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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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「ばあさんが畑をやれるようにしてやらないと」

 今日、知り合いと話していて、上の表題のような話が出てきました。
 彼のお母さん(ばあさん)は長野市の二男さんの家に避難されていて、ちょこちょこ片付けなどにむらの家に戻ってこられています。

 二男さん曰く、「おふくろにはいつまで居てもらってもいい。ただし、土日のたびに畑をやるからむらまで送ってと言われると困る」と。私の知り合いもそこのところはよくわかっています。ですから、家を建て直す、あるいは修復する間、集落の中で仮設住宅に入って、自分の足で畑に通い、農作業できる環境を確保したいと考えておられます。
 
 中越大地震のとき、長岡市内の仮設住宅に入ったお年寄りがいつの間にか、仮設住宅と仮設住宅の間の土地を耕して畑にしてしまったという話があります。
 農山村でずっと暮らしてきた人にとって、田や畑をやるのは、「作物をつくって、いくらの金を稼ぐ」という問題ではない。自分の暮らしのあり様そのものなのです。

 この知り合いの人のばあさまがやっておられる畑は、近年では、1反(10a)にも満たないのではないでしょうか。それでも、家族が食べる野菜は基本的にばあちゃんがつくるものですべて賄われています。種類も豊富です。
 これは、人の暮らしの原点が見事に貫かれている暮らし、生き方だと思います。

 長野県、そして栄村は高齢者が元気なので有名ですが、それは70歳代はいうにおよばず、80歳代になっても、こういう農のある暮らしをやっているからこそ元気なのです。
 震災からの復興はこういうことを念頭において進めていかなくてはなりません。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

田んぼを守る

 田んぼはまだ雪の下にあって、その被害状況はわかりません。しかし、昨日報告したように農道が崩れている箇所があることははっきりしています。中条川上流での山崩れは森地区の田んぼにいく水路をのみこんでしまいました。あるいは、今日、横倉集落の田んぼを見てきましたが、田んぼの上の雪にはっきりとわかるクラックが入っていました。


 下上写真で田んぼの雪の中を走るクラックがはっきりと確認できます。このクラックは右写真の道路面のクラックとつながっています。道路面はわずかですが段差が見えます。そのことから、クラックは雪だけでなく、田んぼにまで及んでいることが推測できます。



 田んぼは平らであることが絶対的要件です。田んぼの中に段差などができたら、そこから水が漏れ出し、水稲作はできません。今年は米作りができないという田んぼがかなり出てくるものと思われます。
 みなさん、「田んぼが無事であってほしい」と祈りながらも、ある程度の覚悟を決めておられます。

 では、今年、田んぼができないとなった場合、みなさんはどうされるのでしょうか。
 「田んぼをやめる」と言う人は基本的にいないでしょう。その場合、田んぼ作業をまったくしないというのではありません。

 田んぼや水路の復旧工事を行う一方、それだけでなく、田起こし(=田んぼを耕す)、草刈りの作業をしっかりとやるのです。米作りができないからといって、田んぼを放置しておくと、草が生え、伸び、やがてはススキのようなものまで生えてきます。ススキが生えてしまうと、根が深く大きいので、いざ田んぼをやろうというとき、田んぼが大きな穴ぼこだらけになってしまいます。ですから、ススキが生えるような状態には絶対にしてはならないのです。


青倉集落西山田の棚田
 
 田んぼだけでなく、畔も法面も同じです。水路も、修復を要する箇所に手を入れるだけでなく、きちんと掃除をし、草が生えたり、落ち葉が溜まったりすることがないように維持作業をきちんとやらなければなりません。


標高1,000mの位置する野々海池。ここから青倉の棚田へ水路がつながっている
   (撮影は昨年5月23日。5月下旬でも池の大半は雪で覆われています)

ちゃめ仕事をご存知ですか?
 では、その草刈りなどの仕事をいつやるのか。
 栄村には「ちゃめ」という言葉があります。「朝飯前」という意味です。「ちゃ」が朝食を指し、「め」は「前(まえ)」がつまってものでしょう。

 田んぼの季節になると、みんな、朝5時には田んぼに行きます。通常ならば田んぼの水管理をしたり、草刈りしたりします。担い手の多くは勤めをもっています。5時から7時まで田んぼで農作業をし、家に帰って朝ご飯、それから勤めに出るのです。

 今年、田んぼがだめという場合でも、この「ちゃめ仕事」をやり続けることになります。
 飯山市あたりの仮入居の住宅に5月以降も住み、そこから村の勤め先に通うというのでは、この「ちゃめ仕事」ができなくなります。

 農業構造改革論者がしばしば「兼業農家は土日だけの作業」などと言いますが、とんでもない話です。日々、「ちゃめ」をやり、夕刻には勤めが終わると、田んぼに行って水管理(=「水見(みずみ)」)をやるのです。
 ですから、仮設住宅にせよ、家の再建にせよ、集落を離れては成り立たないのです。

 みなさんは、このような日々の農作業と固くむすびついたむらの暮らしをどうお考えになりますか。「効率の悪いもの」と考え、切り捨ての対象にされますか?
 私は、いま、原発大災害で現代文明が根底から揺らいでいる今だからこそ、こういう大地とかたく結ばれた農のある暮らしというものを大事にしなければならない、価値あるものとして守り抜かなければならないと思うのです。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

箕作の中華料理店・楼蘭にて

 つい先日、どこでだったか、思いだせないのですが、ある人から「楼(ろう)蘭(らん)です」と声をかけられました。東京世田谷・千歳船橋から栄村の箕作集落に移住され、「楼蘭」という中華料理店を昨年末に開業された渡辺さんという方です。

 震災の後、「楼蘭の渡辺さんと連絡がとれない」という千歳船橋商店街の方からの安否確認メールを取り継いだことがありました。
 その楼蘭さんが営業を再開されたというので、今日の昼、「結い」本部の仲間と一緒に昼食を食べに行ってきました。ここ1週間はバイキング形式で昼食1人前500円という大サービスです。

 いやあ、美味しかった。料理も美味しかったし、さらに、被害が小さかった箕作集落にあるとはいえ、早くもお店を開け、わずか1食500円でみなさんにサービスするという心意気がすばらしい。
 私は、このお店は絶対に成功されると思いますね。
 料理を紹介しましょう。


 これ以外にご飯と、「汁物」ということで坦々麺が出てきました。私たちがお店に行ったのが11時半少し前。間もなく、小学校の先生方10名ほどもお出でになり、大盛況でした。
元気がでる話です。


厨房の渡辺さん

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

県知事が2回目の栄村訪問


 今日4日の午後、県知事の阿部守一氏が栄村を訪れました。地震直後の3月13日に続いて2度目のものです。
 知事は中条川土砂堆積現場を視察した後、役場で村長と会談、その後、役場避難所で住民と直接対話をされました。

 私は夕刻、役場内の避難所で住民と話し合う場面、記者団の質問に答える場面を見聞したほか、記者や役場職員から知事の発言等について聞きました。
 一言でいえば、県として打ち出すことが望まれるベストの方針を示されたのではないかと思います。

 豪雪の村、過疎の山村、高齢化の村だからこそ、これからのモデル的なむらづくりビジョンを復興プランとして創っていくという基本方向、仮設住宅や集合住宅について住民の不安を解消し、むらの現実に即した対応をしていくこと、むらの農業、商店街についての復興をすすめること、などです。

 私たち村民は、これをうけて、自ら積極的・創造的にむら復興のビジョンを提案していかなければなりません。
 ただ心配事もなくはありません。

 1つは、県の職員が知事のこの考え・方針を本当に自分のものとしてやっていくのかどうかです。今夕、知事は避難所で住民と一緒に弁当を食べられましたが、今夕の弁当はいつもの弁当よりもいいものでした。こういう変な「気配り」をする職員のあり方は困ります(3月13日の知事視察の直前に、役場玄関の地盤沈下箇所に、「知事の足元が危なくないように」という県の指示で、砕石を入れたということがありました)。

 2つは、村(役場)です。いわばボールは投げられたのです。このボールをどのように受け止めて、どんなボールを知事(県)に返すのか。村(村長、役場)が問われていると思います。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

青倉公民館基金の状況

 今日の夕方現在、おかげさまで84万円に達しています。
 公民館は復興の鍵を握ります。
 より一層のご支援をお願いいたします。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

被害度調査判定作業、始まる


 今日から、住宅の被害度調査判定作業が始まりました。
 この結果で「被災者生活再建支援法」による国の支援金の額が決まるとあって、みなさん、不安のうちにも期待もされています。

 私はこの調査の結果について悲観的です。中越大地震の時の経験からいえば、「マニュアル通り」ではなく、住民の被災の現実をいかに斟酌し、住民が復興への手掛かりを得られるように努めるかが重要なのですが。村の指導者がそのことを関係職員に明確にメッセージとして届けることが必要だと思います。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

忘れられた上に、水は徹底的に取られる

 「忘れられた被災地」という現実をめぐっては、いろんな方が努力をして下さり、少しずつ改善されつつありますが、単に「忘れられている」だけではありません。
 いま、水が徹底的にとられています。2枚の写真をご覧ください。

  
 上は四ッ廻りに向かう途中で撮影したもの、下は栄大橋付近です。いずれも平素は見えない岩、石が見えています。


 東京電力は通常の取水の上限毎秒171トンを超える取水を首都圏の電力不足への対策として国交省に申請したと聞いています。また、先日、十日町に行った時に宮中ダムを見ましたが、宮中ダム下流もいつになく水が少なくなっていました。計画停電の中でJRが首都圏の電車を動かすために取水量を上げているものと思われます。

 東電の措置は6月30日までの時限措置とのことですが、首都圏の電力不足が深刻化するのは夏でしょう。

 当面の緊急措置は理解しますが、「東日本大震災」には含められず、被災の事実を忘れられたまま、水だけは徹底的に取られるというのでは、あまりに理不尽です。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

飯山線の復旧工事

 今日、四ッ廻りにむかった時に、旧国道から飯山線の復旧工事の様子がよく見えました。


 路盤崩落部分はすでにレールが取り除かれ、盛土を行なう工事が進められています。盛土の様子はつぎの写真でよくわかります(地点は上の写真よりも少し新潟寄りの地点です)。



 
 他方、森宮野原駅では、壊れたホームの復旧工事が進んでいます。

 JRが復旧工事を急ぐ背景には、以前に説明した宮中ダムでの取水‐首都圏JRの電源確保というものがありますが、しかし、復旧はこういうスピードが要求されるものです。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

素敵な光景


 3日は日曜日でした。村外から駆けつけられた親戚の人などで、人も車もとても多かった。
 そのなかで、青倉の中を歩いているとき、こんな光景に出くわしました。

 息子さん一家でしょうか、高齢者夫婦のお家にみなさん集まられ、路上にシートを敷いてお昼ごはんです。思わずカメラを向けてしまいました。撮影があまりうまくないのですが、私の視界に入ったときのインパクトは写真に現われているものよりももっと強烈でした。

 写真の左に写っているおじいさん、じつは体調が悪く、地震前から入院されていた方で、昨年までは青倉でいちばん多くの田んぼ、約3町歩を耕作されたいた方です。
 
 震災で、村を離れておられた人たちが続々と駆けつけられています。都市での暮らしを営まれている方々が村に戻ることは容易ではないと思いますが、村で頑張る人たちと、村外で暮らす村出身者との交流・連帯が、震災前とは比較にならない深いものとなることを願ってやみません。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事

田んぼ被害の一端が判明

  青倉集落の田んぼに「四ッ廻り」というところがあります。ざっと田んぼが50枚以上はあるのではないでしょうか。(本レポートと別に添付する「四ッ廻り紹介」をご覧ください。「お米のふるさと便り」2010年5月号からの抜粋です)

 その四ッ廻りに向かう農道が崩落しているという話を昨日、知人から聞きました。青倉受託作業班の仲間1名が見てきたというのです。〈雪で見えない被害〉が実際に確認された最初の事例です。そこで、今日の午前中、復興支援機構「結い」のメンバー2人を誘って、見に行ってきました。
 
 この現場へは、青倉集落の西のはずれから、冬の間は閉まっている(=除雪しない)旧国道(現村道)を歩いていくしかありません。その道の現在の状況は下の写真のとおりです。

  
 上の写真は、地震による雪崩のあとです(「四つ廻り紹介」の写真ニのあたりです)。こういう箇所が3ヶ所ほどあります。それ以外は下写真のような状況です。これでも1m以上の積雪ですが。


 この道を進んでいくと横倉沢川という川に架かる横倉沢橋に出ます(「四つ廻り紹介」では写真ホです)。


現在はまだ橋のほとんどが雪に覆われています(上の写真)。

 この橋の西端を左に曲がると四ッ廻りの田んぼに通じる農道です。
 ところが、その農道が崩落しているというのです。その様子を記録した写真を何枚か、ご紹介します。


 農道の片側が横倉沢川の沢にむかって、あきらかに崩落しています(向かい側に見えるのは小滝集落で、この農道との間に千曲川が流れています)。
 つぎの写真は、上の写真の少し右手の方を撮ったものです。


 上の写真の中央部分は前の写真とかさなりますが、その右側でも崩落があるようです。雪が沢にむかって落ちている部分は崩落があるとみて間違いないでしょう。


 これは、最初の写真の崩落部分を左へ進んでいったところです。左に見える杉林を越えると四ッ廻りの田んぼゾーンに入ります。写真上方の平らな部分が農道ですが、その下の雪に段差ができているあたりの部分の上方には崩落があります。
 
 このあたりは、今回の地震で被害が大きかった小滝‐横倉‐青倉を結ぶ線上に位置します。これより先の田んぼゾーンにどういう被害があるのか、ないのか。行ってみないとわかりません。また、農道が崩落している部分ですが、じつは地中に水路の鉄管が通してあります。これが無事なのかどうか。これも大問題です。
 
 この調査・撮影をした後、青倉の仲間と少し話したのですが、
 イ. 旧国道(現村道)の除雪を早急に行い、この現場に行けるようにする
 ロ. 崩落している農道から先へは徒歩ででも入り、
  雪が覆っている状態のままでもいいから目視調査を行う
 ハ. 崩落している農道の復旧工事を早急に開始する
 という措置が必要です。

 村道の除雪は村の責任で早急にやってもらうしかありません。農道については集落の管理ですので、集落で復旧工事をしなければならないでしょう。ただし、震災ですので工事費用の補助等は不可欠です。

 山の上の田んぼ(棚田)での今年の作付は「無理ではないか」と予想される中で、四ッ廻りの田んぼで作付ができるのかどうかは生命線だといっても過言ではありません。

 いますぐに復旧対策を始めれば、例年は5月20日頃の田植えを6月15日頃まで延期して、なんとか田植えに漕ぎつけられるのではないかと思います。
 早急な対策が必要です。

―栄村ネットワーク関係者 現地からのメール記事