新しい指定管理者体制への移行をどう受けとめるか
- トマトの国
- 2019.04.13 Saturday
すでに周知のところですが、4月1日から村の3つの温泉宿泊観光施設が新しい指定管理受託者による管理・運営に移行することになりました。これにはなかなか複雑で難しい問題が内包されていると言わなければならないですね。率直に思うところを記したいと思います。
● あくまでも「公の施設」であることを明確に
いわゆる「4施設」のうち、のよさの里を除く3つの施設について、それぞれ民間の3つの事業体が新しく管理受託者に選定されました。
この新管理受託者への移行について、3つの施設があたかも民間施設になったかのような理解のしかたがあるようです。たとえば、村長・森川浩市氏の3月議会「平成31年度予算の施政方針」での次のような言葉です。「今までと大きく違う点は、修繕費用を除く以外は、現在、村内で営業している『民宿及び旅館業』を営んでいる民間営業者扱いと変わらない事です」。この言葉には大きな誤解を生みだす危険性があります。
3つの管理受託者が民間事業体であること、また、当初に決められた指定管理料を除けば、これまでの振興公社のように「赤字なので村のお金を入れてください」ということは許されないことは明瞭です。しかし、森川氏の言葉にはそれ以上のニュアンスも含まれているようにも感じられます。すなわち、3つの施設が〈民間の施設〉に変わったかのようなニュアンスです。森川氏はそのようには考えていないと思いたいですが、ここは明確にしておかなければならないところです。
3つの施設は、村が条例に基づいて設置した「公の施設」です。その「公の施設」を民間のノウハウ等を活用してより効率的に運営するために民間事業体に管理運営を託すのが指定管理者制度です。
では、「公の施設」とは何なのでしょうか。
「栄村観光レクリエーション施設の設置及び管理に関する条例」(平成4年制定)の第2条にしっかり明記されています。
「村民及び観光客の保健保養に供することを目的として、栄村
観光レクリエーション施設を別表第1のとおり設置する。」
別表第1には、3宿泊施設の他に、のよさの里のオートキャンプ場や秋山郷・栃川キャンプ場なども入っています。そして、別表第2において、施設利用料の上限も定められています(村民と村外者での料金に差異が設けられています)。
これらの施設は村民と、栄村と交流する観光客のみなさんの保健保養のための公共施設なのです。
ショウジョバカマ(4月1日、平滝にて撮影)
●温泉施設をめぐる村民アンケートの結果はどうなった?
ところで、昨夏から昨秋にかけて4施設をどうするかが大きな問題になった時、村長・森川氏は観光のあり方研究委の中間報告、振興公社理事会等の考えと同時に、「村民の考えを聞く」として、昨年末ぎりぎりに「栄村観光温泉施設アンケート」を実施しました。しかし、4施設の指定管理者を公募すると1月8日に公表したにもかかわらず、「村民の考え」を示すアンケート調査結果については公表してきませんでした。
3月栄村定例議会の一般質問で松尾が「アンケート結果が公表されていない」と問うたところ、村長は「広報にも掲示しなかったのはミス」だとして、アンケートの集計結果を議員に配りました。その内容を紹介します。
アンケート回答件数は582件で、配布件数789件に対する回収率は73.76%。かなり高い回収率です。4施設のあり方と村民の意思の関係をみるうえで最も核心をなすと思われる項目は「温泉共通入浴券についてお聞きします」でした。この設問に対する村民の回答はどうだったか。
「あった方がよい」が54%、
「無くてもよい」は24%でした。
村民の意思は非常に明確に示されたと評価できます。3つの施設は4月1日から新指定管理者の下で運営されますが、この村民の意思がしっかりと尊重されることが「公の施設」としての3施設のあるべき姿だと思います。
*ちなみに、共通入浴券の年額料金について
のアンケートもありましたが、12,000円=
14%、18,000円=13%、24,000円=15%、
30,000円=9%でした。
● 地域の力を活かす運営で、基幹産業に育てる営業・経営を!
さて、ここまで「公の施設」としての性格を強調してきましたが、それを村の基幹産業の育成のために生かすことを真剣に追求していかなければならないと思います。住民の福祉増進も村が経済的に潤ってこそ実現できるものです。村の基幹産業をどう育てていくかはもう待ったなしの課題になっています。
トマトの国の事業計画には「運営地域協議会」という新しい取り組みが提示されています。トマトの国は今回、企業組合ぬくもりが指定管理受託者となりましたが、企業組合ぬくもりやトマトの国の従業員だけでトマトの国を運営するのではなく、地元地域の人たちが運営に参加していくということです。
その運営参加が、「地元住民が利用しやすい施設にする」ことだけに限られるならば、単なる受益者組織にすぎないことになります。しかし、狙いはそうではないでしょう。都市部の人たちがトマトの国−栄村にどんどん足を運んで下さるように、地元住民が誘客プランや食材・料理などについて知恵を絞る、繁忙時に色んな仕事を自ら引き受ける、さらには経営状況にも関心を寄せ、トマトの国が栄村の観光の太い柱の一本に成長できるように努める。そんな意味があるのではないかと思います。言いかえれば、これまでの栄村にはなかったタイプの地域組織につながる可能性すら有しているのではないかと思います。
私も地元住民の一人としてそういう取り組みに積極的に関わっていきたいと考えています。
今冬2月9日〜11日の3日間、トマトの国に泊まり、スキー場や青倉集落を訪れ、雪国体験をした武蔵村山市など東京多摩地区の子どもたちがトマトの国に残した寄せ書きです。
栄村を訪れた子供たちは異口同音に「ご飯がおいしかった!」と言います(夏に訪れる子どもたちは畑でとったばかりの野菜を使った料理にとても感激します)。また、今回の寄せ書きでは「温泉がよかった」との記述が目立ちました。
こういう寄せ書きに、栄村−トマトの国の魅力をアピールしていくうえでのヒントがいっぱい詰まっています。