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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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松尾まことの議員活動報告No.35

ふるさと納税−お米加算金をめぐる問題
〜6月定例会の質疑から〜

 

松尾:「これは一種の災害であり、財政出動してでも、今年度に限

   り、農家に昨年と同じ所得が保障されるように村が責任もっ

   て対処すべきだ」
村長:「今年度に限り、作付が終わったものについては保障。仮渡金
   の支払を農家が不安に陥らないように対応する。」

 

 

 6月17日から20日までの定例議会は、一般会計補正予算審議など多くの案件を扱いましたが、最大の関心は、直前に村のチラシで明らかになった「ふるさと納税問題」、すなわち「昨年度のような上乗せ金はできない」という問題でした。そのため、一般質問が平素以上に重要な意味をもつことになり、8名の議員中3名(保坂良徳、松尾、上倉敏夫)が一般質問で「ふるさと納税問題」を取り上げました。一般質問1日目(18日)に保坂議員の質問で村の対応方針の概要があきらかにされたことをうけて、私は2日目(19日)、村長に重要な決断を求めました。その核心部分が上に大文字で示したものです。
 今年度産米について、昨年度の「栄村概算金額16,200円(内共計概算金13,372円、ふるさと納税上乗せ2,828円)」(JA通知書より)を絶対に保障することを村に約束してもらうことが質問の狙いでした。森川村長の答弁はこの求めに真正面から答えてくれたものと評価します。金額の詰め等、具体化作業にもう少し時間を要しますが、基本方針は明確になったと思います。

 

 以下、本号では、「ふるさと納税の制度変更」と言われているものの具体的内容、今年度、稲作農家に昨年同様の支払を保障するための具体的方策などについて記していきます。


◎ そもそも「ふるさと納税」とは何か?
 「返礼品が高価すぎる」、「返礼品競争が過熱化」、あるいは「寄付する人はわずか2千円の負担で高価な商品を得られる」というようなことばかりがマスコミで伝えられていますが、そういう「報道」はふるさと納税制度の正しい理解と発展を妨げる、歪んだ「報道」だと言わねばなりません。正しくは、どういう制度なのでしょうか。

 

■ 納税者が納税先を自由に選べるシステム
 国民には納税義務があり、所得税、住民税を納めることが求められます。しかし、「同じ税金を納めるのならば、自分が育った故郷に納めたい。あるいは、お世話になった自治体に納めたい」と思う人もいます。その思いを叶えるのがふるさと納税制度なのです。
 たとえば、都会で暮らす給与収入が500万円のサラリーマンで「夫婦+子2人」の場合、3万円のふるさと納税をすると、「所得控除による軽減5,600円」、「住民税の税額控除で2,800円」、「住民税の税額控除(特例分)で19,600円」の計28,000円を税控除されます。
 これは、その人の税金納入額が28,000円少なくなったということではありません。28,000円を自分が現に暮らす場所で納めるのではなく、自分の故郷ないし世話になった自治体に納めるという納税先の変更なのです。ふるさと納税者は、28,000円を現に暮らす自治体ではなく、ふるさと等に納税しているのです。受け取る側の「ふるさと」の方では「寄付金をいただいた」と言いますが、その本当の内容は都会などで暮らす人たちから税金を納めていただいたということなのです。
 国民が納める税金が国や大都市に集まりやすく、地方の自治体は慢性的に財源不足に困っているという現実を変えていく第一歩としてふるさと納税制度は考案されたのです。ここが肝(きも)です。
 その後、返礼品がクローズアップされるようになり、テレビ番組などで「ふるさと納税を活用すると、たった2千円(上記の税額控除方法で、「ふるさと納税3万円−控除額計2万8千円=2千円」)で高級品を手に入れられる」と喧伝(けんでん)されたため、ふるさと納税制度の趣旨が大きく誤解される事態が生まれました。
 しかし、「財政格差を縮めるためのふるさと納税」という本来の趣旨は何も変わっていません。
 以上のことをしっかり押さえたうえで、今回、国・総務省が打ち出した「ふるさと納税の制度変更」の内容をみていきます。


◎ 総務省による制度変更の4つのポイント
 6月1日からふるさと納税制度が大きく変わりました。

 

■ 指定団体
 制度変更の第1のポイントは「指定団体」制の導入です。
 国・総務省に認められた自治体でなければふるさと納税制度を活用できないのです。この変更点はテレビのニュース等では「泉佐野市(大阪府)など4自治体は指定外」ということで伝えられています。「指定外」になると、そこにふるさと納税しても、前頁で説明した「税額控除」が認められないのです。
 わが栄村は本年5月15日付の総務省告示で「指定団体」として認められましたが、本年6月1日から令和2年9月30日までの間について認められたということで、令和2年10月1日以降については改めて申出書を提出して総務省の「審査」を受けなければなりません。本年6月以降来年9月までの期間に、この後に紹介する3つの「基準」に栄村が違反すると「指定団体」となれない事態が発生する危険があるのです。
 20世紀末の地方制度改革を経て、「国と自治体は対等」という原則が確立されていますから、国が一方的に基準を設け、それに基づいて自治体を選別する「指定団体」制度にはじつに大きな問題があります。

 

■ 3つの基準:「募集経費5割以下基準」、「返礼品3割以下基準」、「地場産品基準」
 「指定団体」制以外の制度変更点は、上のタイトルに記した3つの「基準」です。ニュースでは「返礼品3割以下基準」のみがクローズアップされていますが、より深刻なのは「募集経費5割以下基準」というものです。
 まず、「返礼品3割以下基準」を簡潔に説明したうえで、「募集経費5割以下基準」を説明します。
 「返礼品3割以下」というのは、栄村が特A米を返礼する場合、栄村がその特A米を手に入れるために現に支払った金額(消費税を含む)が「3割以下に収まっている」ことが求められるということです。もっと具体的に言うと、JAが精米し、「こころづかい」の名称が入った袋にお米を入れ、何処ででも売り出せる状態にしたものを栄村が手に入れるのにいくらのお金を支払わなければならないかということです。村がJAに求めた見積額から判断すると、昨年度までのように「寄付金1万円に対して特A米15kg」は「3割」を大きく超える、「特A米5圈廚ギリギリだというのが村の見解です。(私は工夫をすれば9〜10圓諒嵶蕕可能だと試算していますが)
 さて、「募集経費5割以下」という基準です。「募集経費」というのは、「返礼品に要する経費」も含め、「栄村はふるさと納税を募集しています」という告知、ふるさと納税して下さった人への領収書や証明書の発行・郵送、返礼品の箱詰作業、宅急便で送るための送料などの経費すべてを合計したものです。
 寄付金1万円の場合、返礼品で約3千円、送料で千円強、もうこの2つの費目だけで4割を超えます。「5割以下は無理だ」という悲鳴が多くの自治体からあがっています。場合によっては返礼品率を2割レベルに下げることで「経費5割以下基準」をクリアするという苦渋の選択をせざるをえない場合もあります。
 また、寄付金の多少にかかわらず要する経費(たとえば、ふるさと納税の情報入手と手続きが簡単にできるインターネット上のポータルサイトへの委託料)が寄付金に占める割合は、寄付金総額が少ないと高くなります。私の一般質問への答弁では「少なくとも寄付が1千万円集まると、経費率を5割に抑えられる」とのことでした。
 「地場産基準」については、栄村は栄村産特A米を返礼品にしていますので、クリアしています。そのため、ここでは詳しく記しません。

 

◎ 栄村は何を考え、何を工夫しなければならないか
 国・総務省による制度変更の結果、全国的に見て、ふるさと納税が大きく後退するのか、これまでの水準を維持できるのか。これはまだ見通せません。しかし、栄村が使っている「ふるさとチョイス」というサイトを含むふるさと納税ポータルサイトを見ると、多くの自治体は総務省の規制をなんとかクリアしながら、6月1日以降、積極的なキャンペーンを展開しています。率直に言って、栄村の対応は立ち遅れていると思います。
 では、栄村は、何を考え、何を工夫しなければならないか。そこを考えたいと思います。
 第1は、ここ数年のふるさと納税額=1億2千万円〜1億5千万円という水準を簡単に諦めず、本年度もその水準の実現をめざす姿勢を明確にすることです。「戦う前から戦意喪失」では話になりません。
 第2は、,佞襪気版疾任鬚靴堂爾気訖佑咾箸紡个垢訛爾隆脅佞竜せちのお伝えの仕方・内容、また、頂いたふるさと納税が栄村の農業の振興にどのように活用されているのかのお知らせ、これらにおいて根本的な改善を図ることです。
 私はふるさと納税で頂いたお金の農業振興への活用のしかたが、「返礼品に特A米を使い、その特A米の元となる玄米をJAに出荷した農家への支払金に上乗せ金する」という方法が最適の活用法だとは思いません。もっと良い方法があると思います。しかし、そのことをおさえたうえで、現在の「米価上乗せ金」方式で稲作農家の耕作継続にとって、どれほどに大きな意味を有しているか、したがって、ふるさと納税が栄村の農家にとってどんなに有難いものであるかを、ふるさと納税して下さった人たちに具体的にお伝えすることが必要です。
 都市で暮らす人たちは、お米を作るのに、どれほどの多額の経費がかかるか、基本的にご存じありません。だから、ふるさと納税のおかげで、なんとか赤字に陥らずに、農業を続け、栄村の田んぼと豊かな自然環境を守ることができていることを、もっと具体的にお伝えする必要、いや義務があります。
 でも、栄村のHP(ホームページ)等を見ても、そういうお知らせ(記事)は見当たりません。ちなみに、お隣の津南町では、米作りの様子や津南の暮らし・食文化などをわかりやすく、しかもかなり良いデザインでお伝えする冊子を作成し、ふるさと納税をして下さった人たちに送っています。
 第3は、ふるさと納税の恩恵を受けている村民一人ひとりが、ふるさと納税を維持する仕組みに積極的に関わるようにすることです。
 現状では、農家はお米を栽培し、刈り取り、ライスセンターに運び入れるところまでの関わりです。《乾燥したお米の調整(籾摺り)、玄米の保管、精米、袋詰め→箱詰→発送》――これらのプロセスはすべてJAへの委託です。ありていに言えば、JAへの丸投げです。
 これではダメですね。
 返礼品のお米は農家自身が自ら精米し、袋詰めし、宅急便に出すまでを自らやるようにするのが本来ではないでしょうか。このことを実際に実現するには、仕組みの制度設計等、議論を重ねなければなりませんが、不可能なことではありません。現に、集落営農団体からそういう取り組みをしようという声があがっています。
 とにかく、もっと工夫と努力が必要です。栄村の明日を考えて、みんなでズクを出し合いましょう!

 

◎ 「財政出動で農家への保障を」とは
 さて、以上のことをふまえて、農家のみなさんの関心がいちばん高いと思われる、1頁の冒頭に記した「財政出動を」、「農家に昨年度と同じ所得の保障を」ということをもう少し具体的に説明します。
 6月初め、村からの通知文書だけでなく、米出荷者にはJAからも通知文書が送られてきました。JAの通知は、端的にいえば、昨年の「栄村概算金額16,200円(内共計概算金13,372円、ふるさと納税上乗せ2,828円)」のうち、「2,828円の上乗せ」はほとんど出来ないということですね。さらには、ふるさと納税返礼品量が減った場合の、栄村産米の販売先の確保が大変だということも言っています。
 こんなことを通知されたら、誰しも不安になります。生産意欲が萎(な)えてしまいます。

 

 そこで、私は一般質問の最後に村長に提案したのです。
 「財政出動」とは、村が非常の際の資金として積み立てている財政調整基金を取り崩してでも資金を確保し、農家の米所得が昨年度並みに確保されるように村が支援するということです。今年度に限ってのことです。課長答弁では、寄付金で賄えるのは最大500万円ということなので、昨年並みの支援規模(2千万円を超える)を確保するために村の財政資金を使うということです。
 村長の答弁の冒頭の言葉は、「応援の言葉を頂いて有難うございます」というものでした。その言葉を聞いた時、私は「?」と思いましたが、村長の答弁はつぎのように続きました。「令和元年度に限ってですが」(これは当然の限定だと思います)、「作付が終わったものについては保障。仮渡金の支払を農家が不安に陥(おちい)らないように対応する」。村民が望む回答を得ることができたと思いました。
 財政出動の規模は質問の中でも言いましたが、かなり大きな規模になります。もちろん、ふるさと納税による寄付金が増えれば、財政出動必要額は少なくなります。ですから、どういう規模の補正予算を組むかの最終調整には今少し時間を要しますが、大事なのは、村の農家のみなさんに対するメッセージです。村長の答弁はそのメッセージだと私は信じます。
 みなさんも、リピート放送で私と村長のやりとりを聴いてみてください。私の質問時間は約1時間に及びましたが(質問順番は6番目)、この重要なやりとりは、私の質問開始から40分30秒後から44分30秒頃までの約4分間です。是非、お聴き取りいただき、これを全村民が共有する栄村の政策にしていければと願うものです。

 

 

6月定例会、あと3つの重要論点
 6月定例会には、専決処分の承認を求める案件6件、補正予算6件(最終日の追加1件を含む)、条例改正案4件など、計14件の議案が提出されました(うち、2件は請願・陳情をうけての議員提出の意見書案)。
 これらの議案審議で浮かび上がった重要な論点が3つあります。

 

■ 専決処分が許されるのは、どういう場合か
 今回は専決処分の承認を求める案件が6つもありました。通常はあまり見られない多さです。
 問題になったのは、専決処分第3号=「平成31年度一般会計補正予算(第2号)」です。
 内容は、のよさの里への692万円、雄川閣への756万円の投入、災害復旧費550万円などです。
 専決処分とは、本来、議会での審議と採決を要することを、議会を開かないで村長が決めることです。地方自治法第179条第1項で認められているのですが、その179条1項には専決処分を許す条件が書かれています。すなわち、「特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき」です。専決処分3号はこの要件に合致していません。というのも、専決処分がなされた4月26日の前日=4月25日に議会全員協議会(村長の要請によるもの)が開催されていて、「議会を招集する時間的余裕がない」とは正反対の状況だったからです。
 採決の結果、専決処分第3号は「賛成多数」で承認されましたが、私はこの専決処分は許されるものではないと今でも確信しています。

 

■ のよさの里をどうするのか
 補正予算審議で、そして一般質問で最も盛んに議論された問題です。
 上に記した4月26日村長専決の補正で、のよさの里を村直営するのに必要な人件費、物件費などで692万2千円、さらに6月定例会提出の「令和元年度一般会計補正予算(第3号)」でのよさの里の修繕費等に294万5千円、計986万7千円です。
 こんなことをしていたら、「振興公社への指定管理料が不要になり5千万円が浮いた」(3月議会での村長発言の趣旨)という5千万円はあっという間に消えてなくなります。
 補正予算審議、一般質問を通して明らかになったことが2つあります。
 第1は、「村の直営」と言いながら、本年度の「のよさの里事業計画」というものが無いということです。本年度、のよさの里の管理を担当するという秋山振興課の福原洋一課長がそのように答弁しました。信じられないことです。予算を使う前提はしっかりした事業計画の策定です。「お金だけ使う」は許されません。
 第2は、村による観光施設管理の杜撰(ずさん)さです。
 6月定例会提出の「のよさ」関係の補正予算では「源泉配管」や「給湯設備修繕」が目立ちます。担当課長は、「施設開設から30年、配管の中をまったく点検していなかった」という趣旨の答弁をしています。とんでもないことです。
 同様のことは昨年の北野天満温泉の天井・屋根の破損でも問題となっていますし、トマトの国の浴槽をめぐる問題も同様の性格を有する問題だと思います。指定管理者にしっかり管理してもらうと同時に、施設所有者として村が定期的に施設の状況をしっかり点検・把握することが求められます。
 のよさの里の今後のあり方について、村長は「まず秋山郷の旅館や民宿の経営者の意見を聴くことから始める」と答弁していますが、ちょっと違うと思います。のよさの里は秋山郷観光にとって戦略的なポイントとなる施設です。
 村は秋山郷観光をどういう方向にもっていくのか、のよさの里でどういう事業を柱にすえ、どういう施策を展開するのか。村の方針の明確化こそが、いま、求められているのです。
 私は、のよさの里の活用方法・運営方針、さらには秋山郷観光の方向性について議会主導の議論に踏み出す必要があると考えます。

 

 

村民が希望を持てる村政へ
 「2020年4月」を意識した話がいろんなところから聞こえてきます。
 私は、ふるさと納税問題−米農家所得保障の問題での積極的政策提案、専決処分第3号やのよさの里補正予算をめぐる現村政への厳しいチェック・批判、その両方を同時に進めながら、村政をめぐる議論を村民総ぐるみで深め、村民が納得のいく選択をできる環境づくりに努めていきたいと考えています。村民のみなさんの議論がさらに活発になることを期待して、今号の筆をおきます。 (了)

 


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