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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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松尾まことの議員活動報告第18号

「共通入浴券」問題の基本論点と私の考え

 

 信毎8月10日付での報道もあり、「共通入浴券」問題に対する村民の関心はますます高まっています。
 8月21日には三度(みたび)、議会全員協議会(村長の要望によるもの)が開催されます。
 村内外から「栄村村政は大丈夫なのか?」という声も聞こえてきます。
 こういう時は、問題の原点にたちかえって、熟考を重ねることが大事だと思います。


◎ 温泉は村の条例でどのように位置づけられているか
 今回の「共通入浴券」問題の始まりは、村が昨年3月に「共通入浴券料金を平成29年4月から改定する」と告知したことです。
 つまり、村の温泉政策が検討対象なのです。
 村には、現在、村が所有する温泉源泉が7つ(切明、湯ノ沢、中条、北野、小赤沢、百合居、長瀬)、温泉利用施設が8つ(雄川閣、のよさの里、上の原浴場、トマトの国、北野天満温泉、百合居温泉、長瀬老人福祉センター、楽養館)あります。
 これらの温泉の管理・利用法については栄村温泉条例(昭和52年制定、最終改定平成20年)が定めています。また、振興公社に管理を委託している温泉宿泊施設などは村の「公の施設」(=「住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設」)として位置づけられ、その管理・利用法について栄村観光レクリェーション施設の設置及び管理に関する条例(昭和60年制定、最終改定平成29年)(以下、「観光施設条例」と略記)が定められています。

 

● 温泉条例第1条と「共通入浴券」
 温泉条例は第1条で〈目的〉として、次のように定めています。
   「この条例は、村が所有する温泉について、その保護及び住民に

    対して利用並びに管理、運営について必要なことを定め、住民

    の福祉の増進に寄与することを目的とする。」
 読んでの通り、「住民の福祉の増進に寄与する」ことが、村が温泉を所有・管理・運営する目的なのです。

 

● 観光施設条例のめざすものは何か
 つぎに、観光施設条例も見ておきます。
 この条例では、〈目的〉が第2条で明記されています。
   「村民及び観光客の保健保養に供することを目的として、栄村観

    光レクリェーション施設を別表1のとおり設置する。」
 「観光レクリェーション施設」という呼び方から、「観光のための施設」と思われるかもしれませんが、観光客と共に、なによりも「村民の保健保養に供する」ことが目的とされているのです。これは忘れがちなこと、あるいは誤解されていることかもしれません。正確な把握・理解が求められるところです。

 

● 「共通入浴券」は、2つの条例の〈目的〉を実現するために設けられた制度
 「共通入浴券」については、温泉条例の第25条で、
   「栄村が所有する温泉について、管理者を問わず使用できる共通

    入浴券を発行できる」
と定め、さらに第26条で「共通入浴券」を使用できる施設を具体的に列挙し、また、第29条で「共通入浴券の1年間の料金は、別表2のとおりとする」と定めています。
 現在の「年間大人1名12,000円」等の料金は、別表2に定められているものです。

 

◎ 〈村の財産としての温泉をどう有効活用するか〉が、まず最優先・最重要の論点

 さて、栄村に村が所有する温泉が7つあることについて、これを適切なことと見るか、多すぎる(あるいは、少ない)と見るか、色んな捉え方がありうると思います。

 

● 温泉は〈栄村の財産〉だと思います
 私はこれだけの温泉が村にあることは栄村にとって重要な意義がある財産だと思います。
 温泉は、調査・掘削するのにかなりの経費を要します。が、栄村は好意ある方のご支援などによって、比較的安価に調査・掘削できたと聞いています。
 温泉を掘ると、今度はその維持・管理・運営に経費を要します。
 そこで、先に見た温泉条例第1条が規定する〈目的〉=「住民の福祉の増進への寄与」の達成度と、それに要する費用、この両者のバランスに目を配ることが村の政治・行政における重要課題の1つとなります。この点について、村の予算・決算等において必要かつ十分な検討が重ねられてきたとは言えない面があり、これは非常に残念かつ由々しき問題であると思います。
 そのうえで、私は、以下に詳しく述べる理由で、村が所有する温泉を〈栄村の財産〉だと考えます。

 

● 「温泉で村民が元気に」――栄村を全国に知らしめる
 栄村及び近隣町村は温泉が豊かで、村民が日常的に温泉に親しむ機会に恵まれていることが当たり前のように思われています。しかし、全国的な標準レベルから見れば、日常的に温泉に親しむ機会に恵まれているという環境は珍しいものであり、特記されるべきことです。
 テレビ番組などを見ていますと、住民が温泉に日常的に入る地域が、珍しい、素晴らしい、そして特別な地域として紹介されています。
 一日の農作業などを終えた後、温泉に身を浸し、疲れを癒すことができる。これは素晴らしいことですし、都市部のサラリーマンなどからすれば垂涎(すいぜん)の的(=何としても手に入れたいと思うほど貴重なもの)となるものです。
 また、80歳代、90歳代のお年寄りが温泉に集い、体を癒し、色んな人びとと交わり、会話を楽しみ、元気に暮らす。これは超高齢社会になっている日本において、健康寿命*を長くするモデルとなるものだと言えます。
   *「健康寿命」とは、「平均寿命」とは別のもので、「健康上の問題

    で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されてい

    ます。
 農作業の様子と温泉に身を浸す姿をワンセットで伝える映像、お年寄りが温泉に集い、元気に暮らす姿の映像。いずれも、栄村ブランドとして全国発信し、栄村を「元気に暮らせる村」として全国的に知らしめることができるものだと思います。


● 「子どもたちが温泉に通い、村の人たちみんなの手で育てられている」――人口対策・定住対策の柱の1つになるもの
 一昨年のことです。学生時代に栄村を何度も訪れたことがある若いご夫婦が2泊3日の栄村旅行に来られました。2歳未満のお子さんを連れての初旅でした。
 奥さんはお子さん連れで「トマトの国」の温泉に入られました。すると、村のかあちゃんたちがそのお子さんを可愛がり、お母さんがゆっくりお湯に浸かれるように、お子さんを預かってくださったそうです。
   「私、子どもが生まれて以降、こんなにゆっくりお風呂に入れたのは初

    めて。やっぱり栄村はいいわ。」
 これが、彼女の口から出た言葉です
 こういう事例は、旅行者のケースだけではありません。温泉にやって来る村の子どもたちをみんなで面倒見していますね。
私も日常的に「トマトの国」のお世話になっていますが、廊下で、そして風呂場で子どもたちに出会うことはとても楽しみです。高齢者のご夫婦だけで暮らしておられる人たち、あるいは高齢者の一人暮らしの人たち、村の子どもたちがお湯に入ってくれば、わが孫を見るような気持ちになれるのではないでしょうか。これはきっと「高齢者が元気で楽しい暮らしをできる」ことにつながると思います。

 子どもたち自身にとってはどうでしょうか。
 最近はもう当たり前の話になってしまい、テレビなどでもあまり騒がれなくなりましたが、小学生や中学生が修学旅行先で同級生と一緒の入浴ができないという問題があります。水泳パンツが必需品だといわれます。
 村の子どもたちが温泉に日々通い、大人も子どもも一緒にお風呂に入る。
 理想的な子育て環境だといえます。
 そして、先に紹介した子ども連れの旅行者のお母さんのお話。
 「栄村は子育てにとって最適な環境」ということを全国に発信できる格好の話題です。

 栄村の人口減少、人口対策・定住対策が大きな課題になっています。
 「空き家対策」の検討も始まっていますが、人口対策・定住対策はハードの面だけでは成り立ちません。子育て環境、住宅、仕事の確保の3点セットが必要です。
 この3点のうち、「子育て環境」のアピールの重要なカードとして温泉活用を位置づける。そんな発想法が大事だと思います。

 

◎ 振興公社経営の基本は何か
 ところで、いま問題になっている「共通入浴券」問題。背景に振興公社の経営問題、出捐金や指定管理料とは別の形での振興公社への資金投入の問題があるという認識が村民の間でも広がっています。
 その認識は正しいと言えるでしょう。
 そこで、振興公社をめぐる問題についても考えてみたいと思います。

 

● 指定管理での管理委託の目的は何か?
 村が8月9日の議会全員協議会で示した提案では、振興公社が村から指定管理を委託されて管理する温泉施設を「共通入浴券」での利用可能施設から外すとされています。
 4つの温泉宿泊施設の振興公社への指定管理制度での管理委託は、法律(地方自治法244条)と村の条例=「栄村公の施設に係る指定管理者の指定管理手続等に関する条例」を根拠とするものです。
 上記条例の第4条は、指定管理者を選定する基準として、次の5つの項目を挙げています。
   (1) 施設の利用者の平等な利用が確保されること。
   (2) (指定管理応募者が提出した)事業計画書の内容が、

     施設の効用を最大限に発揮するものであること。
   (3) 事業計画書に沿った管理を安定して行う人員、資産そ

     の他の経営の規模及び能力を有しており、又は確保でき

     る見込みがあること。
   (4) (指定管理応募者が提出した)収支計画書の内容が、

     施設の安定した管理及び運営が図られるものであること。
   (5) その他村長等が施設の性質又は目的に応じて別に定める

     基準。
 下線部に注目して下さい。
 「村が所有する施設をただ委ねる」というのではないのです。施設の「性質・目的」をふまえ、「施設の効用を最大限に発揮する」ようにすることが、指定管理の狙いだといえます。
 そこで、先に見た温泉条例と、観光施設条例で定められている〈目的〉が関係してきます。
 つまり、〈住民の福祉の増進、保健保養に供する〉ことを確保できるように管理してもらうということです。

 

● 〈民間的手法での公社経営〉とは、どういうものか
 ところで、振興公社をめぐっては、〈民間的手法での公社経営〉への転換ということが課題となっています。
 当初の振興公社設立から長年、公社理事長には村長が就任、また、平成25年に一般財団法人に改組されて以降も、昨年5月までは副村長が公社理事長に就いていました。昨年5月、初めて民間人が理事長に就任し、それは〈民間的手法での公社経営〉への画期だといわれてきました。
 ところで、〈民間的手法での公社経営〉とは、そもそも、どういう意味なのでしょうか。
 わかりやすく言えば、俗に言う「親方日の丸」*ではなく、きちんと利益を生み出し、自力で運営・経営ができるということでしょう。
   *「親方」は日の丸、すなわち国の意。官庁や公営企業は、

    経営に破綻をきたしても、倒産する心配がないので、厳し

    さに欠け、経営が安易になりやすい点を皮肉っていう語。

   (デジタル大辞林)
 ただし、株式会社と同じものではありません。株式会社は利益を生み出し、その利益の相当分を出資者に配当として分配するものです。それに対して、振興公社のように一般財団法人は生み出された利益を出資者に分配することはありません(できません)。
 なお、〈自力で運営・経営できる〉ということと、管理を委託する村が一定額の指定管理料を公社に支払うこととは矛盾するものではありません。まさに〈公の施設〉としての維持・運営のために必要不可欠と認められる指定管理料の支払いは認められるものであり、本年度でいえば、1,850万円の指定管理料の支払いを議会も3月予算議会で承認したところです。

 

● 平成28年度振興公社決算
 毎年、6月定例議会には、〈栄村が出資している法人に関する平成28年度の経営状況について〉という報告書が提出されます。
 具体的には、有限会社栄村物産センター(「道の駅」の物産館の経営組織)、一般財団法人栄村振興公社、苗場山観光株式会社(苗場山頂ヒュッテと楽養館を経営)の3法人の決算書が提出されます。ただし、報告書が議員に配られるだけで、口頭での説明や審議の機会はありません。
 振興公社について、決算書から私が読み取ったことを以下に記します。
   ・ H28年度の経常収支 2,941万5,011円の赤字
   ・ H28年度末の資産状況
      現金・預金 4,752万9,384円
      負債 884万0642円(未払金、税未払額など)
   ・ 事業所別の経常収支(△印は赤字を意味する)
      雄川閣 △435万6,382円

      のよさの里 △521万3,343円
      トマトの国 △31万6,210円

      北野天満温泉 38万8,232円(黒字)
      管理部門 △1,893万7,035円

 

● 決算の数字から見えるもの
 第1は、経常収支の赤字額が、本年1月に出捐金5千万円の提案が出された際の資料での年度末赤字予想額3,377万578円よりも約435万円少なかったことです。
 赤字縮小のための経営努力もなされたことと思いますが、なによりも1月時点で出された資料での赤字予想額が過大であったのではないかと思われます。その象徴が「トマトの国」の赤字予想額で、昨年12月段階の資料では248万円強の黒字予想が、1月資料では約697万円の赤字予想に変えられていました。実際の決算額は約37万円の赤字です。出捐金を最大限引き出すために赤字予想額を過大に見せたと言われてもやむをえないのではないでしょうか。
 第2は、3月末時点での資産状況についてです。
3月末には、1月24日議会承認の出捐金2,100万円(当座の資金繰りのためのもの)、3月議会承認の出捐金2,900万円(「定期性預金に入れ、金融機関からの借金のための担保にする」と言われたもの)がすでに入っています。
 3月末の預金・預金から「借金の担保とするため定期性預金にまわす」とされた2,900万円を除いても、約1,853万円の現金・預金があります。そこから負債総額約884万円を差し引くと約1千万円弱の現金・預金が残ります。1月議会や3月議会での説明が醸し出した雰囲気(「明日にも倒産の恐れ」)とはかなり違うなあという感じがします。
 第3に、何が大きな赤字要因なのかということです。
 まず目立つのは、「のよさの里」が一般財団法人化のH25年度以降4年間連続で500〜900万円の赤字を続けていることです。他の3施設では見られない事態です。振興公社の経営再建のためには、「のよさの里」の抜本的対策を講じることが不可欠だということです。現理事会の下での再建策の検討が始まって1年余が経ちますが、この種の議論は基本的に聞こえてきません。
 もうひとつは、管理部門(一般の企業でいえば、営業する現場ではなく、本社的機能)に1,900万円もの経費がかかっていることです。経営の常識からいえば、この経費を賄うに十分な利益を営業部門で稼ぎ出すか、管理部門の縮小(たとえば管理部門人員の削減)か、いずれかの選択が迫られます。しかし、現実には役員報酬がH27年度比10倍化(約26万円が約230万円になった。H29年度はさらにその2倍化という話も聞こえてきています)するなど、この点の検討が十分になされているという材料は見えません。
   *なお、9日の全協で、「4月から理事(長)が固定報酬制になったと

    いう話を聴いたが、本当か」という阿部議員の質問に対して、森川

    村長は「初耳だ」と答えました。
    ちなみに、振興公社の定款は24条で、「理事及び監事の報酬、賞与

    その他の職務執行の対価として当法人から受ける財産上の利益は、

    評議員会の決議によって定める」と規定されています。森川氏は振

    興公社の評議員です。
    いったい、どうなっているのでしょうか。
 以上の2つは、振興公社の赤字の構造的要因だといえるでしょう。
 振興公社に対する指定管理料は今年度、1,060万円から1,850万円に引き上げられました。公社が管理する温泉の運営経費が主な算出根拠だとされています。ところが、8月9日の議会全員協議会で商工観光課長は「じつは温泉運営になお500万円の不足がある」と言い出しました。その時々でクルクル変わるマジックのような数字はもう御免です。
 赤字の構造的要因の打開策の検討なしには公社におカネを入れることはダメです。逆に、赤字の構造的要因の打開のための投資(したがって、将来、その資金の回収と利益の創出ができる)であることが明確であるならば、村の将来のためにも村が公社におカネを入れることは許されるでしょう。

 

 もう紙面がなくなりました。以上の報告を参考にしていただいて、村民のみなさんからご意見を出していただき、議論を深めていきたいと考えています。

 


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