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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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栄村復興への歩みNo.368

 

 10月23日正午頃、野々海池での撮影です。
 天候不順で紅葉がなかなか例年通りには進まないうえに、今年の10月は台風19号をはじめとして雨の日が多く、紅葉がピークを迎えても“青空の下で輝く紅葉”を撮影できるチャンスがほとんどありません。「午前9時から晴れ」の予報が出ていた23日も午前10時頃に野々海に上がると、小雨がぱらつき、池は霧にすっぽり包まれ、何も見えない状況でした。しかし、執念をもって2時間強頑張ったところ、ようやく青空が出始め、上のような写真を撮ることができました。
 栄村の観光を盛んにするには、今秋のことを考えているだけではダメで、1年先の紅葉シーズンのことを考え、広報用に「いい紅葉の姿」の写真を確保しておくことが必要です。この日、撮影できたもので私自身が気に入っている2枚はすでにトマトの国に提供しました。もちろん、「村全体で活用していただければ」と思っています。
 秋山郷も10月20日からいっきに紅葉が進みました。だが、残念なことにすっきり晴れた時に撮影する機会に私は恵まれませんでした。シーズン中、ギリギリまでシャッターチャンスを狙いたいと思っていますが。

 


写真イ

 

台風19号被害を考える
 台風19号大規模災害に続き、25、26日には千葉、茨城、福島、宮城等で大規模な水害、土砂災害が起こっています。暗澹たる気持ちになってしまう災害の連続です。気候変動(地球温暖化)問題があり、今後(来年以降)も台風19号クラスの台風等が頻発しかねないと言われている中で、私たちは災害にどう備えていくのか、災害に強い地域づくりをどう進めていくのか、真剣に考えなければなりません。
 今回の台風19号災害で私が千曲川の問題とともに注目しているのは天代川、北野川での被害の凄まじさです。
 天代川の大増水による被害の状況は2回の号外で報告しましたが、北野川の被害状況は北野天満のつり橋(4頁写真ニ参照)以外は自分の目では見ていません。しかし、役場の調査結果を聞くと、極野集落の奥に広がる北野川の流域で橋の流出など多大な被害が発生しているようです。
 なぜ、天代川、北野川で多大な被害が発生しているのか。そこで注目しなければならないと思うのが山(森林)と川の環境をめぐる問題です。

 

写真ロ

 

● 天代川、北野川はどこから流れてくるのか
 2頁に2枚の写真を掲載しました。写真イは三ツ山〜太次郎山〜毛無山(左から順に)を撮影したものです。また、写真ロは、野口〜天代線を天代方向に下る時に坪野集落方向を撮影したものです。
 写真ロで奥に見える山は太次郎山と毛無山で、写真イで赤色のマークを入れた辺りです。この赤色マークの辺りが天代川が始まるところです。他方、写真イで黄色のマークを入れたところは北野川の源流域及び北野川に流れ込む支流・沢があるゾーンです。
 私たちが日常に目にする天代川や北野川は、坪野・天代集落や極野・北野集落などで見る下流部分です。下流だけを見ていると、大雨が降った場合に、どれくらい広範囲の雨水が天代川、北野川に流れ込んでくるのか、想像できません。
 台風19号では、この天代川・北野川の源流域及び支流・沢域で、里とは異なる大量の雨が降ったのではないかと思われます。

 

● 山が荒れると川が暴れる
 私は一昨年まで毎年数回、坪野集落の奥の林道を軽トラで上がって、震災以前は橋があった地点の近くまで行っていました。しかし、昨年以降は行っていません。一昨年、かなり怖い思いをしたためです。
 というのは、雨が降っていない日であったにもかかわらず、天代川に設置された2つの砂防ダムをこえた地点あたりから、林道に山からの水が流れ込み、「道」とは言えないような状況になっていたからです。なんとか軽トラを切り返して戻って来ましたが、「車で行くことはもうできないなあ」と思いました。
 今回、10月15日、坪野集落に配達に行った際、車の切り返しに入る場所が台風19号の被害で入れなくなっているので橋を渡り、4頁掲載の写真ハの地点まで入りましたが、道にかなりの土砂が流れ下ってきていて、四駆でも切り返しが厄介な状況でした。一昨年にもっと上流で経験したことのミニ版のような感じです。

 

写真ハ


 山は人が入らなくなると荒れます。そして山の保水能力が落ちます。保水能力が落ちると、山に降った雨が森林に溜め込まれることなく、いっきに山下(やましも)の里に下ってきます。
 今回の台風19号災害をめぐって、「自分が暮らしている地域で雨が止んだからといって安心してはいけない。上流で降った水が時間差で下流域の水位を上げ、洪水氾濫を引き起こす危険に備えることが必要」ということがメディア等で繰り返し叫ばれています。それはその通りです。
 しかし、議論はもう一歩深められる必要があると思います。上流域で降った雨がいっきに下流に押し寄せてくるという事態の背景には山の荒廃という問題があるのではないかということです。
 台風19号災害関連で関田山脈関係の土砂崩落の撤去作業に携わった人から、「崩落は見られないところで山の表面を水がザーッと流れ降りてくる光景を目撃して驚いた」という話を聞きました。これは山の保水力の低下を示しているのではないでしょうか。

 

写真ニ


● 「坪野集落は村の稼ぎ頭だった」という話
 私は13年前、栄村で暮らすようになって間もない頃、「昔は、坪野と暮坪が村の稼ぎ頭の集落だった。坪野は林業で、暮坪は農業だった」という話を村の人から聞かせてもらったことがあります。坪野集落の人からは、「戦時中から戦後にかけて坪野は林業が盛んだった。東北地方から何百人という人が出稼ぎで来ていた」とも聞きました。3頁で言及した林道には戦時中、伐り出した材を運搬する馬トロッコが走っていたそうです。
 その林業はその後衰退し、坪野集落は現在、現住世帯は2世帯で存亡の危機にたたされています。戦時中・戦後の林業はけっして持続可能型のものではなかったので、それをただ懐かしむだけでは意味がないとは思いますが、だからといって、坪野集落の奥、天代川流域の山が放置されても仕方がないとはけっして言えません。

 

● 山と森林の保全管理に資金と人を入れることが根源的な災害対策の一つ
 国レベルでは、営林署の廃止(後継は森林管理署)に代表されるように、山の保全・管理に投じられる人や資金が大幅に削減されています。現在の森林危機の直接の原因だと思います。
 台風のスーパー台風化の要因として地球温暖化が指摘されていますが、そのことを含めて、経済成長を追求し続ける中で、人間が地球上で暮らすことを可能にしている自然的環境を破壊してしまい、人類は自縄自縛の状態になっているのではないでしょうか。
 東日本大震災、福島第一原発事故をうけて、「文明の見直し」という議論が一時、メディアでも盛り上がるという時期がありましたが、間もなく、そういう議論が忘れ去られる中で、ここ数年の大規模災害が相次いでいます。
 強力な堤防の築堤等にも資金を投じなければなりませんが、同時に、山・森林の保全管理に資金と人を投じなければならないと思います。それは容易には経済的利益にはつながらないでしょうが、それでも資金と人の投入が必要だと思います。
 別の視点からいえば、坪野集落の存続問題はじつは非常に重大な根源的な問題(課題)だということです。昨今、国の政策として、コンパクトシティー化、街の機能の効率的集約化が追求されていて、「住人の少ない地域のインフラにはカネをもはや投じない」という議論が平然とまかり通っています。過疎地域の切り捨てです。しかし、その過疎地域の切り捨てこそが日本列島の災害激甚化を促進しているのだと思います。メディアではほとんど報道されていませんが、千曲川上流域の北相木村、南相木村でも天代川・北野川と同様の大きな被害が出ています。
 私たちは、過疎の山村に暮らす者として、都市の暮らしからは気づきにくい問題を全国にむかって提起していく責任があるのだと思います。

 

 以上で提起した議論は、じつは、間もなく(1年半弱後)迎える震災10周年に際して、私たち栄村が全国から寄せられたご支援に感謝して、どういうメッセージを発するのかという問題につながっていると思います。みなさんのご検討とご意見をお願いします。


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