事なのが、成功例、失敗例をたくさん手に入れ、それを徹底的に分析し、教訓を引き出し、栄村なりの優れたやり方を編み出していくことでしょう。「もう歳が高くて、《ちょっとの時間のお手伝い》もできない」という高齢の方であっても、トマトや北野に家族などと共に足を運び、そこでのサービスについて、「あれはいい、これは感心しない」という意見を伝えることはできます。
 そういう村民総がかりの取り組みがいま、求められているのだと思います。
そして、観光を栄村産業として確立し、村民が一人でも多く、温泉に気軽に行けて、みんなでワイワイガヤガヤ、楽しめる村にしましょう。
 震災から間もなく満8年。あの大変な時にご支援くださった全国のみなさんに、「栄村はこんなに元気になりました」というご報告が届けられる村にしたいものです。
 みなさん、力を合わせて頑張りましょう。