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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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台風19号に伴う村の避難準備情報発令と自主避難について

 台風19号での中条地区等での避難について、お問い合わせなども受けました。以下、まず経過について報告します。

経過
 〈大型で非常に強い台風19号〉が14日未明に長野県内を通過しましたが、それに伴い、栄村役場は13日午前8時30分から第1次警戒態勢に入り、午後4時、森集落中条地区と秋山・屋敷集落の一部に避難準備情報を発令しました(これに伴い役場は第2次警戒態勢に入りました)。これは同日午後3時から開催された栄村災害警戒本部の第1回会議での決定に基づくものです。避難準備情報発令は村内告知放送されました。
(なお、役場は台風19号の日本接近に伴い、10日の段階で13日朝から第1次警戒態勢に入ることを決定していました。)
 中条地区では、事前に役場からの情報もあり、また、住民自身が平素から早めの避難を心がけていますので、「早めの夕飯を済ませて、午後6時に避難所の森公民館に入る」ということで行動しました。なお、高齢者3名については午後6時よりも早く、明るいうちに避難されました。
 村の災害警戒本部では14日午前6時13分に第2回、続いて午前8時に第3回の会議を行ないました。第3回の会議は、台風も通過したことから避難準備情報の解除を検討する予定でしたが、直前に長野地方気象台から大雨警報が出されたため、避難準備情報は継続されることとなりました。
 午後3時前、中条地区の住民は雨も小降りになったことから自主避難の解除で合意し、それぞれ帰宅しました。そして、災害警戒本部は午後3時30分から第4回会議を開き、雨が小降りになってきたこと、水位も下がり始めたことから、避難準備情報の解除を決定し、村内告知放送で全村に知らせました。
(以上の経緯については、避難準備情報解除後に桑原全利総務課長から取材したことと、自身の体験をまとめたものです)

つぎに今回の避難準備情報の発令と自主避難についての「総括」を記したいと思います。

適切だった判断
 結果としては栄村での雨量は少なかったわけですが、村が避難準備情報を発令したこと、住民が自主避難を行なったことは基本的に適切な判断だったと思います。
 災害に備える避難というものは往々(おうおう)にして、このように「空振り」に終わるものだと思います。
 また、避難準備情報や避難勧告・指示というものは、いったん発令すると、その解除の時期の選択が非常に難しいものだといえます。避難している者も避難が長時間にわたると疲れ、うんざりしてくるものです。だからこそ、解除のタイミングがいっそう難しくなります。
 今回の中条地区の住民の行動、役場の解除決定はともに適切であったと考えます。

改善された点
 今回の避難準備情報の発令をめぐっては、役場(災害警戒本部)の対応において、従来のそれとは異なる改善点がありました。
 従来ですと、避難している住民に対して情報の告知がほとんどなかったのですが、今回は1時間刻みで雨量等の情報が避難している住民に知らされました。大きな改善点です。桑原総務課長によれば、「8月27日の説明会(中条川土石流に関する住民説明会のこと)で出た住民の要望を受けて情報を出した」とのことです。
 また、避難所開設時から、森公民館には役場職員2名が泊まり込みで駐在し、また村長も公民館を訪れました。役場職員2名は若い人で、最後まで住民を気遣って懸命に働いてくださいました。(屋敷集落については、避難者が全員女性であったことから、秋山居住の女性職員が避難所に詰め、また秋山支所長は支所泊まり込みで対応されたとのことです。)

今後に備え、さらなる改善が求められる点
 以上に書いたことから、「すべてよかった」というわけではありません。改善すべき点があります。

 まず第1は、大雨が予想される時に避難を必要とする根本原因である中条川の土石流対策、とくに1号崩壊地における崩落土砂の堆積の対策について、村がもっと踏み込んで対応することです。
 中条川の土石流対策は県林務部及び建設部の所管ですが、だからといって、村の対応が基本的に受け身に終始していることは納得できません。
 1号崩壊地では、現在、昨冬期の積雪の影響などで使用困難となった工事用作業道の新規敷設工事が10月に入って始まったばかりです。現段階は新たな敷設箇所の立木伐採が行なわれているところです。
 ところで、この作業道敷設工事は7月に入札公告が行なわれたものの、応札業者がなく、再度の入札公告でようやく長野市の「株式会社キトウ」という施工業者が決まりました。このことを私は自宅に廻ってきた「回覧板」で知りました。その回覧文書は森区長さんと森農家組合長さんの連署で「森区民の皆様」宛てに出されたもので(9月29日付)、「株式会社キトウから連絡があった」と記されています。
 私は、本来は役場に告知の義務があると思います。
 また、私は「台風19号が近づく前に」と考えて、10日早朝に1号崩壊地の現場を訪れ、現況の撮影をしてきましたが、こういうことも本来は役場が行ない、随時、住民に情報連絡すべきものだと考えます。
 
 第2は、避難準備情報等の判断にあたって、中条川上流の山間部における雨量データをもっと重視すべきだということです。
 役場が今回、私たちにも告知された雨量データは「トマトの国」付近の工事現場に設置されている雨量計のものだったと思われます。しかし、中条川上流に位置する標高1000m近い山での雨量は「トマトの国」付近での雨量よりも多いはずです。実際、14日午後4時すぎに役場でお願いしてプリントしていただいた「ハザード・アイ観測データ[中条川上流]」というものでは、14日16時現在で、日雨量84弌∀続雨量最大91.5个箸覆辰討い泙后1号崩壊地に流れ込み、土石流を引き起こす要因となるのはこの山の雨量なのです。(参考までに付記すれば、この雨量観測地点の14日の最低気温は8℃、最高気温は11.8℃で、集落がある地点とは気象状況が大きく異なることがわかります)
 この点、よく検討していただきたいと思います。
(なお、この「ハザード・アイ観測データ」は誰でもネットから見られるとのことですが、自宅に帰ってアクセスを試みたものの、うまくアクセスできませんでした。もう一度、役場担当者にお尋ねし、再アクセスしたいと思います)
 
 第3は、今回のような避難準備情報発令時には、村のHPにおいて、随時、情報発信すべきだということです。
 栄村での避難準備情報の発令はただちにTVのテロップで流されました。その仕組みは、村が県北信地方事務所に発令を伝え、地方事務所から県庁に報告され、県庁がマスコミ発表するというものです。
 だから、栄村での避難準備情報発令は村外の方も知っておられます。心配して下さる方も多くおられます。そこで、「栄村はどうなっているか」と心配して下さる方はさらなる情報を求められるわけですが、栄村のHPには何も出ていません。
 避難者の近親者などであれば、携帯電話などで状況を尋ねることもできるでしょうが、一般の方はそうもいきません。村内にお住まいの方でも同様です。
 役場にはHPでの情報発信について、私などが考えるのとは異なる基準があるのかもしれません。もし、そうであるならば、平素からその基準を明確にしておくべきでしょう。
 私は、震災の時の教訓をふまえ、村役場がHPでの情報発信をもっと積極的に行なう方向に転じてほしいと願っています。
 
 長くなりましたが、大事な報告だと考え、長々と記しました。

追記:この文章では、避難というものがしばしば「空振り」となることについて、やむを得ないことと書きましたが、念のために申し添えれば、昨今の災害頻発の中で、「空振りを恐れずに避難情報を出せ」という論調が増えていることには違和感を覚えています。避難というのは肉体的にも精神的にもへとへとになるものです。「空振り」が繰り返されれば、「避難勧告が出ても無視」ということになりかねません。それはとても恐ろしいことです。
この点については、別の機会に改めて議論したいと考えています。

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