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栄村復興への歩み
2011年3月に震度6強の地震で被災した長野県栄村で暮らす松尾真のレポートを更新しています。

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中条川上流崩壊地点のいま

 30日朝、夜明けをまって中条川上流の崩壊地点に久しぶりに行ってきました。
 今年は雪消え後、1号崩壊地点の作業道の付け替え工事(3・12地震の後に土石流対策工事用につくられた作業道が道地盤の崩れで使用不能になったため)が行われていて、私は7月18日に状況を見に行っていますが、今回はそれ以来、約3ヶ月半ぶり。
 様子があまりにも変わっているのに驚きました。
 まず、全体像を紹介しましょう。



 これは、1号崩壊地の中を通り抜けて、2号崩壊地に向かう道の上(地震前の森集落の水道水の水源近く)から撮影したものです。
 上の写真に説明のための色つき線を入れたものが下の図です。



 緑色は、地震の後、土石流対策工事のための作業道としてつくられた道。赤色が現在、造成中の作業道。そして青色は、森集落の開田(かいでん)水路が今夏に壊れたため、いま、新しい仮設水路管を埋設しているところです(赤線の新作業道の造成で出た大きな石等が青線・緑線の部分に大量に落とされたことが、水路が壊れた原因と推定されている)。
 現在は、森水路工事が優先されていて、赤線で示した新作業道の造成工事は中断されています。2号崩壊地に向かう作業道につくられた森水路の升の写真を撮りました(下写真)ので、これで水路が埋設されている深度を知ることができると思います。




新作業道の様子
 新作業道建設は昨秋に着工されましたが、今春の雪消え後に再開。1号崩壊地の崩壊斜面を切って道をつくるという難工事です。
 

写真イ


写真ロ


写真ハ
 
 新作業道は写真イ、ロ、ハの順で建設が進んでいます。


写真ニ
 
 写真ニはイの先を右へ曲がり、ロの地点に進む地点で進行方向右手を見上げたもの。
                                
           
写真ホ
 
 写真ホはハの地点で右上を見上げたもの。
 

写真へ

 写真へは新作業道が造られている場所を旧作業道から見たもの。
 写真右上に見えるセメント吹付面の下が新作業道の通っているところです。
  
 新作業道は、旧作業道が崩壊斜面直下を抜けた地点で旧作業道に合流するようで、その地点のすぐ手前まですでに道が拓かれています。しかし、降雪が間近に迫る中、今季で完了できるのか、不安です。また、写真ニやホを見ると、斜面の吹付等の工事も必要となるでしょうから、完成は来年ということになるでしょう。
 この新作業道を必要としている工事、1号崩壊地の堆積土砂の中を流れる中条川の流路の変更、2号崩壊地手前での谷止工の建設等は確実に来年度に延期です。
 
 今年は幸いなことに大きな台風の栄村への接近はなく、中条地区の土石流被害に備えた避難行動はありませんでしたが、今回紹介した1号崩壊地の様子からして、不安定な状況がまだまだ続きます。
 また、森開田の水路の復旧工事はひとまず積雪前に完了するでしょうが、この記事の冒頭の写真に見られるように非常に不安定な状態にある1号崩壊地の中を通っているわけで、恒久的な水路の安定的確保が約束されたわけではありません。
 7月25日に開催された工事説明会でも県北信地方事務所林務課に要望しましたが、中条川上流を安定した状態にどのようにもっていくのか、より根本的な展望の提示が求められていると思います。

 

台風19号での避難と中条川の様子

 村内の方は村の告知放送でご存知だと思いますが、13日午後4時、台風19号接近にともない、森集落中条地区と秋山・屋敷集落2世帯に避難準備情報が発令されました。役場公式発表によれば、「中条地区6世帯14名、屋敷地区1世帯3名」が公民館に自主避難しました。中条地区はいうまでもなく中条川土石流への警戒ですが、屋敷は中津川の氾濫に対する警戒です。
 台風は14日未明に通過しましたが、「吹き返し」の雨で14日午前8時前に大雨警報が出たことから避難準備情報は継続、午後4時にようやく解除されました。
 結果としては、台風19号による被害は発生せず、いわゆる「空振り」ということになります。しかし、私は避難準備情報の発令と自主避難は適切な措置だったと考えます。
 役場の対応措置も13日朝に第1次警戒態勢に入り、避難準備情報発令と同時に第2次警戒態勢に入り、職員を公民館に配置し、随時、雨量情報を住民に伝えるなど、的確なものだったと思います。

「『空振り』を恐れずに」論をどう考えるか
 8月の広島土砂災害で多くの犠牲者が出たことを契機(けいき)として、「空振りを恐れずに、早めに避難勧告等を早めに出すべきだ」という論調が専門家・マスコミで盛んになっています。
 実際、今回の台風19号では多くの自治体で「早めの避難勧告」と見られる事例が多く見られました。20万人くらいを対象とするものもあったようです。
 ところが、実際に避難した人は少なかったようです。対象者のうち実際に避難した人は0.01%というケースもあったと聞きます。
 非常に難しい問題です。
 私は、「『空振り』を恐れずに」という言葉(考え)が独(ひと)り歩きすることに懸念(けねん)を抱いています。極端なことをいえば、「避難情報は出していましたよ」という「行政のアリバイ作り」にすらなりかねません。
 大事なことは、土砂災害などの災害発生危険箇所の存在、その危険性などについて、平素から行政と住民の間でどれだけ具体的な情報共有、コミュニケーションが行なわれているかということだと思います。住民自身が日頃から災害発生の危険性を具体的に理解していれば、避難勧告等は有効性を発揮します。中条地区や屋敷集落がいい例です。
 そして、避難が始まって以降の行政の対応も重要になります。今回、住民が自主避難した公民館には役場職員が駐在し、1時間毎に雨量等の情報が伝達されました。昨年の避難では「避難継続」「避難解除」という「結論」しか伝えられず、住民はイライラしたものでした。総務課長によれば、「8月27日の説明会で出た住民意見をふまえて対応した」とのことです。こういうコミュニケーションが大事なのだと思います。

中条川の様子



 上写真は14日昼前に中条橋上から撮影したものです。濁流が流れていますが、注目は写真中央に見える青倉集落・千本塚(せっぽうづか)から水路の水が落ちてくる箇所です。大きな石(岩)がいくつもあります。位置から見て上流から流れてきたというよりも、写真に見える崖から落ちた可能性が大きいと思います。昨年9月の土石流以降、上流の砂防えん堤で土砂の流れが遮断されたため、中条川下流では川岸の洗掘が激しく進行しています。河川改修工事が不可欠になっていると思いますが、所管の県は「河川改修には予算がつきにくい」と言って消極的です。
 17日に「信濃川水系北信圏域河川整備計画(原案)に関する公聴会」が開催されますので、意見を述べてきます。
 もう1枚、ご覧ください。



 15日午前、中条橋から上流側を撮影したものです。川の中にコンパネやブルーシートが散乱しています。砂防えん堤の工事現場から14日の雨で流出したもののようです。
 14日の雨量は里では30ミリくらいでしたが、山では連続雨量90ミリ以上が記録されています。
 山の雨量への注意が必要なことがわかります。

台風19号に伴う村の避難準備情報発令と自主避難について

 台風19号での中条地区等での避難について、お問い合わせなども受けました。以下、まず経過について報告します。

経過
 〈大型で非常に強い台風19号〉が14日未明に長野県内を通過しましたが、それに伴い、栄村役場は13日午前8時30分から第1次警戒態勢に入り、午後4時、森集落中条地区と秋山・屋敷集落の一部に避難準備情報を発令しました(これに伴い役場は第2次警戒態勢に入りました)。これは同日午後3時から開催された栄村災害警戒本部の第1回会議での決定に基づくものです。避難準備情報発令は村内告知放送されました。
(なお、役場は台風19号の日本接近に伴い、10日の段階で13日朝から第1次警戒態勢に入ることを決定していました。)
 中条地区では、事前に役場からの情報もあり、また、住民自身が平素から早めの避難を心がけていますので、「早めの夕飯を済ませて、午後6時に避難所の森公民館に入る」ということで行動しました。なお、高齢者3名については午後6時よりも早く、明るいうちに避難されました。
 村の災害警戒本部では14日午前6時13分に第2回、続いて午前8時に第3回の会議を行ないました。第3回の会議は、台風も通過したことから避難準備情報の解除を検討する予定でしたが、直前に長野地方気象台から大雨警報が出されたため、避難準備情報は継続されることとなりました。
 午後3時前、中条地区の住民は雨も小降りになったことから自主避難の解除で合意し、それぞれ帰宅しました。そして、災害警戒本部は午後3時30分から第4回会議を開き、雨が小降りになってきたこと、水位も下がり始めたことから、避難準備情報の解除を決定し、村内告知放送で全村に知らせました。
(以上の経緯については、避難準備情報解除後に桑原全利総務課長から取材したことと、自身の体験をまとめたものです)

つぎに今回の避難準備情報の発令と自主避難についての「総括」を記したいと思います。

適切だった判断
 結果としては栄村での雨量は少なかったわけですが、村が避難準備情報を発令したこと、住民が自主避難を行なったことは基本的に適切な判断だったと思います。
 災害に備える避難というものは往々(おうおう)にして、このように「空振り」に終わるものだと思います。
 また、避難準備情報や避難勧告・指示というものは、いったん発令すると、その解除の時期の選択が非常に難しいものだといえます。避難している者も避難が長時間にわたると疲れ、うんざりしてくるものです。だからこそ、解除のタイミングがいっそう難しくなります。
 今回の中条地区の住民の行動、役場の解除決定はともに適切であったと考えます。

改善された点
 今回の避難準備情報の発令をめぐっては、役場(災害警戒本部)の対応において、従来のそれとは異なる改善点がありました。
 従来ですと、避難している住民に対して情報の告知がほとんどなかったのですが、今回は1時間刻みで雨量等の情報が避難している住民に知らされました。大きな改善点です。桑原総務課長によれば、「8月27日の説明会(中条川土石流に関する住民説明会のこと)で出た住民の要望を受けて情報を出した」とのことです。
 また、避難所開設時から、森公民館には役場職員2名が泊まり込みで駐在し、また村長も公民館を訪れました。役場職員2名は若い人で、最後まで住民を気遣って懸命に働いてくださいました。(屋敷集落については、避難者が全員女性であったことから、秋山居住の女性職員が避難所に詰め、また秋山支所長は支所泊まり込みで対応されたとのことです。)

今後に備え、さらなる改善が求められる点
 以上に書いたことから、「すべてよかった」というわけではありません。改善すべき点があります。

 まず第1は、大雨が予想される時に避難を必要とする根本原因である中条川の土石流対策、とくに1号崩壊地における崩落土砂の堆積の対策について、村がもっと踏み込んで対応することです。
 中条川の土石流対策は県林務部及び建設部の所管ですが、だからといって、村の対応が基本的に受け身に終始していることは納得できません。
 1号崩壊地では、現在、昨冬期の積雪の影響などで使用困難となった工事用作業道の新規敷設工事が10月に入って始まったばかりです。現段階は新たな敷設箇所の立木伐採が行なわれているところです。
 ところで、この作業道敷設工事は7月に入札公告が行なわれたものの、応札業者がなく、再度の入札公告でようやく長野市の「株式会社キトウ」という施工業者が決まりました。このことを私は自宅に廻ってきた「回覧板」で知りました。その回覧文書は森区長さんと森農家組合長さんの連署で「森区民の皆様」宛てに出されたもので(9月29日付)、「株式会社キトウから連絡があった」と記されています。
 私は、本来は役場に告知の義務があると思います。
 また、私は「台風19号が近づく前に」と考えて、10日早朝に1号崩壊地の現場を訪れ、現況の撮影をしてきましたが、こういうことも本来は役場が行ない、随時、住民に情報連絡すべきものだと考えます。
 
 第2は、避難準備情報等の判断にあたって、中条川上流の山間部における雨量データをもっと重視すべきだということです。
 役場が今回、私たちにも告知された雨量データは「トマトの国」付近の工事現場に設置されている雨量計のものだったと思われます。しかし、中条川上流に位置する標高1000m近い山での雨量は「トマトの国」付近での雨量よりも多いはずです。実際、14日午後4時すぎに役場でお願いしてプリントしていただいた「ハザード・アイ観測データ[中条川上流]」というものでは、14日16時現在で、日雨量84弌∀続雨量最大91.5个箸覆辰討い泙后1号崩壊地に流れ込み、土石流を引き起こす要因となるのはこの山の雨量なのです。(参考までに付記すれば、この雨量観測地点の14日の最低気温は8℃、最高気温は11.8℃で、集落がある地点とは気象状況が大きく異なることがわかります)
 この点、よく検討していただきたいと思います。
(なお、この「ハザード・アイ観測データ」は誰でもネットから見られるとのことですが、自宅に帰ってアクセスを試みたものの、うまくアクセスできませんでした。もう一度、役場担当者にお尋ねし、再アクセスしたいと思います)
 
 第3は、今回のような避難準備情報発令時には、村のHPにおいて、随時、情報発信すべきだということです。
 栄村での避難準備情報の発令はただちにTVのテロップで流されました。その仕組みは、村が県北信地方事務所に発令を伝え、地方事務所から県庁に報告され、県庁がマスコミ発表するというものです。
 だから、栄村での避難準備情報発令は村外の方も知っておられます。心配して下さる方も多くおられます。そこで、「栄村はどうなっているか」と心配して下さる方はさらなる情報を求められるわけですが、栄村のHPには何も出ていません。
 避難者の近親者などであれば、携帯電話などで状況を尋ねることもできるでしょうが、一般の方はそうもいきません。村内にお住まいの方でも同様です。
 役場にはHPでの情報発信について、私などが考えるのとは異なる基準があるのかもしれません。もし、そうであるならば、平素からその基準を明確にしておくべきでしょう。
 私は、震災の時の教訓をふまえ、村役場がHPでの情報発信をもっと積極的に行なう方向に転じてほしいと願っています。
 
 長くなりましたが、大事な報告だと考え、長々と記しました。

追記:この文章では、避難というものがしばしば「空振り」となることについて、やむを得ないことと書きましたが、念のために申し添えれば、昨今の災害頻発の中で、「空振りを恐れずに避難情報を出せ」という論調が増えていることには違和感を覚えています。避難というのは肉体的にも精神的にもへとへとになるものです。「空振り」が繰り返されれば、「避難勧告が出ても無視」ということになりかねません。それはとても恐ろしいことです。
この点については、別の機会に改めて議論したいと考えています。

4日午後の強雨と中条川

 月岡集落で配達をしていた午後2時25分頃、降雨が始まり、たちまちのうちに強雨に。配達を中止し、室内作業に切り換え。中条では坂道全体を水が激しく流れ落ちてきている。
 午後5時頃、役場が村内放送。「午後2時頃から村内は強い雨が降っているが、警報は出ていない。中条川では2時10分から2時間で65个旅澑を観測。JR飯山線は15時40分から戸狩野沢温泉駅〜十日町駅間で運転見合わせ、代行バスを運行」とのこと。
 雨はかなり弱くなっていたので、中条川の様子を見に行く。
 以下、写真をご覧ください。


中条・白山神社横の砂防えん堤の様子(17:08)
 流下する水量が増えた時はいつもそうだが、石が写真に見える鉄管に当たる「カラン、カラン」という音が鳴り響く。


砂防えん堤より上流の状況(同時刻)

中条橋上から上流側を見る(17:15)


中条橋上から下流側を見る(同時刻)。滝状に水が落ちているのは青倉の千本塚付近から落ちる水路の水。


JR飯山線の中条川に架かる鉄橋下の様子。栄大橋上から撮影(17:18)。


 JRは2011年震災時の土石流発生以降、この箇所に降雨量、水位等の自動観測装置を設置していて、運転見合わせ等の判断を即座に行うシステムになっていると聞いている。2011年5月の大雨時も、村は情報を出さなかったが(警戒雨量を超えていたことを1ヶ月以上後の土石流対策説明会で初めて明らかにした)、JRは飯山線の運行を止めた。
 私は5月上旬にこの橋脚のすぐそばまで行き、中条川の下流・河口部分の洗掘が激しく、大雨が繰り返せばJR鉄橋の橋脚土台部分が危うくなるのではないかと指摘している。今回の強雨程度では大丈夫だが、橋脚土台部分をクローズアップした写真も撮った。



 また、鉄橋の護岸部分も撮影した。

護岸の下の部分とそれより上で色の違いがみられるが、これは昨年9月の土石流の痕跡。
  
 この鉄橋護岸のすぐ手前に復旧工事が予定されている中条川護岸の損壊箇所がある。


 貝立橋より下流で3ヶ所の災害復旧工事が予定されているが、工事請負業者が未決定。どうも災害時の避難場所(ルート)の確保が困難なためのようだ。
 元々あった護岸施設の損壊箇所の復旧だけでなく、洗掘が激しい下流全体の災害対策の検討が必要だと思う。
 
 「トマトの国」から上流の状況も撮影した。

「トマトの国」横から減勢工(セルダム)を望む(17:11)。
 
 今回は増水時なので当然のことながら危険区域への立ち入りは避けた。そのため、これより上流方向は角度的に撮影できず。ただし、たとえ撮影可能な地点からであっても、地震の際に山が崩れた地点は雲に包まれていて見えなかったであろう。
 
 
 このレポート1枚目の写真(砂防えん堤)に見られるように、5〜6月の工事で堆積石・土砂がかなり深く掘られ、除去されているので、今日程度の雨量では川の一定の増水で事は済むであろう。ただし、こういう強雨が繰り返し降ると、山の崩落箇所・土砂堆積地点が緩み、土石流が発生する心配が出てくる。崩落箇所・土砂堆積地点はまだ現状の調査が行われている段階で、工事は行われていない。7月は雨量が多いという予報が出ているので、常時、警戒心が必要だ。
2014年7月4日17:40記
 (了)

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