プロフィール

profile
栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

カテゴリー

categories

サイト内検索

Search

カレンダー

calender
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>

最近の記事

selected entries

最近のトラックバック

recent trackback

月別アーカイブ

archives

栄村関連リンク

links

携帯用QRコード

mobile
qrcode

ブックマーク & RSS

Bookmark&RSS

導流堤建設へ前進か―北信建設事務所が原案を提示 4日説明会

 大雨のたびに繰り返される中条地区の避難、これに対処するため、住民が要望してきた中条川の導流堤(どうりゅうてい)の建設に関する原案が、4日夜、森公民館で北信建設事務所から住民に提示されました。
導流堤とは、土石流が川筋からはずれて建物や田畑のあるところへ流れ出すのを防ぐために、川の側面に一定の高さがある堤をつくるものです。いわゆる砂防えん堤などが川の流れの中にあるのに対して、川の側面に築かれるので側堤(そくてい)とも呼ばれます。

導流堤建設予定場所は2ヶ所
 建設が予定されるのは、昨年9月の土石流で森林組合事務所が破壊された地点付近と、白山神社下の砂防えん堤の側面、村道や田畑に土石流が流れ込んだ地点の2ヶ所です。写真をご覧ください。

<旧森林組合事務所跡の地点>
ここに本文を記入してください。
写真1


写真2

 写真1は昨年9月16日の土石流の直後のもの。写真左下の森林組合事務所まで土石流が及んだ様子が見えます。他方、写真2はその場所の現在の様子(4日朝撮影)。写真1の右上、写真2の中央奥に「谷止工(たにどめこう)」と呼ばれる砂防ダムが見えます。昨年9月の土石流では、この谷止工をのり越えた土石流が写真1に見えるコンクリート製ブロックをまきこんで森林組合事務所を直撃したのです。
 そこで今年、旧森林組合事務所の横手に「床固工」と呼ばれる砂防ダムが建設中で、この床固工の本体から上流方向にむかって斜めに側堤がつくられています(写真2の真ん中から右中央にかけて見えるもの)。
 しかし、この側堤の高さがまったく足りません。下の写真3は旧森林組合の敷地の高さから「側堤」のある方向を見たものですが、「側堤」はまったく見えません。これでは土石流の流出をとどめることはできません(手前に見えるコンクリート製ブロックは土石流が発生すれば流され、昨年9月のような被害をもたらす)。


写真3

 4日の説明会では、この「側堤」を嵩上げする案が提示されました。
 下の図,その提案の断面図ですが、図面下に黒い線で示された側堤の3段目までが現在の「谷止工」で 写真3
建設済みだが、その上に赤色で示された堤をつくり、導流堤とするというものです。




 嵩上げ分が2m、全体で4.5mとなり、写真3に見える地面よりも1m高くなるとのことです。


<白山神社下の地点>
 もう1ヵ所は白山神社の下、砂防えん堤があるところの側面です。写真4と5をご覧ください。


写真4


写真5

 写真4は昨年9月、白山神社下の砂防えん堤から土石流が村道へ流れ出た状況を示しています。写っている車は工事関係者のもので、その人は川の状況を見に来て危うく土石流に呑みこまれかけ、命からがら逃げました。写真5は11月4日朝に白山神社下から中条地区方向にむかって撮影したものですが、赤丸が写真4の車があった地点です。
 このあたりに側堤を築造しようというのが導流堤建設原案で示された構想です。写真5に赤の斜線で示したあたりです。赤丸から先にも一定の高さの壁をつくる構想です。
 建設事務所の説明では、昨年9月の土石流の高さに加え60cmの余裕高をみて、全体で地面から約2mの高さを確保するといいます。図△その断面図です。



住民との間で率直な意見交換
 4日の説明会には、住民側は中条地区の住民と森区の評議員、建設事務所側から整備課第3係の折居係長と担当の杉田さんが出席しました。
 今回の説明は、「決まった建設計画はこれです」という結果説明ではなく、北信建設事務所が作った原案を住民に示し、住民の意向を聞き、その意見をさらに原案に反映させるというものです。
 住民側からは、堤の高さをめぐって具体的な質問が飛び、とくに白山神社下の導流堤をめぐっては一層の嵩上げを求める意見が強く出されました。

いまは北信建設事務所の原案段階、実現へ県・国への要望の声を強めることが必要
 4日に示された案はあくまでも北信建設事務所の原案。「県の砂防課と相談している」とのことですから、県庁も推進の立場に立っていると思われますが、県の来年度予算に計上されないと、この導流堤は実現しません。そして建設費は相当の高額になりますので、県単独事業としては困難で、当然、国(国土交通省)が予算を出してくれることが必要です。
 いま、南木曽の土石流、広島の土砂災害をめぐって、「土砂災害防止策」がニュースの大きなテーマになっていますが、その中で中条川の名前が出てくることはありません。「広島」、さらに「御嶽山」の後は「南木曽」さえ新聞に出てくることが激減しているような状況です。
 ところが、南木曽の土石流量が1.5万?、広島の安佐南区八木地区が約50万?に対して、中条川は2011年3月12日が約200万?、昨年9月が57万?、今後予測される最大流量が約40万?と、中条川の土石流の規模は並外れています。
土石流対策の導流堤は全国的に見てもあまり事例がないそうですが、住民の避難が繰り返される中条川の土石流の被害を軽減できるかどうか、この導流堤に大きくかかっています。
 県・国に対して大きな声をあげていくことが必要です。

<後記>
 今号は2つの記事だけで一杯になりました。
 村を廻っていると、野沢菜を漬ける人の姿が目立ちます。雪囲いを終えたお家も見られます。次号までに初雪ということになるかもしれませんね。


野沢菜を洗う中沢うめのさん(小滝、7日)

災害と情報

 また悲惨な災害が発生しました。御嶽山の噴火による死者47名、行方不明16名という事態です。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、行方不明の方々が一日も早く発見されることを願います。
 この災害をめぐって、「予知はできなかったのか?」ということが大きな話題になっています。どうやら火山噴火、とりわけ今回のような水蒸気噴火は予知がかなり難しいようです。しかし、そのことと〈今回のような悲惨な災害を食い止めることはできないのか〉ということとはいささか異なるのではないかと私は思います。



 ここに1枚のペーパーがあります(上の写真)。タイトルは「火山名 御嶽山 火山の状況に関する解説情報 第1号」です。発出者は気象庁で、9月11日10時20分に出されています。報道によれば、この情報は長野県、王滝村、木曽町、高山市、下呂市に伝えられたそうですが、王滝村と木曽町が御嶽山の山小屋に伝達した以外の対応はとられなかったとのことです。
 「解説情報」には、「火山性地震が増加しています」として、その回数を提示しています。そして、「火山性地震の日回数が50回を超えたのは、2007年1月25日以来です」、「御嶽山では、2007年にごく小規模な噴火が発生した79−7火口内及びその近傍に影響する程度の火山灰等の噴出の可能性があります」と書いています。
 私はこういう情報をもっとオープンにし、これから山に登ろうという人の目に必ず入るようにするべきだと思うのです。
 現状は、噴火後の報道で「じつはこういう『解説情報』が出ていた」と知らされた後でもなお、気象庁のHPから探し出すのが結構大変という状況です。

災害情報リテラシー強化のための取り組みを
 もちろん、現在の状況のままで、ただこうした「解説情報」だけを流されたとしても多くの人は「何のことかさっぱりわからない」と反応するしかないかもしれません。
 そこで提案したいのが、「災害情報リテラシー教育」です。「リテラシー」とは、「書かれたものなどを適切に読み解く能力」と理解してもらえれば結構です。
 上の「解説情報」の場合であれば、「御嶽山では2007年に噴火があった。その時と同じように火山性地震が増えている」ということが分かればいいわけです。
 それが分かれば、入山者は「警戒レベルは〈1〉かもしれないが、噴火の可能性があるから今回は登山をやめておこうか」という自主的判断が可能になります。
 御嶽山噴火のニュースを見ていると、火山専門家はもちろんですが、TV局の災害担当記者などが出てきて、一般視聴者でも分かる解説をしてくれます。しかし、平素はそういう話はTVなどでは出てきませんので、一般の人はいきなり「解説情報」だけ見せられても、意味がよくわからないわけです。
 そこで、日頃から「火山情報の読み方」のような教育・学習の機会を増やそうというのが私の提案趣旨です。

中条川土石流警戒にも当てはまること


 上写真は貝立山裏から野々海池に通じる村道の脇に設置されている雨量計を写したものです。
 中条川での土石流の発生可能性を考えるうえで最も大事なデータの1つは山での雨量です。
 右写真の雨量計で計測された雨量のデータは村役場に自動送信され、役場の防災担当者はパソコンを開ければ、そのデータを知ることができるそうです。
 そのデータが一般村民に開示されれば、中条川流域の住民は「この程度の雨であれば大丈夫だ」とか、「まだ避難指示は出ていないが、避難を考えた方がよさそうだ」とか、自主的に考え、判断することができます。
 広島での土砂災害の場合もそうですが、「避難の判断は行政」というのではなく、住民全体の「災害情報リテラシー」の向上と積極的な情報開示が自然災害被害を減少させる(=減災)ために大事だと思うのです。
 

土砂災害防止へいかに備えるか

 前号での「土砂災害警戒区域について」の続編です。

丸井英明氏からいただいたコメント
 「復興への歩み」前号(No.230)を全国の知人・友人にメールで送る際、私は〈土石流の危険があるところはどういうとろか〉について書いたのですが、それに対して、新潟大学災害・復興科学研究所教授の丸井英明氏から、つぎのようなコメントをいただきました(以下の文中、下線部が丸井さんのコメントです)。
 
   文章を拝見し、全くその通りと受け止めましたので一筆とらせて
   頂きました。
   特に2点は重要と考えます。
     土石流危険渓流の内、多くのものは平常時には殆ど水がなく、
     その様な小さな渓流が豪雨時には一変すること。
    (広島の土石流の場合でも多くの渓流が通常は水のない小さな
     沢でした。
    ⊇擦鵑任い訖諭梗身が、自宅の近所の小さい沢の危険性をよ
     く知り、非常時の対応について検討しておくことが必要。

   これらは、極めて重要でこのような認識と対応で被害を大きく軽減
   できる筈です。

 丸井英明さんは日本地すべり学会会長を務められたこともある土砂災害に関する著名な研究者です。栄村にも震災直後にアドバイスに訪れて下さったことがあります。
 その丸井さんからこのようなコメントをいただき、私は意を強くしました。
 
土石流警戒区域の具体例を見る
 下の図面は「土砂災害警戒区域図」の一部です。場所は青倉集落です。役場でいただいた図面を写真撮影したものですので、やや見にくいかもしれませんが、おおよそのところは分かっていただけるかと思います。元になっている航空写真は平成16年に撮影されたものです。



 この図で土石流の警戒区域に指定されている場所を地上撮影したものが次の写真です。赤色でマークを入れたあたりが土石流が流出してくるとされているところです。



 今泉地区から続く小さな沢で、青倉集落の中を流れる部分は「中ノ川」と呼ばれ、最終的には千曲川に流れ込みます。国道117の青倉トンネルの手前、「北沢橋」と名付けられているのはこの沢に架かる橋です。

 この沢が青倉集落に出てくるところが、平時、どんな様子なのか、下の写真をご覧ください。



 水が少しは流れていますが、丸井英明さんが同意のコメントを下さった「ほとんど水が流れていず、『ちっぽけな』もの」というのに基本的に該当します。しかし、2005(平成17)年8月の集中豪雨(お盆に大雨が降った時です)の際にはこの沢からかなりの水が出て、上写真の赤丸の近くにあるお墓が浸水したといいます(青倉住民の証言)。
   *青倉に限らず、栄村全体で2005年8月の集中豪雨で被害が出
    た箇所を思い起こすことが土砂災害に備えるうえで大事です。

 この経験から、この「のけま沢」というところで土石流が発生するおそれは十分にあることが理解できます(県作成の図面では「のけま沢」と書かれていますが、青倉で「のけま」というのは別の場所です。しかし、ここでは県作成の図面に従い、「のけま沢」と書きます)。
 
どう備えるか
 この「のけま沢」の警戒区域内には現在、人家が3軒あります。田んぼは多くの枚数があり、関係する世帯はかなりの数になります。

 どう備えるか。まず第1は、この沢が土石流発生危険箇所に指定され、警戒区域が設定されていることを、警戒区域に関係ある人たちがきちんと認識することです。

 第2は、最近しばしば耳にする「土砂災害警戒情報」というものが出されたとき、どう対応するのかを検討することです。
 行政(村役場)に指針を出す責務があると思いますが、それだけでなく、関係世帯、さらには集落で自主的な対応計画を考えることが必要だと思います。率直に言って、「役場が何か言ってくるのを待っている」というのでは駄目だと思います。

 ところで、県作成の図面には、土石流の高さは0.8m、土石流の力の大きさは24.3KN?屬判颪れています。高さはイメージできますが、力の大きさ「KN?屐廚箸いΔ里倭膿佑砲呂茲わかりません。調べてみると、10 KN?屐瓠1屬△燭1トンの力」ということです。ですから、「のけま沢」の土石流では1屬△燭衞2.4tの力が加わるということですね。1つ2t以上ある大きな岩が勢いよく建物などにいくつもぶつかるのだとイメージすればよいのではないでしょうか。かなり恐ろしいことです。そうイメージすれば、避難の大切さが理解できると思います。

 そしてできれば、足腰がしっかりしている人などがこの沢に実際に入ってみて、沢周辺の山の様子などを知ることも必要なのではないかと思います。
 私は震災後、この沢に今泉側から入り、途中までは進むことができましたが、あまりの大変さに途中で挫折したことがあります。私が入った範囲では、昔は人が頻繁に入った山(森)が、今は荒れ放題になっていました。そうした状況が少しでも改善されれば、土石流の危険が減少するかもしれません。砂防施設などのハードに依存するだけではダメなのではないかと考えています。
 
 今回はここまでですが、次回は中条川土石流について考えたいと思っています。

「土砂災害警戒区域」について

 8月20日に発生した広島の土砂災害以降、新聞・TV等に頻繁に出てくる言葉に「土砂災害警戒区域」といものがありますね。今回は、これについて少し考えてみたいと思います。

そもそも「土砂災害警戒区域」とは
 ご存知の方も多いかと思いますが、「土砂災害警戒区域」というのは土砂災害防止法という法律に基づいて指定されるものです。この法律は正式には「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」という長い名前のものです。1999(平成11)年6月に発生した広島県での土砂災害(土砂災害発生件数325件、死者24名)を契機に制定されました。
 この法律に基づいて「土砂災害警戒区域」とされるのは、
   「急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命又は身体に
    危害が生じるおそれがあると認められる区域であり、危険の周
    知、警戒避難体制の整備が行なわれる」
区域です。
 この区域の指定と土砂災害防止対策に必要な調査を実施するのは都道府県です。栄村の場合は長野県が指定・調査を行ないます。
 そして、住民への情報伝達と警戒避難体制の整備は市町村の担当です。
 情報伝達で重視されるのが土砂災害ハザードマップというものの作成と住民への周知です。
 以上の「土砂災害警戒区域」よりもさらに危険度が高い区域は「土砂災害特別警戒区域」に指定されます。この区域は開発行為に対する許可制、建築物の構造規制等が行なわれます。わかりやすくいえば、家などを建てることが禁止されたりするということです。
 なお、土砂災害には「急傾斜地の崩壊」、「土石流」、「地滑り」の3種類があります。
 
栄村には「警戒区域等」がどれくらいあるのか
 2年前だったでしょうか、栄村の各集落で「土砂災害警戒区域」に関する説明会がありました。説明会で話を聞いた記憶がある方は多いのではないでしょうか。
 長野県のHPで「警戒区域等の指定状況」を調べてみました(8月28日に検索)。それによると、栄村については

         土石流          告示年月日
     警戒区域    特別警戒区域
     23箇所      22箇所    H25.3.15
     26箇所      19箇所    H25.3.28
     16箇所      11箇所    H26.1.23

      
         地滑り  
     警戒区域    特別警戒区域   告示年月日
     30箇所              H25.3.28
     4箇所                H26.1.23

         急傾斜地の崩壊
     警戒区域    特別警戒区域   告示年月日
     48箇所     34箇所     H25.3.15 
     28箇所     14箇所     H25.3.28
       3箇所       3箇所     H26.1.23

と記されています。
 ずいぶん沢山あるものです。
 
指定箇所はどうやったら分かるか
 インターネットで「しんしゅうくらしのマップ」というページを検索すると、指定箇所を地図で見ることができます。しかし、パソコン画面の操作に相当慣れていないとかなり見づらいです。
 先に紹介した土砂災害防止法では、村がハザードマップ(地図上にどこが警戒区域なのかを図示したもの)を村が作成し、村民に知らせることになっています。
 栄村のHPを見ると、洪水に関するマップは掲載されていますが、土砂災害警戒区域の地図はまだ掲載されていません。現在制作中だとのことです。役場に尋ねれば航空写真に警戒区域を書き込んだものを見ることができると思います。
 
 さて、ここまで知ったうえで、私たちは日常、土砂災害防止のためにどんな努力をすればよいのか、それについては次号で考えたいと思います。
 

中条川住民説明会について

 8月27日夜、役場で「中条川住民説明会」というものが開催されました。
 村長名での招集で、「工事進捗経過報告」、「避難雨量基準」というのが主議題。招集を受けたのは森区と青倉区の役員のようですが、中条地区の住民は森区長の判断で参加ということになりました。

説明の主なポイント3つ
 工事進捗状況については県の担当者、避難基準については役場防災情報係から色々と説明がありましたが、ポイントは以下の3点です。
   1. 青倉集落北向地区を避難対象地域から外(はず)す。
   2. 「トマトの国」上流での谷止工新設や白山神社近くで
    の砂防堰堤(えんてい)復旧工事は予定通りに進んでいる
    が、1号崩壊地内の工事用作業道開設については応札業
    者ゼロで、未着手である(現在、再度の入札告知中)。
   3. 旧森林組合事務所付近及び白山神社付近(いずれも昨年
    9月の土石流で土砂があふれ出た箇所)に導流堤(どうり
    ゅうてい)(側堤)を建設する構想が初めて県から示され
    た(ただし、担当部署における検討段階で、予算措置が
    決まっているわけではない)。

不安は解消できたか?
 広島での悲惨な大規模土砂災害が起こって1週間目のこと、相当踏み込んだ話が聞けるのかと期待して臨みましたが、率直に言って、肩透かしをくらわされた感じです。台風シーズンの到来を前にして、とても安心感はもてません。
 いくつか問題点を指摘しておきたいと思います。
 
青倉北向地区を避難対象から外す件について
 説明の当初はこのような判断を行なう根拠は示されませんでしたが、住民側の質問に答えて「土石流の予測シミュレーションの結果、土石流が発生しても青倉集落に土石流が流れ込むほどの高さには達しないと考えられる」ことが根拠だと説明されました。
 シミュレーションを見る限り、私もその判断に一定の合理性はあるのかなと思いますが、役場が青倉の区長さんに同意と住民への説明を求めたことについては納得できませんでした。こういうことは首長が自ら責任をもって関係する住民に説明すべきものだからです。村長自ら住民に説明することについて、副村長からお約束をいただきました。
 なお、青倉の関係では、土石流が青倉側に溢出するかどうか以上に、川の洗掘が異常に進んでいる中条川下流の河川改修が緊要だと思います。さもないと護岸が崩壊する危険が高まってくると思うからです。

山の中の雨量検知、山の状態の観察が不可欠
 大量の雨が降った場合に土石流発生の危険があることは県が行なったシミュレーションからも明らかですが、問題はその雨量の検知です。
 同じ時間に雨が降ったとしても、里と山では雨量は異なります。山の方が圧倒的に多いのが一般的でしょう。そのことからすると、中条川上流の山中の雨量検知態勢が弱いことは事実です。スキー場から野々海に向かう道の途中に雨量計らしいものが1基あることは私を含め複数の住民が見ていますが、27日の説明では山の雨量検知態勢についての話はありませんでした。今後、県等に問い合わせてみたいと思います。
 また、県のシミュレーションは1号崩壊地の埋塞土の流出のみを前提としていて、1号崩壊地の斜面(山)の新たな崩壊は見込まれていませんが、本当に心配はないのか、山の状況の観察が必要だと思います(南木曽では7月9日の土石流発生の後、土石流が発生したのとは反対側の斜面にも亀裂があることが判明しています)。

導流堤こそ急ぐべきだ
 先に紹介した導流堤の建設こそ、地元住民が当初から(とりわけ昨年9月の土石流以降)強く求めてきたことです。その構想が今回示されたことは一歩前進ですが、しかし、まだ北信建設事務所の担当部署で検討されている段階に過ぎません。
 砂防堰堤の修復等よりも優先して取り組んでもらいたいものです。県に強く働きかけたいと思いますが、村も全力で県に働きかけてもらいたいと思います。

自主防災態勢に取り組もう
 8月末になって信毎などで自主防災への取り組みについての報道が増えています。私は中条川流域に暮らす者としてその重要性を強く感じています。広島の災害以降、頻繁に取り上げられる「土砂災害警戒区域の指定」が行なわれたからといって、それで災害が防げるわけではありません。地域の状況を自ら把握し、役場の指示を待つまでもなく自主避難する用意があるくらいでないと災害には打ち勝てません。
 そういう取り組みを行なっていきたいと思います。
 
 27日の説明会で強く感じたことの1つは村の幹部が中条川の現況についてあまり自分の目では確かめておられないのではということです。地元の住民も頑張りますので、(中条川の管理は県所管ですが)役場においてもっともっと踏み込んだ対応をしていただきたいとお願いする次第です。
 

中条川上流1号崩壊地の状況

 14日午後、天候が安定していることを確認して、約1ヶ月ぶりに中条川上流の1号崩壊地を訪れてみました(今回はさらに奥の2号崩壊地の様子も見てきました)。

 1号崩壊地の中に入ったとき、これまでは感じたことがない思いを抱きました。「見捨てられた荒涼としたところ」というものです。7月6日に訪れた時にはあったボーリング調査の機械もすでに撤去されており、お盆休みのためか、監視所に人影もなく、ただただ無残な光景が広がるばかりなのです。前号で報告したとおり、県林務部長はこの1号崩壊地の本格的な排土作業は来年度になると言っています。絶望感に襲われそうです。でも、声をあげ続けなければいけないと思います。

 危険な状況は続き、拡大しています。たとえば、今年に入ってクラックの崩落が確認された箇所はさらに崩壊が続いています(下写真)。


 また、今回、非常に気になったのは、流路を挟(はさ)んで山が崩落したのとは反対側の斜面もたいへん脆(もろ)くなっていることです(次の写真)。


 3枚目の写真は、崩壊地内の流路に可能な限り近づいて撮影したものですが、水が少し出れば、土砂がかなり流れ出ることがあきらかな状況がご理解いただけるかと思います。


 もう紙面がありませんが、県林務部・建設部は私などが「県民ホットライン」に質問・要望を寄せて初めて状況説明をするというのではなく、もっときちんとした説明を随時、住民に対して行うようにしてほしいものです。


<後記>
 11日号をお休みさせていただいたため、取材しながら掲載できないことがたくさんあります。
 19日に約1ヶ月ぶりでスキー場から野々海に向かいましたが、季節の移ろいをはっきりと感じとることができました。野々海まで行って色んな写真を撮影すると、少なくとも半日仕事になり、そんなに頻繁に行くことはできません。それでも、栄村の豊かな資源を発信し、復興・村づくりに少しでも役立つように努めたいと思っています。
      

とても残念な内容――県林務部長・建設部長からの回答〜中条川土石流対策の問題

 台風11号、12号が発生し、台風シーズンになってきています。
 私たち中条地区と青倉・北向(きたむき)地区の住民が土石流発生、あるいはその恐れで避難したのは昨年9月16日(台風18号)と10月15日(台風26号)でした。あれから間もなく1年。また台風シーズンがやってきますが、昨年9月の土石流発生で不安定な状態になったままの1号崩壊地ではまだ何の対策もうたれていません。中条川下流で暮らす者として、ちょっとでも強い雨が降ると、とても不安でおちおち眠ることもできない状態が続いています。


昨年9月の土石流直撃で全壊した森林組合事務所

「県民ホットライン」に直接訴えました
 長野県庁に「県民ホットライン」というものがあります。県民が要望や意見を知事に直接に出すことができるというものです。直接の回答は用件の担当部署がするのですが、その後、必ず知事が要望と回答の両方を読むことになっています。
 ある人から強く勧められ、7月14日にメールで提出しました。「1週間以内の回答が原則」で、7月23日にメールで回答が来ました。
 「回答」はある程度予想していた内容でしたが、予想以上にひどい回答もありあした。以下、ポイントを紹介します。(なお、要望と回答の全文は県HPで公開されることになっていますが、私の分はまだアップされていませんので、ブログで見られるようにしておきます。)

昨年9月の被害の大きさを認めない建設部長
 昨年9月の土石流で森林組合事務所が全壊となり、村道・田畑に大量の土砂が流入したことについての回答として、奥村康博県建設部長はつぎのように答えています。
    「昨年9月の台風18号による大雨により発生した土石流に
     つきましては、上部の治山施設で捕捉したほか、白山神
     社横の中条砂防堰堤と森林組合事務所上の床固工で約5万
     立方メートル(小学校のプールの約140個分)の土砂を捕
     捉しており、下流の集落やインフラ施設等への被害軽減に
     効果を発揮したものと考えております」
 信じられない回答です。建設部長の「回答」は「被害は軽微だった」ということです。森林組合事務所の全壊、命からがら逃げてようやく助かった人がいたことなどに、まったく素知らぬ顔を決め込んでいます。まるで、「死者がでなかったら災害ではない」と言わんばかりです。

崩壊の危険がある1号崩壊地の堆積土砂撤去は来年?!
 栄大橋をはじめ村内のいろんな所から見える1号崩壊地。いまも、大量の崩落土砂が堆積(たいせき)し、また、崩壊と土砂落下が進んでいます。
 まず、7月29日に栄大橋上から撮影したものをご覧ください。



 写真に3つの赤マークを入れましたが、右下の箇所はいまも崩れ続けているところです。モルタルを吹付けた箇所もモルタルの中が空洞になっていたりします。
 左下のマーク箇所は県林務部も大量の土砂流出の危険性があるとして、排土工等を予定しているところです。さらに上のマーク箇所はご覧になって一目瞭然のように非常に不安定な地層で、さらなる崩落が心配なところです。
 この写真をみただけでも、早急な対策工事が必要なことは理解できます。
 
 ところが、塩原豊県林務部長の回答は、つぎのようなものなのです。
    「『1号崩壊地』付近において作業道が通行不能になった
     ため、新たな作業道を開設するべく、7月22日に入札公
     告を行ったところです。(中略)崩壊地直下の土塊の排
     土工(流路の移動等)については、この作業道の完成後
     となります。できる限り早期の排土工の実施を目指しま
     すが、本格的な排土工事は来年度となる見込みです。」
    「『1号崩壊地』付近からの土砂流出による下流への被害
     の可能性でございますが、今後発生の可能性のある流出
     土砂の一部は、減勢工下流において現在施工中の谷止工、
     及び除石を進めている砂防堰堤により捕捉できるものと
     考えております。」
 この回答、地元の誰が納得できるでしょうか。「緊急に対応しなければならない」という危機感がまったくありません。南木曽町の犠牲はそういう対応から生まれたのです。つまり、「砂防施設があるから大丈夫」と行政が信じ込ませていたのです。
 2011年の地震・土石流の後、「対策工事が出来たので大丈夫」として土石流警戒センサーも取り外していたところに発生したのが昨年9月の災害ではないですか。
 この林務部長の楽観論と、建設部長の「死者が出なければ被害は軽微」と言わんばかりの姿勢とが結びつくと、死者が出ないかぎり緊急全力対応はしないという県担当部署の基本姿勢が浮かび上がってきます。
 
 いま、県知事選の真っただ中。県知事に書類が回されるのは知事選後になるかもしれません。でも、台風はそんな政治日程にあわせてはくれません。
 私は「県民ホットライン」に再要望を出すつもりです。
 とにかく一刻も早い対策措置が望まれます。


長野県「県民ホットライン」への意見

氏名    松尾 真(まつお まこと)

件名   栄村・中条川の土石流対策の抜本的見直しとスピードアップ、及び、中条川の現状と土石流対策についての住民と専門家、県TOPによる懇談会(検討会)の早急な開催を求める

<内容>
1. 中条川の土石流災害は深刻な危機的状況にある。
イ. 本年4月24日の住民説明会で示された対策方針
 本年4月24日開催の県北信地方事務所林務課主催の住民説明会において、2011年3月12日発生の中条川上流の山斜面の崩壊によって生じた「1号崩壊地」において、「崩壊推定線◆廖蔽躓:上記説明会で示された資料で使用されている用語)の範囲において約40万?の土砂量が流出する可能性が示された。
 対策として、現在、崩壊地の足元を流れている流路を変えるための流路工、及び、「崩壊推定線 徂婉瓩梁論囘擇慮配を緩やかにする排土工を行なう方針が示された。ただし、1号崩壊地内に造られた工事用作業道が使えるかどうか、不明であることから、消雪後に変更がありうることも表明された。

ロ. 対策工事の現状
 消雪後、工事用作業道の使用が基本的に不可能であることが判明した。そのため、消雪後すでに約3ヶ月が経過しているが、対策工事はいっさい実施できていないのが現状である。7月になって、1号崩壊地内の3地点でボーリング調査が開始されていることが確認できるのみである。

ハ. 1号崩壊地の現状
 1号崩壊地では、消雪後、作業道上に見られたクラックの線上において堆積土砂斜面の新たな崩壊が現認され(写真 法△気蕕7月6日時点では、その崩壊の拡大及びそのすぐ近くでモルタル吹付工実施箇所での新たな崩壊の発生が現認されている(写真◆法
 1号崩壊地から中条川下流を望むと、宿泊施設「トマトの国」及び森集落中条地区は崩壊地のすぐ直下に見える(写真)。
 しかし、1号崩壊地の直下に設けられた減勢工(セルダム)は、昨年9月15日の2回目の土石流による堆砂で満杯近い状態のままであり(7月11日になって排土工の開始がようやく現認された)、4月24日説明会で示されたシミュレーションでの約40万?の崩壊土砂量が発生した場合、昨年9月時以上の被害が生起することは火を見るよりもあきらかだと考えられる。


写真 2014年5月11日撮影)


写真◆2014年7月6日撮影)


写真(2014年7月6日撮影)

ニ. 夜もおちおち眠れないような現状である
 7月9日、県内南木曽町で土石流災害が発生し、死者1名など多大な被害を及ぼした。中条川流域に暮らす者にとって他人事ではない。
 7月13日夜遅くになって雨が屋根をたたく音が室内に聞こえるほどの強雨が降った。とても安心して眠れる状態ではない。

ホ. 国・県の最大級の力を投入して、早急な対策を
 南木曽町の土石流災害の報道の中で中条川の土石流発生の危険についての言及はなく、対策工事を担当している県北信地方事務所林務課から住民への新たな説明等もない。
 まだボーリング調査を開始したばかりという現状では、梅雨末期の豪雨や夏〜秋の台風への備えは不可能である。
 緊急対策が必要であり、県の最大級の力を投入するとともに、国の力も投入するように要請すべきであると考える。
 
2. 地元住民は砂防ダムへの不信を強め、別の対策工事を強く求めている

イ. 昨年9月の土石流は死者発生寸前の被害をもたらした
 昨年9月の2回目の土石流では栄村森林組合事務所が砂防用コンクリートブロック(波消しブロック状のもの)等の直撃を受け全壊、また、白山神社下の村道並びに田畑への土砂流入の被害が発生した。
 この際、森林組合事務所を土石流が襲ったのは職員1名が見回りに来た直後のことであった。分の単位でその職員が土石流に巻き込まれるところであった。また、砂防工事関係者が重機等の見回りに来て、土石流に呑みこまれかけ、命からがら逃げ、危うく難を逃れた。
 
ロ. 地元住民は、昨年9月の土石流被害について人災であると考えている
 地元住民は、土石流の森林組合事務所直撃について、森林組合事務所すぐ上のコンクリート堰堤と、その下に配置されていたコンクリートブロックの存在が土石流を森林組合方向に押しやったゆえの事態であると受け止めている。
 また、白山神社下の村道並びに田畑への土石流の流入については、県北信建設事務所が白山神社横に設置した砂防えん堤が土石流の流下を妨げたがゆえの事態であると考えている。

ハ. 地元住民は砂防えん堤の撤去、土石流の川横手への流出拡大を防ぐ側堤の設置を求めている
 北信建設事務所は現在、上記砂防えん堤の修復工事を実施しているが、地元住民は砂防えん堤の撤去を求めている。
 また、白山神社下の村道並びに田畑への土石流流入箇所について、現在の村道付近に一定の高さをもった側堤を築造することを求めている。
 この点について、上記4月24日の住民説明会等で住民は県職員に直接求めたが、職員は県が立案した対策工事案を説明するのみで、地元住民の意見と要望に対応できていない。
 この側堤の要望について、もう少し説明を加えておきたい。
 南木曽町の土石流が実際に示しているとおり、土石流はまっすぐ一直線に流下するものであり、川筋通りには流れない。中条川の場合、白山神社の付近は川筋が右岸側へ緩くカーブする地点であるため、一直線に進む性質をもつ土石流は白山神社下で左岸側の村道、田畑へ流れ出ると考えられる。また、このカーブの途中に設けられた砂防えん堤は白山神社の手前に崩壊土砂を溜める役割を果たすことになり、土石流の村道、田畑への流失規模を拡大することになる。
 そこで、白山神社下へ一直線に落ちてくる土石流を受け止め、下流へ流し返す役割を果たす側堤を、川から一定距離離れたところに設けることが有効ではないかと言うのが、地元住民の考えである。

3. 住民、専門家、県TOPによる懇談会(検討会)の開催を求める
イ. 充分な調査・説明が行われていない
 南木曽町の土石流災害をうけて、政府、国交省等の調査団が現地に入り、調査等を実施している。他方、中条川の1回目の土石流発生は東日本大震災の渦中でのことであり、政府、国交省が充分な調査等を行ったとは言い難い。
 ましてや、昨年9月の2回目の土石流発生をめぐっては、県レベルでも研究者等の現地調査等はほとんど行われていないと言わざるをえない。
 住民への説明は、2011年6月には調査会社専門職員による一定の状況説明はあったものの、昨年9月の2回目の土石流発生以後は、北信地方事務所職員による説明、また工事概要説明のみで、とても地元住民が不安を払拭できるようなレベルのものではないと言わざるをえない。
 また、上記の説明会はいずれも時間が限られたものであり、住民が難しい専門用語などを理解してうえで、説明内容を充分に咀嚼したうえで、納得がいくまで説明を求めることができるという類のものではなかった。
 
ロ. 充分な知見があり、かつ素人である住民に理解できる説明を行なえる専門家による調査と説明が必要
 私は、自らが被災者となるまでは土石流問題を考えることもなかったズブの素人である。土石流災害の危険に直面し、現場を何回も見るなどして、専門用語等もほんの少しだけ解することができるようになりつつあるところである。
 危険に直面している住民には、充分に理解でき、納得できる説明を求める権利がある。
 そうした説明ができるのは、土砂災害や河川工学について高度な知見が充分にあり、かつ、素人にも理解できる言葉で話せる人である。それは高度な専門家である。
 そうした専門家による調査と住民への説明、充分な時間をとった住民との懇談の場を県として保証するよう求めたい。

ハ. 県TOPと住民の直接対話を求める

 土石流対策は膨大な費用と労力を要するものであり、地方事務所レベルで住民との対話に対応しきれるものではないと考える。やはり、政治的判断・決断が可能な県TOPが住民との直接対話に踏み込むことを求めたい。

 書き足りないこともありますが、ひとまず要望の内容は以上です。真摯なご検討と納得いくご回答を得られるよう、切に要望する次第です。
 

長野県林務部長、建設部長からの回答

松尾 真 様

 長野県林務部長の塩原豊、建設部長の奥村康博と申します。
 「県民ホットライン」にお寄せいただいた、栄村中条川の復旧工事に関するご意見についてお答えします。

 7月9日に発生した南木曽町の土石流災害は、実際に土石流災害が発生した中条川の下流域に住まわれている松尾様はじめ、地域住民の皆様にとっては、まさに他人事とはいえない出来事であり、地域の安全について一層関心が高くなられていることかと思います。
 中条川の復旧については、平成23年3月の長野県北部地震により大規模な山腹崩壊が発生し、下流の集落や国道、JRなどへ土砂が流出するおそれがあったため、長野県の治山、砂防機関や中部森林管理局等による災害対策検討委員会で検討を行い、対策工事を実施してまいりました。昨年9月の台風18号による土石流災害以降も関係機関で調整のうえ、上流は北信地方事務所による治山事業、下流は北信建設事務所による砂防事業と、分担して鋭意対策工事を実施しているところです。今回のご要望・ご意見に対しては、それぞれの事業を所管する、林務部、建設部より、項目ごとに回答させていただきます。

 最初の、中条川の土石流災害の対策について、林務部よりお答えいたします。
 まずは、現在の工事の実施状況についてですが、ご指摘のとおり「1号崩壊地」付近において作業道が通行不能になったため、新たな作業道を開設するべく、7月22日に入札公告を行ったところです。他に重機等が進入できる経路が確保できないため、崩壊地直下の土塊の排土工(流路の移動等)については、この作業道の完成後となります。できる限り早期の排土工の実施を目指しますが、本格的な排土工事は来年度となる見込みです。
 なお、減勢工(セルダム)下流においては、谷止工(長さ70m、高さ13m)を現在施工中で、本年降雪期までに完了する予定です。谷止工につきましては、土砂を貯めるだけでなく、整備する谷止工の上流側の沢の侵食を防ぐ役割もあります。したがいまして、今後整備される予定の、崩壊地より下流の谷止工については、崩壊地直下の土塊の安定にも役立つことになります。
 次に、「1号崩壊地」付近からの土砂流出による下流への被害の可能性でございますが、今後発生の可能性のある流出土砂の一部は、減勢工下流において現在施工中の谷止工、及び除石を進めている砂防堰堤により捕捉することができるものと考えております。
 また、減勢工上流側の排土につきましては、現在、下流谷止工施工時の安全の確保を兼ねて一部実施しておりますが、本格的な排土は、減勢工上流に通じる作業道を開設した後に実施する予定です。これは、減勢工の機能をより発揮させ、安全度を高めるためには、多くの重機を用いた現場外への土砂の搬出が必要なためです。作業道の開設は、7月17日に入札公告を行ったところです。できる限り早期の排土工の実施を目指しますが、本格的な排土工事は来年度となる見込みです。
 なお、昨年9月の台風18号時の土石流発生後に県で土砂流出シミュレーションを実施しましたが、その結果では、約40万立方メートル(現在明瞭なクラックが存在する箇所より広い範囲での、地形の変化点等から推定した不安定土砂量)が流出した場合、砂防、治山施設が満砂状態でも、「トマトの国」脇他2箇所に大型土のうによる土砂流出防止施設を既に設置しておりますので、下流集落に被害を与えず土砂は河川内を流下するものと推測しております。
 次に、県の最大級の力、国の力を投入するべき、とのご指摘でございますが、当現場におきましては、積雪期が長く施工期間が限定されること、進入経路等が限られ並行作業が困難であること、そして常に土石流の危険がある中で作業する必要があることなどから、どうしても工事の進度には限りがあります。しかしながら、必要かつ施工可能な工事については、最大限、国にも認めていただき、そのために必要な事業費を確保しているところです。

 2つ目の、砂防工事に関するご意見について、建設部よりお答えします。
 昨年9月の台風18号による大雨により発生した土石流につきましては、上部の治山施設で捕捉したほか、白山神社横の中条砂防堰堤と森林組合事務所上の床固工で約5万立法メートル(小学校のプールの約140個分)の土砂を捕捉しており、下流の集落やインフラ施設等への被害軽減に効果を発揮したものと考えております。
 こうしたことから、再度災害を防ぐため、砂防堰堤の修繕や除石に着手しており、本年降雪期までに終了する予定です。加えて、土石流の流れの向きを砂防堰堤側へ向けるための導流堤(側堤)の設置がより有効であることから、来年度には工事に着手できるよう、現在設計を進めているところでございます。
 導流堤(側堤)の建設にあたりましては、地元住民の皆さまに説明を行い、皆さまのご意見をお聞きしながら進めてまいりたいと考えております。

 3つ目の、 住民、専門家、県TOPによる懇談会(検討会)の開催について、林務部よりお答えします。
 まずは、専門家による充分な調査がされてない、とのご指摘でございますが、県北部地震災害後に設置した「栄村中条川上流災害対策検討委員会」で委員を務めた学識経験者3名(信州大学名誉教授 北澤秋司氏、(独)森林総合研究所山地災害研究室長 大丸裕武氏、技術士 櫻井正明氏)が、台風18号災後の9月20日、23日に現地調査を行い、対策工法等についてアドバイスをしており、今後も必要に応じて現地調査やアドバイスをお願いしていきたいと思っております。なお、この3名の方々については、治山関連の各分野の第一人者であり、全国的に土砂災害発生箇所における現地調査、指導の実績があります。
 次に、住民の皆様への説明についてでございます。これまでにも、数回、住民の皆様を対象とした説明会、現地説明会を行ってまいりましたが、ご指摘のとおり、それらの説明会で、本当に住民の皆様が理解していただけたか、意見交換が充分できたか、ということについては、改善すべき点があると思っております。
 したがいまして、今後の事業計画等につきましては、住民の皆様のご要望に応じた、よりわかりやすい、こまめな説明に心がけてまいります。
 また、4月24日に開催された栄村村民の皆様と知事との対話の中でも直接ご意見、ご要望をいただいておりますが、今後は、地域からの要望を汲み取れるような、関係者による協議会を8月中に開催するよう準備します。

 今回のご要望、ご意見は、県による復旧事業を実施している地域住民の貴重なご意見として頂戴し、今後の効果的な事業執行に活かしてまいりたいと思っております。県といたしましても、地域住民の皆様が一日も早く安心して生活が送れるよう、全力で復旧に努めてまいりますので、ご理解、ご協力をお願いいたします。

 以上、ご意見への回答とさせていただきますが、ご不明な点がございましたら、林務部回答分については、林務部森林づくり推進課長 前島啓伸、担当者:治山係 小澤岳弘もしくは、北信地方事務所林務課長 佐藤公男、担当者:治山林道係 菊池一浩まで、建設部回答分については、建設部砂防課長 田中秀基、担当者:砂防係 丸山泰正もしくは、北信建設事務所整備課長青木謙道、担当者:整備第三係 折井克壽までご連絡くださいますようお願い申し上げます。

 平成26年(2014年)7月23日
                         長野県林務部長 塩原 豊
                            建設部長 奥村 康博

*回答文の最後に出てくる担当部署・担当者の連絡先(電話、アドレス)は松尾の判断で割愛しました。


栄村復興への歩みNo.226

これが千曲川の流れの中に突き出る鉄板――撤去の展望が出てきました



 上の写真で赤マークをつけたモノ、じつは千曲川の中に突き出ている工事用鉄板です。昨年9月の中条川土石流で流し出されたもの。
 ラフティングでよく知られる戸狩の庚敏久さんに場所を教えていただき、16日朝に栄大橋上から撮影したものです。場所は中条川が千曲川に注ぎ込んでいるところからすぐのところです。
 「なんとかしなければ。ただ行政に頼るだけではダメ。自分たちで撤去する気概で臨もう。どんな技術的方法があるか、専門家に尋ねてみよう」と考え、サンタキザワの福原初さん(横倉)に20日、相談をもちかけました。すると、まったく予想外のお答えが返ってきました。
    「撤去できるよ。○○の社長が在(あ)り処(か)さえわかれば
     自社で撤去すると言っている。早速話すよ。これから中条
     川の復旧工事で仮設道路をつくるので撤去に使う重機を持
     って行くことができる。」(○○はある建設会社です)
 いやあ、よかった。やはり必死で考えてみるものですね。早急な撤去をめざして関係者・関係機関と協働して頑張りたいと思います。
 千曲川及びその河原には、この他にも重機やコンクリートの塊り(鉄筋が突き出ている)などが多数あります。それらについても調査を進め、撤去を実現したいと思います。


鉄板が鋭角的に突き出ている


ショベルカーの残骸(飯山線鉄橋下)


壊れた護岸壁の残骸か(塩尻集落対岸)


土石流の力でS字状に曲った鉄板