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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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4月11日レポート はじめに

  • -
  • 2011.04.12 Tuesday
  今日はかなり強い余震が何回もありました。とくに午前10時17分にあったものは震源が中越で栄村は震度3でした。
 体感する余震がしばらくなかったのが、地震から1ヶ月目を目前にして、ここ数日続いているのはあまり気持ちのいいものではありません。地震をもたらすエネルギーはまだ蓄積されているのでしょうか。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール

信じられない県の発表

  知人と夕食を食べている時に、その知人にtwitterで入ってきた情報は信じられないものでした。その後、仕事場に戻ってPCで検索をかけたところ、たしかに県の今日のプレスリリースで出ています。

 栄村の仮設住宅について、「6月1日入居開始予定」という発表です。しかも、それは40戸分のみで、到底、希望数には足らないものです。
 プレスリリースは、今日4月11日付けの専決予算(2億2492万6千円)が決まったことをうけたものです。

 予算の専決が今日だというのは納得するとしても、そこから1ヶ月と20日(計50日)もかからないと入居できないというのは、いったい、どういうことなのでしょうか。

 建設地は農村広場グランド35戸(横倉集落)と北野天満温泉駐車場5戸ですが、この建設地はかなり前から話がでていたものです。これから建設地を探すという話ではありません。雪が残っているとはいえ、いずれも整備されている土地で、除雪作業は数日で出来るはずです。また、一般的に仮設住宅の建設に要する日数は1週間程度といわれています。

 6月1日(しかも、「東日本大震災の影響で遅れる場合がある」という)とは、3月12日の避難開始からなんと82日目になります。「仮設ができるまで」と言って避難所で我慢している高齢者などに82日間も避難所暮らしを続けろというのでしょうか。
 はっきり言って、怒りを禁じ得ません。

 県には、仮設住宅建設の日程について、ただちに再考することを求めたいと思います。
 みなさん、一刻も早い仮設住宅建設を待っている栄村の被災者を応援してください。
(県のプレスリリースは長野県HPの「発表資料」から見ることができます。http://www.pref.nagano.jp/happyou/happyou.htm

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

雪消えが始まり、見えてきた被害の凄まじさ

 信州大学の木村和弘先生が今日再び、村に来られました。今回は地滑りの専門家、新潟大学災害・復興科学研究所長の丸井英明先生と一緒に来られました。

 中条川の土砂堆積現場を見ていただいた後、青倉集落のお宮の横を通り、スキー場に上がっていく道とその横の田んぼに案内しました。この地点は、木村先生が3月25日に視察されたとき、田んぼ上の雪のクラックや、雪面が波打っていることから、地盤が動いたのではないかと心配されていた場所です(3月25日付け、「田んぼの被害は相当に大きそう ―― 信州大学・木村和弘教授らが現地調査」参照)。


 下の写真(3月25日撮影)は上の地図に「田」と記した部分を(1)と(2)の地点の中間のやや(3)寄りの地点道路上から撮影したものです。

 
 この地点で、重要な事実が判明しました。

 第1は、(1)の地点の道路上の亀裂と(2)の地点の道路上の亀裂や側溝のマスの浮き上がりを結ぶ線上に田んぼの雪上のクラックがあり、このゾーン全体が下方にむけて動いたと考えられることです。

 第2は、3月25日には雪が多くて確認できなかったのですが、今日は田んぼの畦部分の雪が消えていて、雪に入っているクラックの線上に地盤のクラックがあることが確認されたことです。

 丸井先生は、これらの事実から、この一帯が地滑りしている可能性が大であると判断されました。そして、そのことを顕著に示すものとして、電線の状態が場所によって違うことを指摘されました。
 以上のことを写真で示します。

 
地図(1)地点の道路の亀裂


地図(2)地点の道路の亀裂

 
地図(2)地点道路脇のマスの浮き上がり


地図(1)地点と(2)地点を結ぶ線上の田の様子


雪のクラックの延長線上の地面にクラックがある


地図(2)地点の道路左側の電柱の電線の状態

左側の電線はピンと張っているのに対して、右側の電線はたわんでいる。これは地盤の下方への移動(=地滑り)によって電柱が写真右方へ引っ張られたため、左側の電線はピンと張り、右側は圧縮によって電柱間の距離が縮んだため電線がたわんだものと考えられる。

 続いて、地図(3)の地点で道路の片側が陥没している地点の調査が行われました。


3月25日撮影


今日(4月11日)撮影

 3月25日はブルーシートの上に雪があって、今日の写真と比較しづらいですが、目視した印象では地盤の沈下が進行していると思われます。

 また、この地点の道路の反対側は崖になっていますが、ここで3つのことが判明しました。第1は、以前は水が出ていなかったところから水がかなりの量、出ていること。第2は、この崖の崩落を防止するためのネットを固定している留め具が落ちている箇所があること。第3は、この崖に見られる石は円(えん)石(せき)(川などで水に洗われ、角がとれて丸くなった石)であり、固い岩盤ではないこと。

 以上のことから、この地点でもかなりの規模の崖崩れが発生する可能性があると考えられます。

  
水が出ているところ


留め具が落ちている
 

円石が多く、脆い崖面
 
 以上の調査結果をふまえ、木村先生と丸井先生の判断で、ただちに県に対策を求めるため、午後2時過ぎ、県北信建設事務所と北信地方事務所農地整備課を訪れ、申し入れを行いました。県側からは、ただちに監視と調査を実施する旨、約束してもらいました。

 これから雪消えの進行とともに、こうした被害状況があきらかになってくるでしょう。
 しかも、被害は固定したものではなく、いまも被害が拡大していると思われます。地滑り箇所に雪融け水が浸透すると、地盤が大きく動く危険があります。

 丸井先生のようなトップクラスの専門的知見を総結集して被害状況の全貌をつかみ、機動的な対処をしていくことが必要です。
 
横倉の被害
 青倉の上記の被害状況の調査の後、地方事務所に向かう前に、横倉の調査も行いました。被害状況の話ばかりで気が重くなりますが、事態を正確に把握する必要がありますので、報告します。場所は、国道117から横倉集落に向かう道に入ってすぐのところです。


擁壁が押し出されている


横倉と青倉を結ぶ旧国道(現村道)が崩落している


写真中央部が陥没しているとみられる

 本当に気が重くなる写真ばかりで恐縮ですが、これが現実です。これと真っ向から向き合って、復興にむけて頑張らなければなりません。

 その第一歩はまず被害状況を正確につかむこと。村でも18日を目途に現時点で可能なかぎりの調査を行うと言っています。「ここは被害で出ているのではないか」と思われる地点があれば、役場に連絡して調査してもらうことが必要です。また、ネットワークでも連絡をいただければ、色んな先生方にお願いして自主調査を可能なかぎりやっていきたいと考えています。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

4月11日レポートの後記

  • -
  • 2011.04.11 Monday
 今日は本当に気が重くなるような報告ばかりになってしまいましたが、ここでへこたれるわけにはいきません。
 木村先生からは励ましの言葉をいただき、最大限の協力・支援を約束していただきました。

 また、後日レポートしますが、去る8日、建物被害状況調査をして下さった首都大学東京チームの方から、復興支援のかなり具体的な提案・プランを昨夜いただきました。
 さまざまな方々のご支援を得ながら、復興にむけてさらに頑張っていきたいと思います。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール

むららしい復旧作業の姿

 午前中、青倉集落を廻りました。あちこちで、「むららしいな」と思う光景を見ました。


 上の写真は「中村」と呼ばれる地区(青倉集落の第2常会)でのものです。どこが“むららしい”のか。写真中央で煙草をくわえている人が後ろに写っている家の主なのですが、その周りの人たちの顔ぶれを見ると、義兄弟、家の近所の人等々が一堂に会して復旧活動に精を出し、また、その合間にこうしてお茶のみをしているのです。

 この人のつながり、助け合い、そしてお茶のみ。そこに、これからの復興の源となる力の存在を見ることができます。

 もう1つの光景は、Kさんの家を訪れた時のものです。ご両親の家とKさんの家が並んでいるのですが、両方とも住めない状態で、ご両親は長野にいるKさんの妹さんの家へ、Kさんの奥さんと3人のお子さんは奥さんの実家に避難されています。ところが、この日は日曜日とあって、ご両親、Kさん一家5人、妹さんご夫婦、お姉さん、お母さんの兄弟で極野集落に住む方、私が確認しただけでも11人もの家族・親戚が集まって家の片付けに精を出されているのです。

 10時ころに一度顔を出したのですが、お渡しする「お知らせ」があったので、もう一度、お昼すぎに立ち寄ると、みなさんが庭先に円座をくまれて、昼食の真っ最中(残念ながら、このときカメラを持っていませんでした)。お母さんが早速“ぜんまい”の煮物を「美味しいよ」と言って差し出されました。お母さんが昨春、山で採って保存されていたゼンマイです。お母さんの言によれば、「地震の後、保存していたものをなんとか取り出したものを煮た」とのこと。じつに貴重な、そして思いのこもった食べ物です。味付けも最高。さらに、極野で用意されたというお結びもいただきました。

 お母さんからは、一刻も早く落ち着ける仮設住宅を用意してほしいという切実な訴えも聞きました。
 
茅葺きの針、養蚕の道具……
 そのKさんの家でのこと。Kさんに、「これ、何だか、わかるかい?」とあるものを見せられました(下の写真)。


 先が尖っているので、川魚を突く道具のようなものかと思ったのですが、不正解。茅葺きの時に使う針だそうです。
 また、「2階が落ちてしまっているんだよ。中を見てくれ」と言われ、家の中を見たり、写真を撮ったりしていると、「ほら、あそこにあるのがお蚕さんの道具だよ」と教えられました。下の写真です。


 いずれのものも、「これは貴重な品。是非、とっておいて下さい」とお願いすると、Kさんは快く了解してくださいました。

 村の教育委員会でも歴史史料となる文書などを片付けの中で廃棄してしまわないよう、呼びかけています。古いお家は家自体が貴重なものであると同時に、その家の奥深くに仕舞われたものの中に貴重な民俗文化の資料となるものがたくさんあることを目の当たりにした今日でした。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール

青倉受託作業班、続報

 「スジ蒔きを行なう」という青倉受託作業班の決意・決定について昨日お知らせしましたが、作業班では早速、今朝8時から行動を起こしました。
 まだ1m50cm近くの雪がある作業所の周りの除雪作業を行ない、作業所建物、建物内に収められている機械類(田植え機、トラクター、スジ蒔き機、乾燥機、籾すり機等)の点検を行ったのです。この作業所付近の道路は激しき地割れしていて、作業所にも大きな被害があるのではないかと心配されていたのですが、点検の結果、乾燥機の一部が傷んでいる以外は大きな損傷は発見されませんでした。昨春に手に入れたばかりの優れもののスジ蒔き機が無事で、「これでスジ蒔きが出来るぞ!」と、みんなひと安心しました。


作業所近くの地割れ(左:3月25日撮影)

 
作業所近くの地割れ(4月8日撮影)
 

ロータリーで雪を飛ばして除雪


無事だったスジ蒔き機

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール

中条川上流の土砂堆積、その後

 土石流を防止する土嚢の積み上げ作業が完了したことから、6日、中条地区に対する避難指示が解除されましたが、その後の土砂堆積の様子はどうか、今朝、見てきました。


「トマトの国」の脇


青倉集落の中条川のそば
 

堆積した土砂の上に流路ができ、抹茶色の濁流が流れている

 以上の3枚は午前9時40分頃に撮影したものですが、今日は天気がよく、雪融けが進んだせいか、お昼過ぎには水量がかなり増えていました。次頁の写真は青倉集落の北向地区(中条川に近い地区)で撮影した中条川の様子です。

 
 雪融けが一気に進まず、徐々に進めば、土石流化する心配はないようです。しかし、その一方で、田んぼの点検・準備を考えると一時も早く雪消えが進行してほしい。矛盾といえば矛盾。自然が相手だけに難しいものです。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール

15日に仮設住宅をめぐる座談会を開催

 栄村復興支援機構「結い」では、来たる15日、仮設住宅問題をめぐって住民間の意見を交換しあう座談会を開催することになりました。
 仮設住宅の問題に限らず、復興策をめぐって、行政がもつ情報量と、住民がもつ情報量に圧倒的な格差があり、そのことが住民の不安を強め、「明日の展望が見えない」状態を生み出す一因になっています。
 そういう状態を少しでも解消し、住民間で情報のみならず意見を交換し合い、住民が主体となる復興をすすめようという試みです。(座談会の要項チラシの内容を下記に掲載します)

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仮設住宅について話し合おう

〜色んな疑問を出し合い、みんなの希望に沿った仮設住宅を実現するために〜

4月4日から罹災判定調査が始まりました。6日には森・青倉集落を対象に仮設住宅の説明会が開催されました。
そういう中で、「当面の避難先」から仮設住宅などの「仮の住まい」に移る事に関して、様々な不安や悩みを抱えている方が多くおられると思います。
 皆さんがどんな不安を持っているのかを共有し、よりよい復興を進めていくために具体的にどんなことができるのか、専門家のアドバイスも得ながら、皆で意見交換したいと思います。

■日時:4月15日(金)19:00〜20:30
■場所:森宮野原駅交流館2階
■主催:栄村復興支援機構「結い」
■アドバイザー 澤田雅浩さん(長岡造形大学准教授)
中越地震からの復興を支援し、住宅再建の法制度や行政の対応に詳しい。栄村にも震災後3度訪れ、役場にもさまざまなアドバイスをされている。

これからの復興への歩みの過程では、村民みんなが知恵を共有し、一致団結して取り組んでいくことが何より重要になってきます。栄村復興支援機構「結い」は、住民のみなさんの復興への取り組みを少しでもご支援できるよう、今後、住民みんなで議論できる場を提供していきたいと考えています。名付けて「結い復興座談会」です。栄村の復興に向けて、各回テーマを決め、住民自身が学び、議論し、共有する場として、随時、開催をしていきます。
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―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール 


4月10日レポートの後記

  • -
  • 2011.04.10 Sunday
 青倉米などでお付き合いが深い東大駒場地区保育所の落合園長先生が土曜、日曜とボランティアに駆けつけて下さいました。お帰りの際、「田んぼをやる時には是非、お手伝いさせてください」という心強い言葉を残して下さいました。〈生産者‐消費者〉という関係性を超える、食を結び目とする強い絆を感じ取ることができます。

 今日、ご紹介したような〈むららしい〉助け合いによる復興、栄村を“第二のふるさと”とする人たちによる応援。そうやって、山村を復興し、持続させる確かな一歩、一歩を築いていくことができれば、と願っています。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール

青倉作業班、すじ蒔き実施を決定

 「すじ蒔き」と言われても、意味がよくわからない方も多いと思います。稲の苗づくりのために種籾を蒔くことです。
 先日、報告したとおり、農道と水路がダメになっていて、今年は田んぼをできない可能性が強くなっています。しかし、雪が消えないと被害の実態はわかりません。
 そこで、青倉受託作業班では、1枚でも出来る田んぼがあれば、絶対に米を作る。そういう決意をこめて、苗作りを行なうことを決めたのです。
 これは、震災後初めて開いた今夜の寄合での決定です。
 

作業班寄合、冒頭の様子

 寄合は集落に集まれる場所がないため、県境からすぐのところにある津南町の飲食店で午後7時から開かれました。まず、作業班のH22年度締め括りの会議として班長からの事業報告を了承した後、今年のすじ蒔きをどうするかを議論しました。その結果、「青倉米を食べて下さっている方々への俺たちは復興にむけて頑張るというメッセージの意味も込めて、苗を例年通りの量、作ろう」ということで一致しました。

 寄合には青倉区長も出席され、青倉の復興にむけて頑張ろうという挨拶がありました。また、区長、班長から栄村支援にやって来て下さっているボランティアのみなさんへの感謝の意、また青倉公民館再建基金への寄付への感謝の意が表明されました。

 
土を入れた苗箱にすじを蒔く


すじを蒔いた苗箱を苗代におき、シートをかぶせる

 今夜の作業班の決定は、村人が震災をのりこえて、むらを必ず復興させるという決意と意気を示した重要なものです。
 今後とも、青倉受託作業班の復興への取り組みに注目していきたいと思います。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール