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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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松尾まことの議員活動報告第34号

 3月議会(3月5日〜13日)が終わって約20日。ただし、予算審議の「結着」がついたのが3月25日の臨時議会でしたので、報告が4月にずれこみました。
 3月議会は予算議会。新年度の予算が決まりました。予算の骨格は「広報さかえ」や一般の新聞でも報じられますので、私の報告では新年度予算から見える村財政の現状、予算修正をめぐる一連の事態などについて、お知らせしたいと思います。

 

◎ 一般会計予算は前年比86.8%、約4億9千万円減。なぜか?
 新年度予算は一般会計で総額32億1,900万円で、平成30年度の37億1千万円よりも約4億9千万円少なくなっています。これは注目すべき大きな変化です。「なぜ減少なのか?」、しっかり読み取ることが必要です。
 予算規模が前年までよりもかなりの減額となった場合、他市町村の予算をめぐる報道などでは、イ)大規模事業が前年度までで終了したため、ロ)歳入額が減少するなど財政難が生じているため、などの要因が挙げられます。
 本村の新年度の予算規模縮小は、その2つの要因が共に働いていると見られますが、とくに重要なのはロ)の要因にあると言えます。そのことは歳入予算から明らかになります。
 村の財源の中で47.4%を占める地方交付税交付金は前年比97.9%でさほどの減少ではありません。大きく減少している主な財源が3つあります。1つは国庫支出金で前年比61.9%(金額で約2億3千万円が約1億4千万円に減少)、2つは繰入金で前年比67.2%(金額で約7億9千万円が約5億3千万円に減少)、3つは村債で前年比66.%(金額で約4億3千万円が約2億8千万円に減少)です。

 

■「復興期の終了」による国から入る税源の減少
 上に挙げた3つの財源減少の要因のうち、国庫支出金の減少は8年前の震災からの復旧・復興に関わる事業がほとんど終了したことによるものです。言葉の真の意味での震災復興ができているのかといえば、けっして「復興終了」とは言えませんが、国が支出する復旧・復興事業がほぼ完了したことは事実です。
 その意味で、震災によって大きく膨らんだ村の予算規模が縮小することは正常なことだと言えます。
 ただ、森川村長が「栄村の予算の適正規模は30〜35億円」と言っていることには疑問符がつきます。村財政に精通している人たちの中では「適正規模は25億円程度ではないか」という見方が多くあります。震災前の村予算の規模を想起すれば肯(うなず)ける見方だと思います。

 

■ 財政調整基金からの繰入額と村債発行額の減少に注目
 私がより注目するのは「繰入金」の減少と村債発行額の減少です。
 「繰入金」とは、家計で言えば貯金に当たる「基金」を取り崩すことです。さまざまな基金がありますが、いちばん重要なのは財政調整基金というものです。平成29年度決算では13億4千万余円ありました。かなり多いと思われるかもしれませんが、けっして多くはありません。現在の栄村の年間予算規模からみれば、その4割余に当たる金額に過ぎませんから、緊急事態があって歳出が増えれば、1年で消えてしまう可能性があります。
 私を含む複数議員はこの1年間、森川村政による財政調整基金からの繰入(取り崩し)が多すぎると警鐘を鳴らしてきました。
 新年度予算では財政調整基金からの繰入金が前年度の4億8千万円から2億2,900万円に減少しています。約2億5千万円の減額で、あたかも私たちの「財調取り崩しが多すぎる」という批判を受け入れたかに見えますが、実際はけっしてそういうことではないと思います。本当のところは「無い袖は振れない」、つまり財政調整基金をもうそんなに取り崩せないところにきているということだと思われます。
 このこととの関係で目を向けるべきものがあります。村債発行残高と公債費です。つまり、村にどれだけの借金残高があり、その返済に新年度にどれだけのお金が必要になっているかということです。

 

■ 村債発行残高と公債費
 新年度の公債元金の返済額は2億8,839万円、利子支払額が1,059万6千円。他方、新年度の村債発行額は2億8,230万円。返済額と新たな借入額がほぼ同じです。
 もう少し見てみましょう。H29年度末の公債残高は約28億9千万円、そしてH30年度末残高見込額は約29億5,600万円。H30年度も元金返済をしていますが、その返済額よりも多くの新たな借金をしたことになります。
 でも、さすがに公債残高をこれ以上増やすことができず、新年度は村債発行額を前年度よりも減らしたということでしょう。

 

 以上に述べたことから、村の財政の厳しさを直視しなければならないことがあきらかになったと思います。
森川村長は3月議会冒頭の「平成31年度予算編成の施政方針」の最後の部分で「中長期的な財政見通し」、「安定した財政基盤の構築」という言葉を出していますが、その具体的な内容はあきらかではありません。今後、村の財政見通しをめぐる議論をさらに深めていくことが必要です。

 

 

◎ 私たちはなぜ、予算の減額修正をしたのか
 報道等ですでにご存じのことと思いますが、私を含む5名の議員(相澤博文、斎藤康夫、保坂良徳、阿部伸治の各氏)は連名で「平成31年度一般会計予算修正動議」を提出し、採決の結果、賛成多数(5対4)で修正動議が可決されました。
 私たちの修正案は4つの内容から成ります。

 

■ 特命課臨時職員の賃金をめぐる問題
 第1点は、特命課の臨時職員賃金を351万1千円減額することです。
 これは、2016年7月に採用された特命課の嘱託職員の任期が最大3年間となっているため(新年度の6月ないし7月に満3年になります)、予算案に計上されていた8月〜来年3月分を削減したものです。「2名が任期切れとなった後、どうしても臨時職員が2名必要だという場合は、その必要性を明示して補正予算を提出すれば、審議します」という説明を付しての動議提出です。
 森川村長は就任直後の2016年5月の全協と6月定例議会で「特命課の嘱託職員は1年契約で2回まで更新可能。最大任期は3年」と明言しています。私たちの修正動議は村長が議会で発言したことを守るように求めたもので、至極当然の修正です。

 

■ 突然出てきた「わさび田栽培試験事業」
 第2点は、「わさび栽培試験事業」というものに関するもので、予算額281万5千円に対して、137万5千円を減額するというものです。
 この事業は「小赤沢の荒廃農地を利用し畳石式わさび田を造成、わさび栽培試験を行い、生育状況や費用対効果を記録し、栄村の特産となるか検証する」というものですが、2月14日の全協(村長提出)で唐突に出てきたもので*、疑問点が非常に多いものです。イ)3月議会での質疑で明らかになったことですが、この事業について担当課長よりも森川村長がいやに詳しく知っていること、ロ)「試験」と言うにはあまりに規模が大きいこと(わさび田の造成面積、予算額)、ハ)試験栽培がうまくいった場合、次年度以降の事業者がすでに決まっていて、特定の事業体への補助に近いと思われること、さらに、ニ)他方で、多くの集落が期待している「集落営農組織育成補助事業」が新年度予算ではまったく計上されていない事実があり、そのこととわさび田栽培試験事業への多額予算の投入がバランスを欠いていること、などから、事業の開始は認めるものの、予算規模を縮小し、より踏み込んだ検討の時間を確保するために、減額修正を求めたものです。これも、今後、充分に納得のいく説明があれば補正予算での計上は可という趣旨を動議提案理由で明示しています。
   *新年度予算の編成作業は昨年12月段階でほぼ終わっています。

    この事業のようにまったく新たな事業は遅くとも12月段階で議

    会との協議を行うべきものです。

 

■開発商品の販売事業は事業自身の収入で賄うべき
 第3点は「食の高付加価値化プロジェクト」のイベント等での開発品販売の経費を75万8千円減額する、そして第4点は「特産品開発事業」関連の「特産品試験販売」の経費を33万6千円減額するものです。
 この2つに共通することは、開発した新商品を販売するとしながら、その経費が売上額を大幅に上回っていることです。こんなおかしな話はありません。民間会社が新商品を作って販売するという場合、商品の売上で商品製造と販売に要する経費を賄えるようにするのは当たり前です。
 行政が関わる「試験事業」では、「補助金が出るから試験事業(販売)をする」→「補助金が出なくなると、その事業は立ち消えになる」というケースがあまりにも多すぎます。
 今回の減額修正は、事業関係者にとっては厳しい措置だと感じられるかと思いますが、上に指摘したような「補助金頼り」(→厳しく言えば「補助金の食い潰し」)を無くしていくための踏み込みです。

 

以上の予算減額修正、1頁から3頁にかけて詳しく報告した村の財政の状況からすれば当然のものだと私は考えています。

 

 

◎ 「再議」とは何でしょうか? そして、「義務費」とは?
 信濃毎日新聞のニュースなどですでにご存じの方もおられることと思いますが、3月定例議会が終わって10日あまりの3月25日に臨時議会が招集され(議会招集権は村長にあります)、森川村長から、
   「平成31年第1回栄村議会(3月)定例会において、3月13日修正

   議決された「議案第21号平成31年度栄村一般会計予算について」

   の一部について異議があるため、地方自治法第177条第1項の規定

   に基づき、再議に付する。」
という「再議書」が提出されました(この場合、「再議書」が通常の「議案」に当たります)。具体的には、私たちが新年度予算案に対して行った修正のうち、特命課の臨時職員賃金を353万1千円減額したのに対して、この修正を取り消し、村長提出原案の830万4千円に戻すということです。
 議会はこの再議案について審議し、主に森川村長と質疑しましたが、村長の再議案は理に適(かな)っていないと判断し、賛成3、反対4で否決しました。

 

■ 再議とは
 村など地方自治体の行政や議会のしくみの基本事項を定めているのが地方自治法という法律です。「再議」に関わる規定は、この地方自治法の第176条と第177条にあります。
 第176条では2つのケースが規定されています。第1のケースは、「議会の議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は……その議決の日から十日以内に理由を示してこれを再議に付することができる」というものです。要は首長が議会の議決を受け入れられないとするわけですから、首長の拒否権とも言われます。上に挙げたケースは一般的拒否権とも呼ばれます。
 これに対して、地方自治法第176条の第2のケースは、「議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付し又は再選挙を行わせなければならない」としています。また、地方自治法第177条では、予算案に計上された特定の経費をめぐって、「議会において次に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費及びこれに伴う収入について、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない」としています。
 この176条の第2のケースと177条の場合は、首長に対して再議に付すことを義務づけているといえます。これらについては特別拒否権とも呼ばれ、176条の第1のケースのように再議に付する期間について「(議決から)十日以内」という制限をつけていません。
森川村長は、上記の再議に付す権限(拒否権)のうち、177条に規定する再議権を行使したわけです。
 そこで、問題になるのは、地方自治法177条で首長が再議権を発動できるとしている「経費」とは、どういう「経費」なのかということです。地方自治法177条をさらに詳しく見ていきましょう。

 

■ 義務費とは
 177条で再議の対象とされている「経費」は次の2種類です。
   法令により負担する経費、法律の規定に基づき当該行政庁の

   職権により命ずる経費その他の普通地方公共団体の義務に関

   する経費
   非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経

   費又は感染症予防のために必要な経費
 今回、栄村で問題になっているのは,離院璽垢如⊃浩鄲篠垢脇談寝殞彁職員の賃金(8月〜来年3月分)が177条に言う「義務に関する経費」(義務費)に当たると主張しているわけです。
 私たちは「義務費に当たらない」という見解です。
 私たちの見解と森川氏の見解は正反対で、両者の見解を見比べているだけでは議論は平行線のままになります。そこで、もう一歩踏み込んで、〈義務費〉に関する専門家による解釈を見てみましょう。
 その編集に専門家が深く関わっている全国町村議長会編の『議員必携』を参照します。それによると、義務費というのは
   「職員の給与費のように、法律又は条令で町村が負担するこ

    とを定められている経費」
だと解説されています。
 村の予算書と見ると、同じ人件費であっても、「給料」というものと「賃金」というものが区別して計上されています。特命課の場合、平成31年度予算では「給料」12,006(千円)と「賃金」8,506(千円)が区別して計上されています。「給料」は、条例で定められた役場職員の定員の範囲内で採用されている職員に支払われるものです。その給料も条例で定められています。他方、「賃金」は必要に応じ、期間を限って採用される臨時職員に支払われるものです。職員の給料、そして臨時職員の採用期間の賃金が、先に見た「条例で町村が負担することを定められている経費」に当たることは明白です。
現在、特命課には3名の臨時職員が採用されていますが、うち2名は「最大3年間」という期限を区切って3年前の7月に採用された(=今年6月ないし7月で任期満了)の方々です。もう1名は昨秋に採用された人です。
 したがって、平成31年度当初予算で義務費となるのは、H28年7月採用の2名の4〜7月の賃金と昨秋採用の1名の4月〜来年3月の賃金です。
 以上のことから、私たち議員が修正動議で減額した351万1千円は義務費には当たりません。
 新聞報道等によれば、森川氏はこれをあくまでも「義務費」であるとして村長の権限で支出する意向のようです。しかし、それは妥当でない措置だと言わなければなりません。森川氏は「村長の執行権、人事権、予算編成権」を強調しますが、法律は村長に無制約の執行権を付与しているものではありません。
 森川村長が「特命課には臨時職員がどうしても3名必要だ」と言うのであれば、「(H28年7月採用の臨時職員は)嘱託職員として最大3年の任期」としたH27年5〜6月議会での公式の発言をふまえ、新規の公募手続と予算措置をとる必要があります。
 私たちは、今回の予算修正において、格段に特別なことをやっているわけではなく、〈行政に対する監視とチェック〉という議会に課せられた使命をきちんと果たしているだけです。私たち議員は議会の果たすべき役割をしっかり全(まっと)うしていきたいと思います。

 

 

◎ 農業施策をめぐる質疑
 3月議会での予算審議をめぐって報告しなければならないもう1つ重要なポイントがあります。農業施策をめぐる質疑が相当の時間を費やして行われたことです。
 直接に議論になったのは3つの農業施策です。第1は「米農家支援事業」です。新規事業ですが、予算はわずか100万円で、これを村内約170haの田んぼを対象に配分するというのです。1反歩当たり580円?! 「1反580円で何の意味があるのか? しかも、これを配分する事務経費だけで、予算額を超える費用が必要になるだろう」というのが議員の過半から沸き起こった疑問と批判の声です。
 第2は、「ふるさと納税」(農業支援目的寄付金)をめぐる問題です。H31年度予算では1億2千万円が計上されていますが、その支出を見ると、JAへの委託料(返礼米の精米、発送等)7,932万9千円、消耗品費3,602万2千円(この中に返礼用特A米の購入費が含まれる)、印刷製本費(米袋作成代等)230万8千円、通信運搬費90万1千円となっています。つまり、1億2千万円にも及ぶ農業支援目的の寄付金のうち農家・農業支援に使われているのは最大に見積もっても3割にしかならないということです。
 「こんな使い方でよいのか」――議論は始まったばかりで、まだ圧倒的に不足していますが、重要な議論が始まったと言えます。
 第3は、第2の点と深く関連しますが、昨年度までふるさと納税を原資とする農業振興基金から700万円が支出されていた〈集落営農組織育成補助金事業〉がH31年度予算でまったく消えていることです。
 村側は「返礼米発送経費が高くなり、700万円を捻出できなくなった」と言っていますが、栄村農業にとって重要な施策を放棄する理由にはなりません。私たちは先に説明した予算の減額修正で確保された600万円をこの集落営農組織育成補助金の復活に充てたいと考えましたが、「村長提出の予算書に存在しない事業に予算をつけることは村長の予算編成権を侵害することになる」とされ、実現できませんでした。しかし、今後、この集落営農に対する支援金の復活にむけてさらに努力する考えです。
 「農業は栄村の基幹産業」と言われているにもかかわらず、20〜50歳代の生産年齢世代が農業で生きていける状況を創り出すための積極的施策がないというのが栄村の農業施策の現状です。この状況は何としても変えていかなければなりません。私たち議員も頑張りますが、多くの村民の方からさまざまな意見を出していただいて、栄村の農業を守り、発展させることができるようにしていきたいと思います。上で見た「ふるさと納税」のあり方の見直しを含めて、今後、農業施策議論の場を積極的に作っていきたいと考えていますので、よろしくお願いします。

 

(了)


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