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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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栄村のお米をいい値で売るために、どうするか

 「いまのコメ価格(JA出荷価格)では、とてもやっていけない。玄米1俵で2万円はほしい」という声をよく聞きます。
 他方、「復興計画」(骨子)では、
「集落等を基本単位とする米のブランド化と産直等の販売推進(米収入増による米作りへの生産意欲の向上)
ということが、「基本方針3 農業を軸に資源を活かした新たな産業振興」に書き込まれています。
 じつに切実な問題です。


* 栄村にも「いい値での販売」の実績はたくさんある

 お米を作っている農家1軒、1軒にお尋ねしていくと、精米価格で1kg500円以上(1俵では3万円以上になる)で売っているという事例はかなりあるようです。
 ただし、個々人が自分の知り合い等を対象に売られているケースが多く、数量は限られています。
 これを、どう考えるか(評価するか)が一つ、重要なポイントとなると思います。
 つまり、これを、「そんな小さな規模では話にならない。栄村の米全体をブランド化し、ドーンと売れるようにしなければ…」と考えるのか、それとも、個々の農家の小さな努力の積み重ねの上に「栄村の米のブランド化、いい値での販売の拡大」を展望していくのか、です。
 

* 各農家の小さな努力の積み重ねを、集落での取り組みに発展させていく

 私は、「栄村の米全体のブランド化」には異論ありませんが、「ドーンと売る」という考えには疑問を感じます。
 やはり、1軒、1軒の農家がやって来られている販売努力を大事にし、そこから教訓を学び、それを、集落を単位とする産直販売などに高めていくことが成功の道ではないかと思うのです。


* 交流から産直へ

 青倉集落を見ると、もう20数年前に遡(さかのぼ)る道祖神祭りでの交流で親しくなった都会の人たちにお米を産直販売し続けているケースが3軒ほどの農家で見られます。そのうちの1軒の場合、年間40俵くらいのようです。毎月20名ほどの方に送られています。
 この「交流から産直へ」というのが重要だと思いますね。
 ポイントは、「市場が価格を決める」のではなく、「人と人の付き合いが価格を決める」からです。後者の場合、コメをつくる人の努力、コメが作られる環境、その環境を保全する努力などがすべておコメの購入者に理解されるので、いわば「まともな価格」がつくのです。
 いま、震災復旧・復興の支援で栄村の一人一人と都会の人たちの交流が広がっています。ですから、お米の産直を広げるチャンスなのですね。
 もちろん、震災復興支援で栄村の農家と交流する人が増えれば自動的にお米の産直が増えるというわけではありません。さまざまな努力が必要です。
 

* 我が家で、交流会で、美味しいおコメを食べてもらおう

 まず、都会の人たちが村を訪れられた時、自分の家のおコメを食べてもらうことが大事です。ほぼ間違いなく、「このおコメ、美味しい!」という反応がかえってくるはずです。


* 販売のための作業を自らの仕事に

 都会の人が1ヶ月に食べるおコメの量は限られています。夫婦2人の世帯であれば、自宅で食べられるお米の量は1ヶ月5kg程度、年間で1俵(60kg)というのが現在では平均的です。          
 しかも、都会の家ではお米を長期にわたって低温で保管しておくことは困難です   、
ので、村で低温保存している玄米を、毎月、 5kgずつ精米して送ってあげることが必要になります。


畦ごはん(稲刈り交流会の後、畦でご飯を炊き食べるとき、「栄村のお米ファン」誕生間違いなし!)

 これは相手が1軒だけであればさほど大変な作業ではないかもしれませんが、5軒、10軒となってくれば、けっして楽な作業ではありません。
 でも、これが大事なのです。
 毎月、毎月、購入者に何らかのお便り(自筆の手紙、あるいは印刷したお便り)を届けることもしなければならないでしょうから、お相手1軒あたり少なくとも毎月1〜2時間くらいの作業が必要でしょう。年間では計12〜24時間の作業となり、これを時給計算すると時給800円として9,600〜19,200円にもなります。1俵3万円で売れたとしても、9,600〜19,200円の販売経費がかかるわけですが、それは自分自身に対して支払われるわけですから、精米販売での収入1俵3万円が減るわけではありません。
 逆にいうと、この販売のための仕事をJAなどに任せると、経費をどんどん引かれてしまい、農家の手取りが減るわけです。


* グループから集落での取り組みへ
 私自身、いまからもう5年前になりますが、青倉受託作業班の話が中日新聞と東京新聞に掲載されたことからお米の注文がどんどん来て、その発送作業を担当したことがありますが、産直の対象が10軒、15軒と増えてくると、精米・袋詰め・発送の作業は大変になってきます。注文が日々、パラパラと入って来るのに対応して作業していると、毎日、米発送の作業を細々とやらなければならないので、大変になってしまいました。
 そこで改善したことは、まず、毎月の発送日を決めました。毎月25日です。
 つぎに、お米の精米・袋詰め・発送の作業を“仕事”として有給化し、作業をする人を雇いました。約60軒くらいの購入者がおられますが、1ヶ月当たり3〜4日の作業量になります。時給800円として、19,200〜25,600円の経費になりますが、60軒(平均5kg)×2,500円とすると、販売代金は15万円ですので、経費を除いても1俵あたり25,000円前後になります。もちろん、低温保存の経費等も差し引かなければなりませんが、とにかく1俵あたり3万円のおカネが自分のところに入り、そこから自分に支払う作業賃や自分の家での諸経費を出すのですから、十分にやっていけるはずです。
 こういう取り組みを、個人からグループへ、そして集落単位に広げ、精米や発送の作業を共同作業としてやっていくようにすれば、規模も大きくしておくことができます。


* いちばん大事なことは生産だけでなく、販売を農家の仕事とすること

 ここまでに書いてきたことは、あくまでも骨組み(粗筋(あらすじ))のような話ですので、実際に産直をやる場合のことを細かに考えていけば、もっともっと厄介な話も出てきて、一筋縄ではいかないと思いますが、そこで諦(あきら)めたり、挫(くじ)けたりしないでほしいのです。
 いちばん大事なことは、農家の仕事をおコメの生産だけに限っていると、儲けを流通を担う業者に持っていかれる、逆に、農家が生産のみならず、販売も手掛けることによって、正当な価格、収入を実現することができるということです。これが「農業の6次産業化」と呼ばれていることの最も基本的かつ大事な意味なのです。


* それぞれのおコメの物語をつくろう(=ブランド化)

 先にも書いたように、支援や交流で村(みなさんの家・集落)を訪れた人におコメを食べていただき、その美味しさを実際に味わってもらうことがいちばん重要ですが、それだけではありません。
 やはり、「ブランド化」が必要です。
 でも、「ブランド化」って、いったい、どういうことなのでしょうか。
 なにか格好いい名前を付けて、宣伝することなのでしょうか?
 そうではないと思います。
 どんな環境で作られているのか、どんな人が作っているのか――こういうことを大事にし、それを多くの人たちに知らせていくことが本当のブランド化に通じていくのです。
 そうすると、エノキの場合の「大庭(おおば)君家(くんち)のえのき茸」というようなブランドや、おコメの場合の「青倉米」というようなブランドが生まれてくるのです。
 こういうことに取り組んでいくのが、復興(−集落の復興・再生)だと思うのです。

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