栄村復興への歩みNo.319
- 台風21号被害
- 2017.11.10 Friday
長瀬〜笹原間の土砂崩れ災害は深刻な状況
栄村村内でも、直接に影響を受けている地区以外ではあまり詳しく知られていませんが、10月23日の台風21号による土砂崩れの災害が村民等の暮らしに大きな困難をもたらしています。とりわけ長瀬〜笹原間の土砂崩れ−通行止めは11月3日現在ですでに12日間にわたっており、さらに長期化する見通しです。本号では、この長瀬〜笹原間の土砂崩れを中心に台風21号による土砂災害の全貌をレポートします。
● 長瀬〜笹原間の災害の状況
県道秋山郷森宮野原(停)線(507号線)の長瀬〜笹原間で土砂崩れが発生し、県道は倒木と土砂で完全に埋まっています。
写真1
写真1は10月25日撮影で、長瀬側からの様子です。
写真2
写真2は、道路上に堆積している土砂の上に立って、土砂が流れ出した斜面の全体像を撮影したものです(11月2日撮影)。さらに2頁に土砂崩れが発生した箇所をクローズアップした写真を掲載します(写真3、11月2日撮影)。
写真3
写真3を見ると、広葉樹が生えているところと杉林の境界に沿って崩壊が発生しています。また、この地点には雪崩防止柵が2段、設置されていますが、上段の1基がコンクリート製のコンクリート土台もろともえぐり取られ、落ちています。
写真4
写真4は道路下を撮ったもので、写真奥に北野川の水の流れが見えます。また、写真真ん中にガードレールのワイヤーが見えます。道路そのものはそんなに傷んでいないように思われますが、路肩は少し損傷している可能性があります。
● 北信建設事務所の当面の対処方針
ここは県道ですので、土砂崩れへの対応措置は村ではなく、北信建設事務所が行っています。
2日までに県建設事務所があきらかにしている対応措置は、以下のように整理できます。
イ) 道路上の倒木や土砂の撤去を進める。
ロ) 土砂崩れ発生箇所及びその周辺において
ボーリング調査を実施する。
主な調査内容:岩盤はどれくらいの深さにあるか、
崩土が堆積しているか(→あれば、次の雨などで流
れ出す)、崩壊地点よりも上の箇所の地盤状況
ハ) 道路上の土砂等の撤去が終わっても、ロ)の調査
が進み、安全性の確認ができるまでは通行止めを続
ける。
ニ) 長瀬〜原向を結ぶ県道を迂回路とする。
写真から明らかなように、かなり大きな土砂崩れですので、「安全性の確認」となれば、以上の措置はやむをえないと思います。したがって、通行止め期間は不定で、しばらくの間続くと受けとめざるをえません。
● より深刻なのは積雪期間の問題
秋山郷では10月30日に里地でも初雪が降りました。本格的な降雪・積雪まで1ヶ月半ほどしかありません。
安全性確認ができて、応急復旧措置が実施されたとしても、写真に見られるように、積雪が滑り落ちるのを食い止めるものが何も無くなった斜面の対策をどうするかが大きな課題として残ります。わずか1ヶ月半の期間では雪崩防止柵の本格的な設置は困難と思われます。
● 迂回路が抱える困難・危険
現在、旧北野校区の人たちは、長瀬から原向に上り、天代に下るコースを迂回路として指定され、利用しています。
しかし、この迂回路、冬期間は原向から長瀬に下る坂・カーブ区間が凍結しやすく、車が滑る危険度が非常に高いところです。今冬の全期間、このコースを迂回路とすることは望ましくありません。
たとえば、スクールバスに使用されている南越後交通の大型バスが冬期間、このコースを下ることは回避すべきだと考えられます。
● 地元住民の声を建設事務所に届けることが重要
なんとか、長瀬〜笹原間の通行を可能にできないか。現時点では誰も確たることは言えない状況だといえますが、県建設事務所、村、そして地元住民が話し合い、地元住民の声がしっかり届く状況の中で対策が検討され、進められることが重要です。
1つの事例を紹介しておきます。
震災で中条川上流の山腹が大きく崩壊し、土石流が発生した森集落・中条地区。2013年9月の台風による大雨で再び土石流が発生した直後、北信建設事務所と県林務課が合同で現地住民への説明会を開催しました。そして、その場で住民が率直な疑問や対策措置についての要望をどしどし出しました。住民は、「川の中に砂防ダムを造るのではなく、道路・田畑に土砂が流れ出さないように側堤を造ってほしい」と要望しました。しかし、土石流対策として側堤を造るという事例はあまりなく、説明会に参加し要望した住民は、「建設事務所の人たちは『何を言っているの?』という感じだった」と振り返っています。簡単に言えば、「無視された」という感じを受けたのでした。
しかし、それからおよそ1年後ですが、ある日、北信建設事務所から「地元説明会をしたい」という話がきて、参加してみると、「みなさんから要望があった側堤(導流堤)を造りたい。基本構想を示すので、みなさんの意見を聞かせてほしい。建設事務所だけで設計を決めることはしない」という話でした。結局、3回にわたる説明会があり、住民の意見も反映された工事計画が決められ、旧森林組合事務所跡付近、白山神社付近の2ヶ所に導流堤が2016年に建設され、地元住民が安心して暮らせる大きな支えになっています。
話を長瀬〜笹原間に戻しますが、冬の豪雪期の道路通行の大変さ、どういう危険があるかについてよく分かっているのは地元住民です。建設事務所の人たちは道路建設等の専門家ではありますが、雪の中の暮らしの専門家ではありません。
あえて言えば〈地元住民の責任〉として、想定される危険や、それを回避するための知恵などをどんどん出して、この冬をのりきれる対策措置がとられるように、全力でがんばっていかなければならないということです。
対策の第一義的な責任は行政にありますが、とにかく地元が声を出して、なんとかこの困難を打開していきたいものです。
● 坪野〜野口間の村道
写真5
写真6
写真5、6は坪野と野口を結ぶ山の上の村道です。写真5が10月25日撮影で、写真右側の法面がごそっと丸ごと抜けて、道路を完全に塞いでいます。地震の時にも被害があった箇所です。写真6は11月2日撮影で、この日から土砂の撤去が始まっていました。
この箇所は村道ですので、役場産業建設課建設係の所管。ひとまず土砂を撤去し、本格復旧工事は来春になると思われます。
● 野々海水路管理関係の道路3ヶ所
野々海水路が平滝・横倉に下る区間で、水路管理に関わる道路が3ヶ所で崩落しました。
第1は、平滝ケンノキから横倉上とやを結ぶ道路。2015〜16年に地元が管理道路を自ら整備したところです。
写真7
写真8
写真7は、村道野々海線からこの管理道路に入り、車で3〜4分進んだ地点で、写真真ん中に道路が崩落で切れているのが見えます。写真8は崩落地点から横倉沢川方向を望んだもの。写真には見えませんが、この土砂が流れて行っている先に横倉沢川があります。
この地点は、『水内開拓史』に「火山灰土質であるので崩壊の危険に対して注意を払わなければならなかった」と記されています。
今回は、県が「緊急県単農地防災事業」を施工中のため、県の責任で復旧対策が行われるようです。(写真7、8は10月28日撮影)
第2は写真9で、平滝の堤のすぐそばの地点です。第3は横倉の山の上のサテライト(テレビ中継所)の下近くで、写真10です。写真9、10いずれの地点も村道で、平滝の人たちが水路の管理のために使用しています。
写真9
写真10
写真9の地点は10月28日朝、すでに土砂撤去の作業が始められていました。写真10の地点は、私が写真9の地点に横倉側から接近しようとしてサテライト下から道を歩いて進む中で偶然に発見しました。30日に役場が現場状況を調査しました。
この他、10月23日当日は月岡での浸水防止のためのポンプによる排水も行われました。
このように、台風21号は栄村にも大きな爪痕を残しました。
ここまででかなりのページ数を費やしましたので、今回は一言で済ませますが、これだけの被害があるにもかかわらず、村からの災害に関する情報の発信は少なすぎると思います。なんとしても打開しなければならない問題です。
当面の最大の課題としては、長瀬〜笹原間の通行止め(不能)の問題の打開のために地元住民とともに全力で対応したいと考えています。