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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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栄村復興への歩みNo.313

 

村民の力と技で、栄村の振興を進める
 写真は「トマトの国」の前の広場で愛湯会のみなさんが草刈りをする様子です。
 この写真に写っているのは7名だけですが、前号でも一言ご紹介したとおり、10名で午前8時半から約2時間半、広場をいっきにきれいにしました。撮影は草刈り終盤で、反対側から撮ると、下のような様子です。

 


 北野天満温泉では、やはり7月上旬、温泉の前の春にカタクリが群生する斜面がきれいに草刈りされました(下に写真)。北野集落の斉藤幸一さんにお聞きすると、こちらも10名前後の人たちが参加されたそうです。

 

 

下の写真は昨年4月のカタクリ開花期に北野天満温泉前の斜面で撮影したもの。

 


 この斜面の草を伸び放題にしておくと、カタクリは咲かなくなってしまいます。地元住民の草刈りあればこそのカタクリ群生なのです。


 7月に入ると草が勢いよく伸び、素敵な風景が台無しになるところがたくさんあります。
 草刈りをすると、栄村の景観資源が見事に蘇り、栄村の魅力が高まります。

 北野天満温泉に集う人たちは秋にもう一回、草刈りをされる予定だとお聞きしました。

 

もう一つの事例
 7月31日、野々海から貝立山麓を通り、スキー場に下ってきた時、ある箇所の変化に気づきました(下写真、松尾が31日午前11時すぎに撮影)。

 


 スキー場中段のリフト乗り換え地点のそばに今春、景観説明看板が設置されたところです。
 私は7月26日から毎日のようにスキー場の頂上まで通っていますが、この場所が草とボヤに覆われてしまっているのを見て、「これでは看板を設置した意味がなくなる」と危機感を抱いていました。
 31日夜、秋山の地域おこし協力隊員の坪内大地さんがフェイスブックで「展望台をチェーンソーでボヤ切りしてきました」と写真付きで紹介され、「えっ!坪内さんがやってくれたんだ」と喜びました。

 

私の挑戦

 

 

 上の写真は今年5月8日、まだ雪が残るゲレンデを登って、スキー場頂上で撮影したカタクリの群生の様子です。
 薄紫色やピンク色の花が残雪とのコントラストも鮮やかに咲き誇っています。観光協会には「スキー場のカタクリはもう見られますか?」という問い合わせ電話がかなり来るそうです。
 ただ、この写真に見られるカタクリ開花の様子、よく見ると、ひとつ難点があります。
 「かぶつ」(ススキや低木類の切り株)が目立ち、カタクリの花が見えづらいのです。写真を見た村外の人からの指摘で、私も意識するようになりました。
 5月12日にはカタクリに覆いかぶさる枯葉などを取り除いて撮影してみましたが、やはりダメです。下の写真ですが、「かぶつ」が凄すぎます。

 


 そこで、「7月頃に切り株を残さない草刈りをし、さらに秋にも草刈りして、来春、カタクリの花々が浮き上がるように見えるかどうか、試してみたい」と思うに至りました。
 スキー場係の許可を得て、7月27日からスキー場頂上の草刈りに挑戦しています。29日には友人の応援を得て、いっきに進みましたが、1日に2時間程度の作業ですので、まだ全体の半分程度です。
 いま繁っているススキなどを刈るだけでなく、古い“かぶつ”も強引に切り取っていきますので、草刈り機は悲鳴をあげ、私も疲れますが、やり遂げたいと決意しています。来春、どんな結果が見られるか。それを楽しみに頑張ります。草刈り現場の様子は次の写真をご覧ください。

 


7月26日の様子

 

7月31日午前の様子

 

振興公社の再建や、村の観光振興の方向性が見えてくる
 村はこの半年余り、振興公社の問題に揺れています。「森川村長の村政で栄村はどうなるのか?」という不安感も聞こえてきます。
 先日、「振興公社への出捐金5千万円を議会が否決したため、公社の先行きに不安を抱いた職員が次々とやめてしまった。なのに、議員からは反省の声も聞こえてこない」という発言を聞きました。しかし、この発言はおかしい。「公社が欲しいと言うおカネを黙って出すのが議会の仕事」なんてはずがありません。
 他方、森川氏は、6月議会での答弁を聞くと、「昨年の時点では公社には不要な人材が多かった。辞めた人等で赤字が削減できた」という認識を持っているようです。
 森川氏支持の人が公社職員の減少をめぐって議員を非難すると思いきや、森川氏は職員数減少を高く評価する。なにか混乱していますね。
 こういう混乱の底には、振興公社の問題を考え、議論する軸が定まっていないという問題があると思われます。

 どう考えたら、いいのでしょうか。
 いくら赤字が減っても職員数が激減し、職員が過重労働状態になるようでは、公社はよくなりません。また、議員は一般の村民のみなさんよりも情報に接する機会が多いですが、その議員でさえも、公社の経営状況を詳しく知ることができません。多くの村民が共通入浴券問題を一つの焦点としながら、公社の行く末を案じています。
 前号でも少し提案しましたが、情報を徹底的にオープンにし、村民と公社職員が一緒になって、ワイワイガヤガヤ、公社のあり方を議論するのがいちばんいいのだと思います。1頁で紹介した「トマトの国」や北野天満温泉の草刈りは、温泉(公社)を愛する村民と公社職員が率直に声を掛け合う中で出来たことです。
 公社の運営体制としては、理事などが村民の知らないところで非常に偏った構成で選ばれるのではなく、村民と公社(職員)が協働する中で、「あんた、この施設の運営にみんなの声が反映するようにしてくれや」ということで、地域の住民を代表するような人が理事会に送り込まれることが最も望ましいと思います。
 村民にはさまざまな力、技があります。今号のここまでに紹介してきた事例からもそのことが分かります。観光資源としての景観も村民の力と技で磨かれていきます。
 村民の力と技で栄村の振興を進める。それがいまいちばん大事なことなのだと思います。

 


「観光の振興」とは言うけれど・・・ その具体的な目標は、そして方法は何なのか?

 村づくり、産業づくり、雇用の場づくりという話になると、決まって登場するのが「観光の振興」です。
 でも、ある人から、
      「『観光の振興』って言うけれど、どういうこと? わかるかい?
       たとえば『民宿』って言ったって、もう高齢でできなくなって
       いる人も多いでしょう」
と質(ただ)されました。
 「まったくその通りです」とお答えするしかないですね。
 しかし、「わからない」では済まないので、何点か、大事だと思われることを書きます。一緒にお考えください。

“観光する人の願い”と、“村の側の願い”
 当たり前のことなのですが、“観光する人の願い”と“村の側の願い”は一致するところもありますが、異なっている点が多いことも事実です。
 “村の側の願い”は一言でいえば、「栄村を観光に訪れる人が増え、村にたくさんのおカネを落としてほしい」ということに尽きると言ってよいでしょう。
 しかし、それもこれも、観光客というお客さまの存在があってこそのことです。
 〈観光する人は栄村に何を望み、どんな不満を持っておられるか?〉―― このことを栄村は真剣に考えたことはあるでしょうか? 意外と(?)ほとんどないのではないでしょうか。

「“ちょっと休憩”で、お茶を飲むところがない」、「情報がない」・・・
 みなさんは、どこかへ観光に出かける時、お弁当やお茶などをあらかじめ作ってお出かけになりますか?
 〈眺めのいいところで手作りのお弁当を家族で広げて〉っていうのも素敵ですね。
 でも、とくに泊りがけの旅だと、「昼食はどこかのお店で」ということになる場合が多いですね。また、車の運転を担当する人は、「2〜3時間走ったら、ちょっとひと休憩。喫茶店のようなところでコーヒーを一杯飲みたいなあ」なんて思いますよね。
 さて、〈栄村の観光ポイント・秘境の秋山郷〉へ観光客として出かけてみます。
昼食を食べられるお店はどこにあるのでしょうか?
 基本的には「ない」と言わざるをえません。
 「秋山に行ってきたけれど、食べるところ、お茶を飲めるところがなかった。もう二度と行きたくない」――宿泊客からこう言われたという宿泊施設関係者の話を何件も私は聞いています。いや、そもそも、私自身が「復興への歩み」の配達で秋山に出かける日は、弁当を持ち、休憩時のおやつ・飲み物を「下(しも)」で用意してから秋山に向かいます。昨春、秋山での配達を始めた頃、丸一日、秋山を走り回り、夕刻に「小腹が空いたなあ」と感じ、「菓子パンでもあれば食べたいなあ」と思って一軒だけあるお店に入りましたが、その類のものはなく、かろうじてあった「ナビスコ・リッツ」を購入し、半箱ほど食べたという苦い経験があるからです。
  (記事をあまり長くしないため、今回は「情報がない」という点は省略します。)

村の側からみたら、この不満への対処はどういう問題を突き出すか?
 昨年秋の観光シーズンにこういう観光客の不満に対処する動きが2つ、出てきました。
 いずれも「復興への歩み」で紹介しましたが、1つは小赤沢集落の福原秀樹さんが、「ドライブイン苗場」を「お休み処苗場」としてリニューアル・オープンされたこと。もう1つは、地域おこし協力隊の木村敦子さんがその「苗場」の隣りの施設を借り受けて、お茶を無料サービスする「じょんのびお茶の間」を約2ヶ月間、開設されたことです(下写真)。



 とても画期的な取り組みです。
 しかし、残念ながら、いずれも経営(ビジネス)として成り立つものにはなっていません。
 福原秀樹さんの場合は、もう歳が高くなっておられていて、そんなに多額の稼ぎを必要とされていないこと、冬は除雪の仕事で少々稼げるということで、はじめてチャレンジできたというのが真相だと思います。
 木村敦子さんの場合は、「地域おこし協力隊員」として給料が支払われています。また、諸経費も「地域おこし協力隊」経費として村から支出してもらえます(その財源は国から交付されています)。
 木村さんは、もともと、2シーズン、雄川閣でアルバイトしたことが秋山移住のきっかけで、「秋山でカフェみたいなものをやりたい」と考えられて来られたようです。
 では、木村さんが「協力隊」の任期・最大3年を終えられた時、ご自分の生計が成り立つ形でこういうことをできるかと言えば、現状ではきわめて難しいでしょう。

打開すべき課題が見えてくる
 「やっぱり、観光振興なんて言ったって、難しいよ」ということでしょうか?
 私はそうは思いません。
 勝手ですが、木村さんの場合を1つの試論対象として考えさせていただきます。最終的には、「カフェ」を開業し、年間を通して顧客を確保し、1個のビジネスとして成り立つようにすることを目標とします。そういうことが可能でなければ、若者が秋山で暮らし、子育てするということは成り立ちません。
 しかし、一朝一夕(いっちょういっせき)にできることではありません。
 〈段階を踏む〉ということと、〈秋山流の独特の経営法を編み出す〉ということ、この2つのことが必要だと思います。

〈段階を踏む〉
 3〜5年計画が必要でしょうね。
 幸いなことに木村さんの場合、今年を含めてあと2年間、「地域おこし協力隊」として生計面の支えがあります。村には、木村さんが「カフェ」の準備・運営に最大限のエネルギーを注ぎ込むことを認めていただきたいと思います。
 木村さんご自身だけの努力だけでは、どうにもならないこともあります。
 たとえば、栄村を観光しようと思う人が、栄村の公式ホームページ、あるいは栄村秋山郷観光協会のホームページを開いたとします。すると、真っ先に「秋山郷で24歳の女性がカフェを開業中」という記事が目に飛び込んでくる。そういうふうになっていれば、木村さんのカフェへの入り込み客数はいっきに増えますね。
 ところが、「公平性」を重んじる栄村ホームページはこういう特定の個人(の事業)をクローズアップするような記事を掲載していません。村民のみなさんにお尋ねします。そういう記事が村のホームページに掲載されたら、あなたは「不公平だ」と言って怒りますか? そんな偏狭な心の持ち主はおられないと私は確信します。
 こういう支援は、ほとんどおカネを必要としません。発想法・考え方が大事なのです。

「秋山流の独特の経営法」とは
 秋山は冬の観光も充分に可能です。村の側からの情報の提示のしかた次第です。
 とは言っても、やはり秋の紅葉期と比べれば、冬は少ないでしょうね。
 男性の場合、「冬は除雪で稼ぐ」という道もありますが、女性の木村さんには厳しいですね。しかし、今冬、木村さんは五宝木の福原勇一さんから藁草履作りを習われたとか。「藁草履作って、いくら稼げるん?」と思う人もおられるかもしれませんが、そういうものが人気を呼ぶのがいまの時代なんです。
 これはほんの一例。小赤沢の保存民家で、冬、〈地炉で火を起こして暖まる〉なんてことを望む観光客もきっとおられますね。予約が入れば、木村さんにそのお世話をしてもらう契約を村(管理部署の教育委員会)が木村さんと結ぶ。そういうのもありだと思います。
 〈百姓〉という言葉があるように、〈百の仕事に取り組む〉ことが「秋山流の独特の経営法」です。そういう事例は全国各地をみれば、いろいろと参考になるものがあります。

一人ひとりの想いを活かし、観光振興の計画へ
 木村敦子さん。ここまで勝手に話題にしてご免なさい。
 私は〈観光振興〉というのは、こういうことを考え、具体化・実践していくことだと思うのです。秀樹さんや木村さんのように「こういうことに取り組むぞ」という人がいたら、村が全力で支援する。そして、一つひとつは小さな試みの実践と固く結びつけたところで、秋山郷だったら秋山郷の年間(及び季節別)の入り込み客数の目標値を具体的に考え、その実現にむかって村の観光振興の年次計画をつくっていくのです。
 こういうことをみんなでワーワー議論し合っていけば、力が湧き出てくると思います。

<後記>
 7〜8頁は写真もなく、文章の多い号になりましたが、議論が大事。ご容赦ください。
 

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