3・12地震で最も被害が激しかった青倉集落。いま、集落内の各所で家の再建が進んでいます。
青倉で家を再建するうえで最も重大な問題は地盤が弱いこと、これへの対策が最重要課題となります。
* 青倉の地盤が弱いゾーンの地層はどうなっているのか 先日8日に行われた信大山岳科学総合研究所の報告会で配布された「報告書」には、「地中レーダーを用いた調査」の「まとめ」として、つぎのような記述があります。
「青倉地区では、旧国道を含む、北東−南西方向の領域に軟弱層の存在が予想される。この軟弱層の成因は明らかでない。(中略)青倉地区における家屋の被害は、軟弱層の分布予想域に集中している。」「今後ボーリングなどによる確認作業を行うことが望ましい。」
「軟弱層」の存在は住民が震災後数か月目から経験的に認識してきたことであり、いま頃になって「ボーリングによる確認作業を」などと言っているのは、なんとものんびりした話です。
地元の被災者はすでに1年前の昨年7月頃の段階で自宅再建候補地について民間業者にボーリングを依頼し、調査結果の報告を受けています。そこには、つぎのように書かれています。
「崩土(ほうど)によって形成された地形と思われ、崩土厚は不明であるが石及び固結土(こけつど)を多く含み、各測点においてバラツキが見られる。」
つまり、ボーリングすると、1mくらいの深さで石などにぶつかる地点と、5mほどの深さになっても固い石や岩盤には突き当らない地点とが、1つの敷地内に混在しているわけです。そして、報告は、「何らかの補強対策が必要であるが、石及び固結土が障害となり杭状地盤補強は困難であると思われる」としています。
* 杭を74本打ち込んで地盤補強 私の知人が、地震前の自宅のそばの田んぼを宅地に転換して、新築による自宅再建を始めています。上記のようなボーリング調査結果が出た土地です。
知人は耐雪型住宅で自宅再建に取り組んでいますが、その地盤補強工事、基礎工事の様子を撮影させてもらっていますので、それを紹介します。
杭を打ち込むための作業 丸く白く見える部分が杭が打ち込まれた箇所
業者さんの話では、上に紹介した報告書にあったとおり、杭が大きな固い石とぶつかるケースがあり、杭打ち作業が困難をきわめたそうです。
上写真の中央に見える大きな石はその過程で掘り出されたものです。
ここまでの写真は6月29日撮影です。
* 基礎工事(1) この杭打ち作業の後、杭が打たれた箇所の上部にコンクリがはられ、さらにそれが乾くと、その上に「墨付け」するという作業が行われました。
杭の周りの土を除去(1日) 新しい砂利土を入れる(2日)
杭が打ち込まれた部分にコンクリがはられ、そこに「墨付け」が行われた(3日)
* 基礎工事(2) この杭上にはられたコンクリ部分に、「墨付け」にしたがって建物の基礎がつくられていきます。
「墨付け」にしたがって鉄筋が組まれた(7日)
型枠が入れられ、鉄筋のいちばん下の部分に生コンが入れられ、きれいにならされた(左11日、右13日)
さらに鉄筋の高さまで型枠がはめこまれていく(16日)
以上の工程をご覧いただいて、地盤補強−基礎工事がいかに大変なものか、実感していただけたのではないかと思います。
この種のレベルの地盤補強−基礎工事は、軟弱な地層の場所では、阪神大震災以降、標準化しつつあるそうです。人は「住みたいところに住める」ようでいて、しかし、自然の地盤については自分で選択する自由はありません。青倉−栄村のような山間地ではとくにそうです。
こうした膨大な経費を要する地盤補強(改良)を個々人の負担に委ねていていいものか、今後の震災対策では国や県のレベルでも真剣に検討する必要があると思います。
次号は20日(金)発行とします。
(了)