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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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七ケ巻護岸の崩壊と国交省による権限代行

 台風19号災害関連で、10月21日の信濃毎日新聞2面左下に「河川復旧 国が代行 台風被害 県管理5ヵ所」という見出しの記事が掲載された。続いて、同じく信毎に24日には「『中抜け』ごく少数 国管理河川 中間を都道府県が管理 千曲川など 県、解消改めて要請」という見出しの記事が掲載された。

 

● 「千曲川の一部区間の県管理」問題
 関係者の間では周知のことではあるが、まず、「国管理河川 中間を都道府県が管理」という問題について説明をしておきたい。
 千曲川は新潟県に入ると信濃川と呼ばれるが、河川法上では「信濃川水系」として一級河川に指定されている。
 一級河川とは、「国土保全上又は国民経済上特に重要な水系で政令で指定したものに係る河川(公共の水流及び水面をいう。)で国土交通大臣が指定したものをいう」と規定されている(河川法第4条1項)。
 一級河川は河川法第9条で「一級河川の管理は、国土交通大臣が行なう」と規定されている。ただし、その第9条の2項に「国土交通大臣が指定する区間(以下「指定区間」という。)内の一級河川に係る国土交通大臣の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、当該一級河川の部分の存する都道府県を統轄する都道府県知事が行うこととすることができる」との規定があり、千曲川の場合、南佐久郡川上村の源流部から上田市の大屋橋までの104劼犯啝鎧圓療鯊豢兇ら新潟県境間の22劼この「指定区間」とされている。
 国交省の「河川法第4条第1項の一級河川の指定について」という文書では、「重要度に応じた河川の管理区分」というページ(p4)で「指定区間外(直轄管理区間)=一級河川の中でも重要度の高い区間」、「指定区間(一部の管理事務を都道府県知事又は政令指定都市の長が行う)」と説明されている。まるで、「指定管理区間」は「重要度の高い区間」ではないかのような説明のしかたであると感じとれる。
 また、「一級河川指定による効果」というページ(p10)では、「一級河川に係る国の費用負担の原則」が説明されている。それによれば、

 

  直轄区間
    河川改修等
     国庫負担率…2/3(一般工事)、7/10(大規模工事)
    河川維持管理等
     国庫負担率…10/10
  指定区間(知事一部管理)
    河川改修等
     国庫負担率…1/2(河川改修工事)
           一定の大規模工事については、緊急性に応じ、
           2/3又は5.5/10等

 

とされている。
 あきらかに「指定管理区間」は国庫負担率が低く、河川改修等に困難が生じるのである。
 私たちは、栄村を流れる区間の千曲川が「指定管理区間」であること、すなわち国交大臣直轄区間ではないことから、必要な河川改修がその重要性・緊急性にも関わらず遅々として進まない現実を嫌と言うほど見せられ続けている。

 

● 信毎10月24日報道に見られる不可思議な国交省の説明
 信毎が、この「指定管理」=「中抜け」が千曲川の治水事業に支障をもたらし、今回の台風19号災害にも関係しているという問題意識で10月24日付の記事を掲載していることはあきらかである。
 信毎の取材に対して国交省は以下のような説明をしたという。
    国交省によると、新潟・福島両県内の阿賀野川、宮崎・鹿児島

    両県内の大淀川なども中抜け区間がある。ただ具体的な河川数は

    把握していないという。
    同省は河川管理について「人口や資産が集中している箇所から国

    直轄に指定してきた」と説明。災害を防ぐためには下流域から整

    備を進める必要もあり、仮に千曲川全体を国管理にしても「予算

    の優先順位もあり、すぐに整備が進むわけではない」とする。

 

 国交省のこの説明はあきらかに現行河川法の規定に合致していない。現行河川法は、明治29年公布の旧河川法(河川管理を行政区域を単位として都道府県知事が行う区間主義によっていた)に対して、「社会経済の発展に伴い、治水、利水とも広域的な観点で総合的・統一的に管理する必要性が高まった」として、水系一貫主義の管理制度に改めたものである。したがって、「国土保全上又は国民生活上特に重要な水系として政令指定された水系(一級水系)に係る河川で国交大臣が指定する一級河川」は河川法第4条1項に規定されているとおり、国管理=国交大臣直轄が本来のあり方なのであって、「人口や資産が集中している箇所から国直轄に指定してきた」と言うのは千曲川の場合でいえば、信濃水系全体のことを指すのであって、「指定管理」区間の方が例外なのである。そして、「指定管理」区間の方は河川法第9条第3項の規定により、国交大臣が指定するには関係知事の意見を聞くこととされ、さらに第4項で「政令で定める」と規定されている。したがって、「指定管理」区間(=中抜け区間)について、国交省が「具体的な河川数を把握していない」ということはありえないのである。

 

● 七ケ巻地先の護岸崩壊とその復旧工事
 国交省北陸地方整備局の10月20日付報道発表によれば、権限代行による災害復旧工事は次の図面のとおりである。

 


 七ケ巻地先の箇所を示す写真を取り出してみる。

 


 私は、10月21日の信毎記事を見た時、正直なところ、「七ケ巻近辺にそんな大きな災害地点があったかなあ?」と思った。そこで、この国交省北陸地方整備局発表にデータを参考に、10月24日夕、同箇所の千曲川左岸桑名川の堤防の上から観察し、写真撮影した。場所を特定する手がかりは上の写真に写っている七ケ巻集落の民家の屋根の色・形であった。さらに近くの市川橋上から川の流れがわかる写真も撮影した。その時の写真を3枚示す。

 


写真イ

 

写真ロ

 


写真ハ

 

 写真イは護岸が最も激しく抉られている箇所を対岸からクローズアップして撮影したもので、写真ロは市川橋上からの撮影。写真ハは護岸崩壊箇所を国道117号線から撮影したものである。
 たしかに護岸がかなり崩れているが、栄村内ではある意味でこの箇所よりももっとひどい被災箇所を見ているので(下に示す写真「森集落の谷地区の護岸崩壊」参照)、「なぜ、ここが権限代行での復旧になったのか?」とも思った。現場を観察して最初に思ったのは、「この箇所の崩壊がもう少し進めば、上を走る国道117号線が危なくなるからか」ということだった。その後、関係者に聞いたところでは、台風19号の前にこの箇所の護岸工事が準備されていたそうである(その場合、県による工事であろう)。たしかに「北信地域千曲川等改修促進期成同盟会」の令和元年度総会に提出された「千曲川等改修整備要望箇所図」に「55 野沢温泉村 七ケ巻 護岸工 250m」と記載されている。

 


森集落・谷地区の護岸崩壊

 

 11月2日午後、改めて現場を見たうえで、七ケ巻集落を訪れ、住民に話をお聞きした。
 現場は市川橋を過ぎた千曲川が緩やかにだが左にむかって流れを変えるところである。川の流れの本流よりもかなり右岸側が大きく膨らんでいる。大水が流れる際に市川橋方向から直進する水流が、長年にわたって、護岸を削ってきたのではないかと考えた。写真ニとホをご覧いただきたい。

 


写真ニ

 


写真ホ


 また、川のすぐそばの田んぼの畔にはいくつものクラックが入っている(写真へ)。

 

写真へ

 

 地元の人にお聞きしたところ、「建設事務所に何回も尋ねているが、きちんとした説明が聞けない」とのことだった。
 また、写真ニの箇所について、「年寄りの話ではあの場所に遊べるくらいの広さの土地があったそうだ」とのことであった。

 

● 千曲川全域の直轄管理化と住民との対話、被災・危険個所の復旧・改修工事のスピードアップを
 台風19号で大きな被害が発生した長野市穂保地区の千曲川は大臣直轄管理区間である。そのことからも、大臣直轄管理になれば自動的に問題が解決するというわけではないが、「指定管理」=「中抜け」の問題性はここまでに指摘してきたとおりである。直轄区間化の早期実現を目指したい。と同時に、河川行政担当者の地域住民との対話への取組の改善、そして被災・危険個所の早急な復旧・改修を望みたい。
 今回は言及できなかった箕作・月岡地区での台風19号時の状況と教訓等については改めて報告したい。


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