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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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栄村復興への歩みNo.300

栄村の近未来図を描いてみる

 

 みなさま。
 新年おめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
 2017年冒頭、「栄村復興への歩み」は第300号を迎えるにいたりました。6年前の震災当日から発行した「栄村の状況」を引き継いで2011年4月13日に第1号を発行して以来、早や5年9か月の歳月が経ちましたが、発行当初にはこれが6年近くも続き、300号を迎えるなどということは想像もしませんでした。これも、みなさまにご愛読いただいているからこそのことと感謝しております。これからも、よろしくお付き合いお願い申し上げます。


 さて、今年の「3月12日」は満6年目。メディアなどの関心も薄らぎ、「栄村」が語られることも少なくなるかと思われます。「栄村の地震」が次にそれなりに大きく取り上げられるのは「10周年」の時になるのではないでしょうか。
 それまでの4〜5年間、「10周年」の日に「栄村はこんなふうに復興し、元気にやっています」と胸をはって誇れるような村づくりを進めていけるといいなあ、と思います。
 そんなわけで、300号で新年第1号の今回は、タイトルに掲げたように「栄村の近未来図」を私なりに思い描いてみたいと考えました。文章が多いですが、写真は別冊でお楽しみください。

 


(元旦にいただいた年賀状)


ある若者から聞いた1つの話
 年末のある日、私は栄村の観光に携わる一人の若者(以下、「Aさん」とします)を訪ねました。

 

   「リピーターが多いんです、モニターツアーのお客さんの。でも、

    宿泊施設に直接連絡されても対応できないんで…。だから、オ

    レ、頑張ろうと思うんです。」

 

 この2〜3年の間、振興公社の幹部らに何度問いかけてもいっこうに回答を得られなかったことへの答えが思わぬところで返ってきたのです。
 「モニターツアー」とは、あの「3億円事業」(「生涯現役事業」)の一環として、栄村を旅する企画をつくり、JTBなどを仲介役としてお客さまを募ったものです(旅行費は無料)。2014年始めあたりから数度にわたって開催されたと記憶しています。「モニターツアー」はそれ自体が目的(目標)ではなく、栄村の新しい観光プランと新しいお客さまを開拓することが狙いでした。
 私だけではありません。多くの人が、「生涯現役事業報告会」や「復興推進委員会」、さらには議会で、「モニターツアーの実施からどういう成果が生まれているのか?」と質問し続けてきました。それに対して、公社理事長(当時の副村長)や事務局長(現・役場商工観光課長)からは、「すぐに成果が出るものではない」という類の答弁しか返ってきませんでした。
しかし、じつは“成果”はささやかなものかもしれないが、確実に生まれていたのですね。そのことを教えてくれるのが上に紹介したAさんの言葉です。

 

● “リピーター1万人計画”をスタート!
 Aさんの心の中に熱い想いが宿っているのですから、栄村にリピーターをどんどん受け入れる動きがスタートしたんだと言ってもよいと思います。
 みなさん、Aさんの想いに是非ご賛同ください。次のような想いを持つ人が名乗り出てくれることが必要でしょう。
“賛同”の波が広がるのには、3つの要素があると思われます。
    イ) リピーターになってくれる可能性がある人を一人、

     知っている。私が声をかけてみましょう。
    ロ) リピーターを増やすには、「栄村に行ってみたいな」

     と思ってもらう旅企画が必要でしょう。私は旅企画を

     作ってみますよ。
    ハ) いい旅をしていただくには、やっぱりガイドが必要

     だよね。私、年に2〜3回程度だったら、ガイドします

     よ。車も用意してね。
 一人一人がこの3つのことをすべてやらなければならないわけではありません。どれか1つをやってみようというだけで充分。「この指、とまれ!」でどんどんAさんと行動を共にしましょう。もちろん私も参加します。
 こういう想いを共有する人が二人、三人と出てくれば、1つの運動になります。そう、“リピーター1万人計画”運動のスタートです。
 おカネの話をして恐縮ですが、リピーターお一人が宿泊代を含めて1万円を村で使って下されば、1万×1万=1億円です。いま、課題となっている振興公社の再建も、こういう“夢”の中で考えていくことが必要ですね。
 ところで、1万人という数字、雲をつかむような数字でしょうか? 私はそんなことはないのではないかと思います。1組で2〜30人というグループもおられますし、子どものキャンプや大学生の合宿であれば、参加者個々のメンバーは入れ替わったとしても、その団体・企画のリピートを実現すればよいのです。「リピーター1万人」というのは、現実に照らせば、ひょっとすると小さすぎる“夢”なのかもしれません。
 大事なことは、「リピーターの人が栄村に来てくれた」という情報が1ケ所に集中され、「只今、本年のリピーター〇人です」という情報が村全体でたえず共有されているようにすることです。

 

● 岸幸一さんの画期的な仕事を引き継ごう
 ところで、昨秋以来、「『復興への歩み』で紹介しなければ」とずっと思いながら、果たせずにいたことが一つあります。昨秋11月に栄村を去った地域おこし協力隊の岸幸一さんが昨年の9月から11月初旬にかけて苗場山と鳥甲山の登山客を対象に実施された「無料の送迎サービス」です。下写真が鳥甲山ムジナ平登山口に掲示された案内。

 


 岸さんの報告によれば、82組・156名の人が利用されたとのこと(「広報さかえ」12月号掲載の岸さんの手記より)。
秋山林道の屋敷登山口で一人の登山客と出会ったときのことが思い出されます。その人はちょうど鳥甲山から下りてこられたところ。「これからムジナ平まで歩かれるのですか?」とお尋ねすると、「ええ、そのつもりだったんですが、ほら、これ。無料送迎してくれるというんで、たった今、電話したところです。迎えに来て下さるそうです」と満面の笑みを浮かべながら答えてくださいました。
 屋敷〜ムジナ平間、林道を歩いたら優に1時間以上かかります。上に紹介した人の喜びの大きさは容易に想像できます。
また、苗場山の場合、このサービスによって、湯沢側から登った人の小赤沢への下山率が大きく伸び、秋山郷の温泉に浸かるなどの観光需要が増えます。

 

 

 先に掲載の写真を見ると、実施日は計45日。おそらく申込みが殺到する日と1件の申込も無い日とがあったことでしょう。忍耐とズクを要する仕事です。秋山郷の観光について知る人であれば、「こんなサービスがあるといいんだが…」と思いながら、これまで実現できてこなかった重要な仕事だということがすぐに理解できるでしょう。協力隊という立場にあったからこそ出来た仕事という側面もありますが、今年の秋、この事業を私たちが引き継ぐことができるかどうか、問われています。
 新協力隊員が担ってくれるのもいいですが、秋山在住の人が数名協力しあえば45日分の半分くらいは出来るのではないでしょうか。私だって、10月は3〜4日に1回くらいの割りで秋山に行きますから、数日分の協力参加は不可能ではありません。
 (この項の最後に一言。「岸さんという人はどうして途中で去ったの?」なんて、「責任追及」的なことを言う人がいますが、「わかっていないなあ」というのが私の感想です。岸さんの偉業に言及することもなく、「途中で去った」なんてことだけを追及する、そんな歪んだ感性が岸さんを追いやったと考えるべきではないかと、私は思っています。)

 

“攻め”の企画が溢れる栄村にはお客さまがどんどんやって来る!

● 直売所「かたくり」の好成績が教えてくれること
 この1年半、お客さまが基本的に右肩上がりで増えているところがありますね。
 そうです、栄村農産物直売所「かたくり」です。
 右肩上がりをもたらしている要因は何でしょうか。
 接客サービスの良さ*など、好評の理由はたくさんありますが、最大の要因は品物の種類・数が増えていることです。
    * 「ここの直売所は他所(よそ)と違うね。他所は『売っ

     てあげる』という感じがするけれど、ここは『ありが

     とうございます!』という感じ」というお客さまから

     の声が数多く届いています。

 

「あっ! わらびだ」と声をあげるお客さんも(1月2日撮影)

 

この季節はお餅が大人気。とくに2種類を味わえる「ミックス」が好評


 “買うもの”があまりなければお客さまが少ししか来ないのは当然です。お客さまの多くは、「ドライブの途中に立ち寄る。いいものがあれば買ってみよう」、「他所では手に入りにくいものがあれば買っていこう」ということで、店の中に入り、ぐるっと一(ひと)回りされます。品物の種類が多ければ、当然、お買い上げ点数と金額が上がります。
 店長さん、出荷運営組合が最も力を入れていることは、切れ目なく、いい品物が入ってくるように農家さんに働きかけることです*。
    *「津南の農家の出荷物が多い」と難癖をつける村幹部が

     いますが、わかっていないですね。出荷者の多くは暮ら

     しの面でも栄村と一体感をもつ地域の人たち。そして、

     生産規模が大きい津南の農家さんが出荷してくれること

     で、栄村のかあちゃんたちが小規模生産で出荷するもの

     も売れるチャンスが創り出されているのです。

 

● 観光企画をふんだんにつくる
 振興公社は大赤字で苦戦していますが、その公社の過去3年間の「営業報告」を見ると、プラスの要因も発見することができます。総体としては入込客数が減っていても、「お客さまが増えた」という月がわずかながらあるのです。
 その客数増加の原因を見ると、ほぼ必ず、そこには“企画”があるのです。ただ、残念なことは、その“企画”のほとんどが栄村側で企画したものではなく、他所で企画されたものだということです。
 「“企画”のないところにお客さまはやって来ない」と言い切っても間違いではありません。
 飯山市に「森の家」というのがありますね。信越トレイルの拠点にもなっているところです。ご存知の方も多いかと思いますが、「森の家」は1年365日毎日、必ず何かの〈遊び企画〉を用意しています。冬であれば、「森の家」近くのブナ林にスノーシューを履いて出かけるというような遊びを企画しています。地元の人では考えつきもしなかったような企画ですが、TVでも紹介されるようになり、人気うなぎ登りのようです。

 

● 「鶏が先か、卵が先か」のジレンマをどう乗り越える?
 ここで、一つのジレンマにぶつかります。
 「人手がないから、いくら企画を考えても、実行できないよ」という意見。「いや、いや、企画がないからお客が来ない。お客が来ないから、観光が人手を確保できる産業にならないんだよ」という意見。
 「鶏(にわとり)が先か、卵が先か」という有名なジレンマと同じ問題です。
 このジレンマに対して、「こうすれば問題は解決できる」というものはありません。
 まず一人から始め、とにかく企画を打ち出す、その企画の実施に必要な人手をなんとか確保する。その小さな成功を踏み台として、また次の一歩に踏み出す。もちろん、「お客さまを一人も確保できなかった」というケースも出てくるでしょう。でも、そこでへこたれはしない。
 そういう地道なことの繰り返しが道を拓いていくのだと思います。

 

● 驚いたSOUPの冬企画
 SOUP(スープ)(信州アウトドアプロジェクト、事務所は「トマトの国」のそば)の新年メッセージを見て、驚きました。
 冬の企画が山盛りなのです。並べてみましょう。
    ♬冬のやんどもキャンプ?
     スキーキャンプ 2月10日〜12日 定員15名
     雪あそびキャンプ 3月21日〜23日 定員15名
   〈冬のイベント〉
     どうろく神 1月14日〜15日 定員10名
     冬の手前味噌づくり×雪のフットパス

     2月4日〜5日 定員8名
     雪あそび楽宿 2月8日〜10日 定員15名
     雪塊〜Yukidama〜 2月17日〜19日 定員8名
     雪板〜Yuki Ita〜

 企画内容の詳しい紹介は省きますが、数年前のSOUPの冬企画は、上の〈冬のイベント〉の△鉢イ世韻世辰燭茲Δ傍憶しています。また、「やんども」の2つの新企画の背景には昨夏、スキー場をキャンプ地として実施された「やんどもキャンプ」の成功があると思われます。
 こういう言い方をすると失礼になるかと思いますが、SOUPはそんなに経営体力が大きくはなく、人手も多くはない事業体だと思います。
 まさに「鶏が先か、卵が先か」のジレンマを抱えながら、積極姿勢を最大の武器として、こういう成長を実現されているのではないでしょうか。

 

貝立山への雪山トレッキング

 

芽は出てきている。相互に手をつないで、複合作用を起こし、夢を広げていこう!
 こうして見てくると、やる気満々の若者、登山客のニーズ(求め)に応じる企画の成功、人気スポットになりつつある直売所、企画力が溢れ、着実に発展する若者の事業体というように、〈芽〉は確実に出てきています。
 これらが相互に手をつないでいけば、そこに複合作用が生じ、1の力が2にも3にもなっていくでしょう。
 世の中にはいろんなヒット商品(モノだけでなく、音楽やアニメなども含めて)がありますが、そこではモノやスターの存在が不可欠であると同時に、なによりも優れたプロデューサーが決定的な役割を果たしています。栄村にいま必要なのはこのプロデューサーなのではないでしょうか。そして、それを担う人材は若者の中にいると思うのです。私のような歳が高くなった者の役割は、そういう若者が気持ちよく活躍できる環境を整えていくことなのだと思います。
 栄村が「震災10周年」を迎える4年後、村の様相は大きく変わっているでしょう。いまの若者が村の中心にドーンと位置し、そして、高齢者、壮年者も若者と一体となって楽しい栄村を実現している。
 今年2017年をそういう栄村のスタートの年にしたいなあ、と思います。

 

<後記>
 今年の正月はゆっくりさせていただきました。
 今号は記念すべき第300号(「栄村の状況」からの通算では334号)ですので、別冊として写真アルバム「栄村の四季を楽しむ」と編集しました。ネットのブログでは紹介したものの、「復興への歩み」では未紹介の写真を15点選びました。お楽しみいただければ幸いです。
 お気に入りのものがありましたら、壁掛け用写真の頒布などもさせていただきます。


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