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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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栄村復興への歩みNo.361

コシジシモツケソウ
1日昼、スキー場内道路沿いにて撮影。

 

今年も見事!天代のお花畑(6月25日撮影)

 

来年4月、中山間地直接支払はどんな制度になるのか?
 栄村の農業、とくに稲作にとって欠かすことができないものになった中山間地域等直接支払制度、第4期は本年度で終了です。国で、県で、来年4月からの第5期にむけて準備が進んでいます。栄村でも来年度以降の見通しが早く立てられるよう、現在の状況を紹介します。

 

◇国や県で進められている作業の現況

● 来月(8月)中に第4期の最終評価がまとめられる
 以前に説明したとおり、「中山間直接支払」は平成27年度から法制化されています。したがって、来年4月からの第5期のスタートは既定事項です。
 第5期の制度設計のために、第4期であきらかになった成果や課題を明らかにすべく、現在、第4期の最終評価のとりまとめ作業が進められています。第4期は来年3月31日までですので、第4期の最終評価は来年以降に行われると思っている方もおられるかと思いますが、そうではありません。今、行われているのです。
 全国の市町村は今年3月31日までに市町村としての最終評価を各県に提出しました。栄村もすでに提出済です。さらに、各県は5月末までに県としての最終評価をまとめ、国(農水省)に提出済です。
 長野県の場合、県農政部が「最終評価(案)」をとりまとめ、5月10日、「中山間地域農業直接支払い事業検討委員会」という法定の第三者委員会の第28回会合で検討されました。この会合の議事録はまだ公表されていませんが、「最終評価(案)」は県のHPで公表されています。
 国レベルでは8月末までに国としての最終評価を取りまとめる作業の真っ最中です。

 

● 栄村のすぐ近くに「中山間直接支払」のモデル的取組地域があります!
 国・農水省では、6月10日、「中山間地域等直接支払制度に関する第三者委員会」の第8回会合が開かれました。「第三者委員会」は農業や中山間地域に詳しい研究者等が委員となっている法定の第三者機関です。
 公開されている議事次第と資料によれば、「中山間直接支払」制度に取り組んでいる集落協定代表・市町村担当者、さらに都道府県担当者からの意見聴取が行われました。意見を聴かれたのは、新潟県・上越市・櫛池(くしいけ)農業振興会、高知県・本山町・吉延集落協定。上越市の櫛池地区とは、関田山脈を挟んで栄村に隣接する上越市清里区の中山間地域です。栄村のすぐ近くに「中山間地直接支払」のモデル的な取組地域があるのです! 驚きました。近いうちに丸一日かけてお話を聴きに行こうと思っています。

  *「くしいけ」の「くし」の字は木へんに「節」と書きますが、PCの

   フォントの関係で上記のように表記されていまします。

 

櫛池11集落の1つ、青柳集落の田んぼ


◇「耕作放棄の防止に役立った」という評価について
 長野県内、全国いずれにおいても、「中山間直接支払」が「耕作放棄の防止に役立った」という評価が圧倒的に多くなっています。長野県の場合、「耕作放棄地の発生が防止された」と評価しているのが65市町村にのぼっています。県内全市町村のじつに91.5%にあたります。
 「耕作放棄の防止に効果があった」要因の1つとして、第3期から導入された「体制整備のための前向きな活動」(略して「体制整備」)のC要件=「集団的かつ持続可能な体制整備」があります。
 県の「最終評価」では、「C要件は、農業生産活動が困難となった農用地が発生した際に、当該農用地を引き受けるサポート体制が事前に確立されていることにより、農業生産活動の維持が可能となり、耕作放棄地発生防止に
一定の効果があったと言える」としています。しかし、同時に「課題」として、「高齢化等により農業生産活動が困難となる農用地が発生し続けているが、『集落ぐるみ』型を選択している集落においては、集落内で余力のある特定の個人への作業負担が増大している」という問題を指摘しています。
 そのため、県の「最終評価」の総合評価で、「農地の将来的な維持管理の見通しが共有できた」のは23市町村(県内全市町村の32.4%)にとどまっていて、「高齢化が著しく進んでいる集落においては、依然として5年間の協定農用地の維持に関する不安や事務負担を感じており、次期対策へ移行する協定の廃止や協定農用地の大幅な減少が危惧される」と記しています。

 

◇ H31年度の試行措置に見られる第5期の方向性
 このように第4期の最終評価の作業が進行中ですが、同時に、国は第5期の方向性をすでにある程度明らかにしています。H31年度予算における「地域営農体制緊急支援試行加算」というのが、それです。これは、H29年度に実施された「中間評価」で明らかになった中山間地域における喫緊の課題に対応しようとするもので、農水省担当者は「H31年度からモデル的な加算措置などを実施し、この成果を検証して次期(=第5期)対策を検討していく」と述べています(今年1月の「第三者委員会」での発言)。

 

●「中間評価等において提示された課題・方向性」
 5つのことが「課題」として示されています。

 

協定の取組体制の強化に向けた集落間連携(広域化)や、棚田など特に条件

 の厳しい農地の保全を更に推進する必要。
中山間地域では、高齢化の進行等による担い手不足、耕作放棄地増加に対応

 するため、担い手への農地集積を進めることが急務。
高齢化や協定参加者の減少、担い手不足を補い、将来にわたり協定農用地を

 維持管理していける体制づくりに向けた積極的な支援が必要。地域おこし協

 力隊や新規就農者をはじめとする外部人材の積極的な受入に向けた条件整備

 が必要。
担い手が地域農業の中心的役割を継続するためには、協定が農業生産活動の

 継続だけでなく、生活環境、定住条件整備など地域活性化の中核を担う体制

 整備を図ることが必要。
高齢化の進展により協定参加者の減少が危惧されることから、少人数でも営

 農や施設管理に取り組める、省力化に向けた活動を行うことが重要。
 

● すでに打ち出されている加算措置
 以上の「課題・方向性」にむけた施策として、すでに打ち出されている施策を次に示します。いずれも第4期の交付金への加算措置として試行されています。

 

 

《第4期ですでに措置されているもの》
イ) 集落連携・機能維持加算
ロ) 超急傾斜農地保全管理加算
  傾斜1/10以上の超急傾斜地が対象
ハ) 個人受給額の上限緩和
  上限250万円→500万円(H31年度拡充)

 

《H31年度導入の地域営農体制緊急支援試行予算》
ニ) 人材活用体制整備型
   協定活動に参加する新たな人材の確保・活用を進めるための取組や体制

   整備、それらを通じて担い手が営農に専念できる環境整備等を支援
   加算額:3千円(10a当たり) 200万円(1地区当たり上限)
ホ) 集落機能強化型
   主として営農を実施してきた集落が、地域の公的な役割を担う団体(地

   域運営組織等)を設立するなど、集落機能を強化する取組を支援
   加算額:3千円(10a当たり) 200万円(1地区当たり上限)
ヘ) スマート農業推進型
   省力化技術を導入した営農活動や農地、施設の管理等、少人数で効率的

   に営農を継続できる環境整備を支援
   加算額:6千円(10a当たり) 400万円(1地区当たり上限)

 

 *イとロは「課題・方向性」の,紡弍、以下、ハ−◆▲法櫚、ホ−ぁ

  へ−イ箸いβ弍関係にあります。

 


 これらの加算措置は、H30年度以前から導入されているもの、今年度から「緊急支援試行」として新たに加えられたもの、いずれも栄村ではほとんど知られていないと思います。
 イ)〜ハ)の加算措置を受けられる該当地区(者)は栄村にもあると思われますが、適用されていないようです。地域と行政(役場)の双方がちょっと踏み込むだけで可能になるはずです。
 他方、ニ)〜へ)の「緊急支援試行」は第5期のメイン施策になっていくと思われるものです。その核心は、集落協定が狭い意味での営農活動だけにとどまらず、地域づくりに踏み出すことにあります。「そんなこと、出来るだろうか?」と思われる人が多いかと思います。しかし、そうではありません。比較的大きな集落であれば、従来、区の活動としてやってきた活動と「中山間」の集落協定をどう結合していくかが大事だと思われ、ポイントになるのは第4期ですでに推奨されている「集落戦略」というものの作成に踏み出すことにあります。他方、小さな集落では、「中山間」の集落協定の広域連携への取り組みが重要になるでしょう。
 いずれの場合にも、《地域マネジメント》という考えを導入し、その中心を担う人材を獲得・確保していくことが重要になります。

 

◇ 勉強会などの第5期準備作業をすぐに始めましょう!
 栄村にとっては、これまで経験したことがない課題への挑戦になります。でも、それは栄村だけでなく、全国の多くの地域にとっても同様だと思います。この挑戦によって、「持続できる地域」とそうではない地域の分岐が進むのだと思われます。
挑戦にあたっては、農水省など役所の言うこと(制度)に窮屈に対応することばかり考えていてはダメだと思います。地域の側から積極的な意見を出して、制度の柔軟な運用や拡充を求めていく姿勢が必要です。

 

 このように、第5期への取り組みはすでに始まっています。第4期までの経験からすると来年春頃になると思われる役場の説明会を待つのではなく、地域(集落)横断的な勉強会などを積極的に行い、ただちに準備を始めることが大事だと思います。


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